はじめに
貸金業規制が強化されて以降、表向きに「ヤミ金業者」と名乗る業者は激減したと言われています。しかし、実態として貸付に近い金銭のやり取りが完全になくなったわけではありません。むしろ今、「2社間ファクタリング」という形で、ヤミ金的な性質を温存しつつ、合法を装って事業を継続する動きが増えています。
このままヤミ金はファクタリングに“転生”し、合法風を装いながら社会に根を張るのか。債権譲渡というスキームを悪用した脱法行為が拡大していくのか。その行方を探ってみます。
表向きは合法、実態は金貸しと同じ
2社間ファクタリングとは、売掛債権の譲渡を通じて資金化する取引の一形態です。通常、ファクタリングは「債権の売買」にあたるため、貸金業には該当せず、利息制限法や出資法の適用対象外とされています。つまり、業者は貸金業登録もせず、年利100%以上に相当する手数料を請求しても法的制限を受けません。
これが「ヤミ金的体質」の温床となっているのです。多くの2社間ファクタリング業者が行っている実態は、債権の買取ではなく、売掛金回収を前提にした超高利の短期貸付です。契約書には「買取」と記載されていても、売掛金の入金を利用者が代わりに回収し、そのまま業者へ支払う運用になっているケースが多く、法律上の「債権譲渡」とは言いがたい形態です。
元ヤミ金関係者の流入も指摘されている
いくつかの法律事務所やジャーナリストによる報告でも、2社間ファクタリングの業者には「ヤミ金業者の残党」が関わっているとの記述が見受けられます。ある程度の資金力があり、過去に金融回収の経験を持つ人材が、貸金業規制の回避策としてファクタリング業界に流れ込んでいるのです。
しかも、ネット広告やSEOを駆使し、「借金ではない」「信用審査不要」「即日入金」「債務者にバレない」など、過去のヤミ金とほぼ同じセールストークが横行しています。匿名で運営されるウェブサイト、所在地が曖昧なオフィス、法人格のない「事業名」だけの業者も珍しくありません。
こうした点からも、ヤミ金業者が看板を掛け替えただけで、2社間ファクタリング業者として再登場していることは、かなり現実味を帯びてきています。
本来のファクタリングとは似て非なるもの
本来、ファクタリングは大手企業や医療機関などが利用する、第三者対抗要件を満たした債権譲渡型の取引であり、回収リスクはファクタリング業者が負うのが原則です。しかし、2社間ファクタリングでは「回収リスクは顧客負担」「支払不能時には債務不履行扱い」として、事実上の“貸し倒れ責任”が転嫁されます。
業者によっては、売掛先が入金しなかった場合でも「全額を返せ」と利用者に請求してくるケースもあります。このような場合、売買取引ではなく、「返済義務を伴う貸付」に極めて近い性質を持ちます。これが「不当原因給付」とも評されるゆえんです。
ヤミ金の再構築としてのファクタリング
ヤミ金業者にとって、ファクタリングは魅力的な逃げ道です。登録も不要、利息制限もなし、しかも裁判リスクも少ない。業界全体の透明性が低いため、多少の強引な回収や脅迫的通知を送っても、当局の監視が及びにくいのが現状です。
実際、「ファクタリング」という言葉自体が曖昧で、法律上の明確な規制がないため、利用者にとってもリスクの所在が不明瞭です。トラブルが発生しても、警察や裁判所の理解が追いついていない場合があり、被害回復が難しいとの指摘もあります。
そのため、「ヤミ金からの脱却」どころか、「ファクタリングとしての再構築」が静かに進んでいると言ってよいでしょう。
本当に必要なのは「法的整理」と監視体制の強化
このような現状を改善するには、2社間ファクタリングに関する法的枠組みの整備が不可欠です。例えば、債権譲渡と貸付の実質的違いを明文化し、「形式的に売買でも実態が貸付なら貸金業規制を適用する」といった対応が必要でしょう。
また、業界団体による自主規制だけでは限界があります。資金移動の透明化、取引記録の保管義務、回収手段の制限、悪質業者の情報公開など、公的な監視体制の整備が求められます。
まとめ:ヤミ金は形を変えて生き残る
ヤミ金業者が表の社会から消えることはありません。規制が強まれば、その分巧妙な脱法手段が編み出され、より見えにくい形で利用者に食い込んできます。その最たる例が、いま急増している2社間ファクタリングです。
「貸金ではない」という建前に逃げ込んだ新手の金貸しに、果たして社会はどう対応していくのか。利用者が守られる仕組みを整備しなければ、ヤミ金はこれからも“合法の仮面”をかぶりながら存続し続けるでしょう。

