最初は親切だった業者が、資金繰りに困った途端に変わる
最初の営業では、業者は利用者を追い込まない。
「今回は付き合いで1%にします」
「今すぐ資金が必要でなくても、アカウントだけ作っておけば大丈夫です」
「資金繰りが苦しくなったときには、いつでも相談してください」
そんな言葉で近づいてくる。
利用者からすれば、悪い話には見えない。
むしろ、将来困ったときに頼れる業者を一社確保しておくことは、安心材料にもなる。
ところが、本当に資金繰りが苦しくなったとき、その「安心」が別の意味を持ち始める。
銀行からの融資が間に合わない。
支払日は迫っている。
売掛金はまだ入ってこない。
そのとき、すでにアカウントを持っているファクタリング業者が「すぐ対応できます」と言ってくれば、利用者はそこへ頼ることになる。
問題は、その時点では利用者が最初の取引をしたときほど自由に判断できる状況ではないということである。
資金が必要な人は、条件を比較する余裕がない
資金繰りに余裕がある会社なら、手数料を比較することも、契約条件を確認することもできる。
しかし、支払期限が迫っている会社は違う。
今日中に資金が必要だ。
明日には支払いがある。
銀行には頼れない。
取引先への支払いを止めるわけにもいかない。
そうなれば、「この条件では高すぎる」と思っても、断ることが難しくなる。
ここに、ファクタリング営業の怖さがある。
最初の1%で作られた関係が、利用者の資金繰りが悪化した段階で初めて大きな意味を持つ。
最初は業者を選んでいた。
しかし、資金に困った段階では、業者に選ばれている側に立場が変わってしまう。
「前回も利用しましたよね」が心理的な圧力になる
さらに、一度取引をした相手であれば、利用者は警戒心を持ちにくい。
「前回も問題なく進みましたよね」
「以前と同じように手続きできます」
「すでにアカウントがありますから、すぐ資金を出せます」
そう言われれば、利用者は新しい業者を探すより、以前の業者に依頼する方が簡単だと考える。
これ自体は当然の心理である。
しかし、その信頼関係が利用者を一つの業者に固定するために利用されていたのであれば、話は変わってくる。
最初の低手数料が、単なるサービスではなく、将来の顧客を確保するための営業だったのか。
そこは慎重に見る必要がある。
本当に怖いのは、条件が悪くても断れなくなること
悪徳ファクタリング業者による被害を考えるとき、「手数料が高かった」という結果だけを見るのでは足りない。
もっと重要なのは、なぜ利用者がその条件を受け入れざるを得なかったのかである。
最初から高い条件を提示され、それでも自由な判断で契約したのであれば、少なくともその経過は確認できる。
しかし、最初は1%という低い条件で関係を作り、その後、利用者が資金繰りに困った段階で条件が大きく変わり、それでも利用者が断れない状況になっていたのであれば、その経過そのものを検証する必要がある。
「契約書に同意した」という一言だけで、すべてを終わらせてはいけない。
そこに至るまでに何があったのかを見るのである。
「同意した」だけでは、取引の実態は分からない
業者側からすれば、最終的には「利用者が契約書に署名した」という事実を示すことになるだろう。
確かに、署名したという事実は重要である。
しかし、それだけで取引の全体像が分かるわけではない。
その前に何を説明されたのか。
どのような条件を提示されたのか。
資金が必要になった利用者に対して、どのような選択肢が示されたのか。
その条件を断った場合、利用者はどの程度の時間的余裕を持って別の資金調達手段を探せたのか。
そして、実際に契約した後、どのような金銭の請求を受けたのか。
ここまで確認して初めて、契約に至った経過が分かる。
だから、ファクタリング被害について弁護士に相談するときも、最後に署名した契約書だけを見せるのではなく、最初の営業から最後の支払いまでの記録をまとめることが重要になる。
最初の営業メールが、後から証拠になる
最初に「1%で付き合いませんか」と言われた。
その後、「将来のためにアカウントだけ作りませんか」と勧められた。
そして数か月後、資金繰りが苦しくなった。
その業者へ相談した。
すると、最初とは大きく違う条件を提示された。
この経過がメールやメッセージに残っていれば、最初の営業と後の契約を一本につなげることができる。
だから、古いメールを「もう必要ない」と削除してはいけない。
当時は何でもないと思っていた営業文句が、後になって重要な意味を持つことがある。
被害が発生してから証拠を探すのではなく、最初から残しておく。
これが重要である。
業者の「親切」を疑えという話ではない
もちろん、すべての低手数料営業が悪徳というわけではない。
最初から適正な条件で利用者を獲得し、長期的な関係を築こうとする業者も存在する。
問題は、最初の営業と、その後の取引との間に不自然な変化がないかということである。
最初は極端に低い手数料だった。
アカウント登録を強く勧められた。
その後、資金繰りに困った段階で再利用した。
そこで突然、条件が大きく変わった。
さらに、利用者が断りにくい状況で契約を迫られた。
もしそうした経過が確認できるなら、最初の営業から調べる意味がある。
悪徳業者との戦いは「契約したから仕方ない」で終わらせない
被害を受けた側が最も言われたくない言葉が、「でも契約したんですよね」という一言かもしれない。
しかし、法的な問題を検討するのであれば、そこで終わらせる必要はない。
契約した事実は確認する。
そのうえで、なぜその契約に至ったのかを見る。
業者は最初に何を説明したのか。
どのような関係を作ったのか。
利用者が困ったときに何を提示したのか。
その条件は適正だったのか。
実際の金銭の流れはどうだったのか。
契約後に何を要求したのか。
こうして最初から最後まで追っていけば、単なる契約書の問題ではなく、一連の取引の実態として検討できる。
裁判や訴訟を考えるなら、入口から記録を残す
裁判や訴訟を考える段階になって、「最後の契約書しか手元にない」という状態では、取引に至る経緯を説明するのが難しくなる。
だからこそ、最初の営業記録が重要になる。
「1%」
「付き合い」
「アカウントだけ」
「将来の資金繰りのため」
こうした言葉が残っているなら、そのまま保存する。
その後の条件提示も保存する。
請求も保存する。
支払いも記録する。
そして、最初の営業と最後の取引を一本の線でつなぐ。
その線の途中で、業者の説明や条件が変化しているなら、その変化を明確にする。
悪徳ファクタリング業者と戦うときに重要なのは、最後の一枚の契約書だけではない。業者が利用者に近づいてきた最初の瞬間から、被害が発生するまでの経過そのものが証拠になる。
最初は1%だった。
だから安心した。
アカウントを作った。
だから困ったときに相談した。
そして、本当に困ったときには断れない条件を提示された。
もしそのような経過があったのであれば、最後だけを見てはいけない。
最初に何を言われたのかまで戻る。
そこから調べ直すことで、業者がどのように利用者との関係を作り、どの段階で取引条件を変え、どのように被害につながっていったのかが見えてくる。
そして、その事実を証拠として整理したうえで、弁護士に相談する。
必要であれば、裁判や訴訟を含めた法的対応を検討する。
戦うなら、最後の契約だけを相手にするのではない。
最初の1%から、最後の請求までを一つの取引として追及する。
そこにこそ、悪徳業者の実態を明らかにする手掛かりがある。

