「いつ起きたのか」を確認すると、取引の構造が見えてくる

ファクタリングのトラブル

同じ金額でも、時系列が違えば意味が変わる

2社間ファクタリングの事実認定では、金額だけを追っても十分ではない。

その金銭が、いつ動いたのか。

ここが非常に重要になる。

例えば、業者から利用者へ資金が交付された後、数日して売掛先から入金があり、その直後に利用者から業者へ送金されたとする。

この三つの出来事が存在しているなら、それぞれを別々に見るのではなく、時間の順番に並べてみる。

すると、契約書だけを読んでいたときには見えなかった関係が見えてくる。

逆に、同じ金額の送金でも、発生した時期や前後の出来事が違えば、その意味は変わってくる。

だから事実認定では、「いくら動いたか」と同じくらい「いつ動いたか」が重要になる。

契約の前後を一本の線にする

取引を確認するときは、契約書を一枚の紙として見るのではなく、その前後を一本の線としてつなげてみる。

契約前には何があったのか。

契約を結んだのはいつなのか。

資金が交付されたのはいつなのか。

売掛先から入金されたのはいつなのか。

その後に業者への送金が行われたのはいつなのか。

さらに、その後に業者から何らかの請求や連絡があったのか。

この順番を確認する。

すると、「契約した」という一点だけではなく、その契約が実際にどのように動いていったのかが見えてくる。

前後関係は、事実そのものになる

例えば、業者への支払いがあったとしても、その支払いだけを見れば何のためのものか分からないことがある。

ところが、その直前に業者から特定の請求があり、その請求を受けて利用者が送金していたことが分かれば、その支払いがどのように発生したのかを確認できる。

さらに、その請求の直前に売掛先から入金があったのであれば、その一連の出来事をつなげて見る必要がある。

もちろん、時間的に近いというだけで、すべての出来事が同じ原因によるものだと決めつけることはできない。

しかし、何が先に起き、何がその後に起きたのかは、事実として確認できる。

そして、その順番には意味がある。

「請求されたから払った」のか、「別の取引として払った」のか

ここでも、時系列が役に立つ。

利用者から業者への送金があった。

その前に、業者から具体的な支払い要求があったのか。

その要求には期限が設定されていたのか。

利用者はその期限に合わせて送金したのか。

それとも、売掛先から入金されたことを受けて、契約上予定されていた精算として送金したのか。

同じ「利用者から業者への送金」でも、そこに至る経過が違えば、確認すべき内容も変わる。

だから、送金記録だけを取り出して判断するのではなく、その前後に何があったのかを見る。

契約終了まで追う

さらに、取引の最後まで確認することが重要である。

契約を締結した。

資金が交付された。

売掛先から入金された。

業者へ送金された。

そこで取引が終わったのか。

それとも、その後も業者から利用者への請求や連絡が続いたのか。

もし続いたのであれば、なぜ続いたのかを確認する。

一つの取引について、開始部分だけを見ると問題なく見えることがある。

しかし、最後まで追うと、契約書には書かれていない別の事実が現れることがある。

取引の実態は、契約締結の瞬間ではなく、取引が終了するところまで見なければ分からない。

後から説明された経過と実際の経過を比べる

取引が問題になった後には、「こういう契約だった」「こういう意味の支払いだった」という説明がされることがある。

その説明が正しいかどうかも、実際の時系列と照らし合わせることができる。

説明されたとおりの順番で出来事が起きているのか。

説明では重要だとされている出来事が、実際の取引記録にも現れているのか。

反対に、説明では触れられていない出来事が、取引の途中に存在していないか。

ここを確認する。

説明と事実が一致していれば、その一致が一つの材料になる。

一致しないのであれば、その食い違いについて理由を確認する必要がある。

時系列は、評価を先に決めないためにも役立つ

時系列で整理することの良さは、結論を急がなくて済むことにもある。

「これは返済だ」「これは精算だ」と先に名前を付けるのではなく、まず起きたことを順番に並べる。

その結果、

契約があった。

資金が交付された。

売掛先から入金があった。

その後に利用者から業者への送金があった。

さらに業者から別の請求があった。

という事実が確認できたなら、まずはそこまでを事実として確定する。

その後で、それぞれの出来事がどのような法律関係にあったのかを考える。

これなら、評価によって事実を歪める危険が少ない。

「何があったか」を順番に並べるだけでも、かなり違う

事実認定は、難しい言葉を使わなければできないものではない。

むしろ、

いつ契約したのか。
いつお金が動いたのか。
その後、何が起きたのか。
最後にどう終わったのか。

という順番を崩さずに確認することが重要である。

一つ一つの出来事だけを見れば、意味が分からないこともある。

しかし、それらを時系列につなげると、取引全体の姿が浮かび上がる。

そして、その姿を確認した上で初めて、「この取引は法的に何だったのか」という評価に進むことができる。

事実認定とは、難しい言葉で結論を飾ることではない。まず、何が起きたのかを時間の順番に戻していくことから始まる。