資金に困っていない会社へ、なぜファクタリング業者は電話をかけ続けるのか

ファクタリングのトラブル

資金繰りが悪化してからでは遅い

ファクタリング業者からの営業電話というと、資金繰りに困っている企業へ「すぐに資金を用意できます」と持ちかけるものを想像しやすい。

しかし、実際にはそれだけではない。

まだキャッシュに余裕があり、資金調達を必要としていない企業に対しても、ファクタリング業者が頻繁に電話営業を行うことがある。

「今すぐ利用する必要はありません」

「いざというときのために登録だけしておきませんか」

「一度アカウントを作っておけば、必要になったときすぐ使えます」

こうした営業である。

ここで考えなければならないのは、なぜ資金に困っていない企業へ、わざわざ繰り返し営業するのかということだ。

狙っているのは「今の資金需要」ではない

資金繰りが悪化していない企業に電話をかけても、その場ですぐ契約になるとは限らない。

それでも営業を続ける。

それなら、業者が見ているのは現在の資金需要ではない可能性がある。

企業には、資金繰りが悪化する時期がある。

大口取引が入れば仕入れ資金が必要になる。

売上が増えれば、むしろ一時的に運転資金が不足することもある。

取引先の支払いサイトが長くなれば、売掛金だけが膨らむこともある。

税金や社会保険、賞与など、まとまった支払いが重なる時期もある。

つまり、現在キャッシュに困っていない企業でも、将来ファクタリングを必要とする可能性はある。

だから業者は、資金が必要になってから探してもらうのではなく、必要になる前から自社を選択肢の中に入れようとしているとも考えられる。

「困ったら連絡してください」という関係を先に作る

一度電話を受け、担当者と話す。

資料を受け取る。

アカウントを作る。

一度少額の取引をする。

そこで低い手数料を提示される。

こうなると、利用者にとって、その業者は「知らないファクタリング会社」ではなくなる。

そして数か月後、資金繰りが厳しくなったときに、以前電話をかけてきた業者を思い出す。

「以前登録した会社に相談してみよう」

これが業者側にとって重要なのである。

最初の電話営業で利益を出す必要はない。

最初の1%の取引で大きく稼ぐ必要もない。

将来、資金に困ったときに思い出してもらえる位置を確保する。

それだけでも営業上の価値がある。

だから「最初は安い」が意味を持ってくる

前回取り上げた「付き合いで1%」という営業も、ここにつながってくる。

資金に困っていない企業へ電話をかける。

関係を作る。

アカウントを作らせる。

最初の取引では低い手数料を提示する。

そして、企業側が本当に資金を必要とするまで待つ。

この一連の流れが実際に存在するなら、最初の1%だけを見て営業の意味を判断することはできない。

「なぜそこまでして最初の取引を安くするのか」

「なぜ資金に困っていない企業にまで繰り返し電話するのか」

その理由を考える必要がある。

資金が必要になった瞬間、力関係が変わる

ここが最も重要なところである。

営業を受けた時点では、企業側に余裕がある。

「今回は必要ありません」と断れる。

他社と比較することもできる。

しかし、資金繰りが悪化した瞬間、その状況は変わる。

支払日が迫っている。

銀行融資は間に合わない。

売掛金はまだ入らない。

その状態で「すぐ資金を出せます」と言われれば、以前から付き合いのある業者に頼りたくなる。

そして、その段階で提示された条件を比較する余裕がなくなっている可能性がある。

ここに、事前の電話営業と将来のファクタリング取引をつなげて考える意味がある。

企業が困ってから営業するのではなく、困る前に関係を作っておく。

その結果、企業が困ったときには、すでに業者が入り込んでいる。

これを「親切な営業」で終わらせていいのか

もちろん、将来の資金調達手段を紹介すること自体が悪いわけではない。

問題なのは、営業の実態である。

資金繰りに余裕のある企業へ頻繁に電話する。

利用予定がなくてもアカウント登録を勧める。

最初は非常に低い手数料で取引する。

その後、資金繰りが悪化した企業に対して、別の条件を提示する。

もしこのような一連の営業が確認できるのであれば、単発の営業電話として処理するのではなく、将来の資金需要を見込んだ顧客囲い込みの営業だったのかという視点から検証する必要がある。

電話の内容も証拠になる

こうした営業を受けた企業が、後になってファクタリング被害を訴えることになった場合、最初の電話営業は無関係な出来事ではなくなる可能性がある。

「今は必要ありません」と伝えたのに、何度も電話が来た。

「将来のためにアカウントだけ」と言われた。

「最初は1%でやります」と言われた。

「困ったときにはすぐ対応できます」と説明された。

こうした内容を覚えているのであれば、日時や担当者、電話後に送られてきた資料などをできるだけ残しておく。

後から弁護士に相談することになったとき、その記録が営業の経緯を示す材料になる。

悪徳業者を追及するなら、被害が始まったところだけを見るな

悪徳ファクタリング業者との問題では、実際に高額な費用を支払ったところから「被害」が始まったと考えがちである。

しかし、その前に何度も電話営業を受けていたのであれば、そこまで遡る必要がある。

なぜ電話が来たのか。

何を勧められたのか。

なぜアカウントを作らせようとしたのか。

最初の取引ではどのような条件だったのか。

そして、資金繰りが悪化した後には何が提示されたのか。

この流れを追う。

すると、最後の契約だけでは見えなかった営業の構造が見えてくる可能性がある。

裁判や訴訟で問われるのは「印象」ではない

もちろん、「何度も電話が来たから悪徳業者だ」という話だけで裁判や訴訟が決まるわけではない。

重要なのは、実際に何が行われたのかである。

電話営業の記録がある。

メールがある。

アカウント登録の記録がある。

最初の契約がある。

そのときの手数料が分かる。

その後の契約や請求も残っている。

こうした資料を時系列に並べれば、最初の営業から後の取引までを一つの経過として検討できる。

だから、被害に遭ったと感じたら、最後の請求書だけを見てはいけない。

最初に電話がかかってきたところまで戻る。

そこで何を言われたのかを確認する。

「困ってから探す」のではなく、「困る前に入り込む」

資金に困っていない企業へ頻繁に電話をかける。

その企業にアカウントを作らせる。

最初は低い手数料で取引する。

そして、企業が本当に資金を必要としたとき、すでに業者との関係ができている。

この構造が存在するなら、最初の営業電話は単なる営業電話ではない。

後の取引につながる入口である。

だからこそ、その入口から調べなければならない。

悪徳業者との戦いで重要なのは、被害が発生した日だけを見ることではない。

業者が最初に電話をかけてきた日から見る。

そのとき何を言ったのか。

何を登録させたのか。

どのような条件を示したのか。

そして、利用者が資金に困った後、何が変わったのか。

そのすべてをつなげる。

もし本当に不自然な営業構造が存在していたのであれば、そこには必ず、その経過を示す記録が残っている。

その記録をつかみ、弁護士に相談する。

必要なら裁判や訴訟も視野に入れて、取引の実態を追及する。

「最初は親切だった」という印象ではなく、「なぜ資金に困っていない会社に、そこまでして営業していたのか」という問いから始める。

それが、悪徳ファクタリング業者の営業実態を明らかにする第一歩になる。