ノンバンク・SPCを利用した疑似貸金の法的問題点

ファクタリングの違法性と契約について

――「形式」を着替えた脱法金融の構造分析**

ノンバンクおよびSPC(特別目的会社)が「貸付ではない」と称して提供する資金供給スキームは、近年急速に拡大している。社債スキーム、売掛債権譲渡、動産譲渡、リースを偽装した貸付など、その顔は多様だ。しかし本質はいずれも同じ――貸金業登録・利息制限法・出資法の規制から逃れる“疑似貸金”である。

これらの構造には、共通して重大な法的問題点が存在する。


① **「形式」だけを社債・譲渡に変えた“実質貸付”の問題

(実質説 vs. 形式説)**

最大の論点は、**「形式は社債だが、実質は貸付ではないか」**という点である。

疑似貸金スキームが多用する“形式”:

  • 社債の「買取」
  • 債権譲渡を装った即日資金化
  • SPCを経由した「投資」
  • フィーの名目を変えた高率手数料

しかし、実務上問題となるのは“形式”ではなく実質である。

■ 実質が貸付と評価される典型例

  • 資金の目的が「資金繰り補填」以外にない
  • 返済義務が実質的に固定されている
  • 手数料が利息のように定率化
  • 債権譲渡が実質「担保化」している
  • SPCの介在が単なる名義貸し

実質判断では、「元本+利益の回収を目的とする資金供与」=貸付と評価されうる。

これが認定されれば、
→ 未登録貸金業
→ 利息制限法超過
→ 出資法違反(場合により刑事罰)
に直結する。


SPCが「責任分散」や「法的距離の偽装」に使われている

SPCを挟むスキームでは、表向きは「投資」や「買取」であるかのように整装されているが、実態は貸付の当事者を隠すためのフィルターにすぎない。

典型的な問題点:

■ (1) 実態のないSPC(ペーパーカンパニー)

実在性が乏しく、業務内容、リスク判断能力、独自の意思決定がない。
→ 実質的な貸付主体はノンバンク側である。

■ (2) リスクがSPCに移っていない

社債スキームや債権譲渡型の多くは、

  • 償還不能時は「買戻し条項」
  • 不足額を追加請求
  • デフォルト時の保証義務

これらによって、SPCが負うはずのリスクが発行企業側へ100%逆流している。
これは完全に“融資”の性質であり、投資・買取とは矛盾している。

■ (3) 貴社からSPCへ資金を回し、再度貸し戻す「循環取引」

実態を伴わない資金ループで「形式を整えているだけ」のケースがある。
→ 脱法目的として違法性が強く評価される。


「元利均等的な支払構造」を隠した“手数料商法”の違法性

疑似貸金スキームは、貸付規制逃れのために「利息」という言葉を使わず、「手数料」「買取料」「発行費用」と名目を着替えさせる。

しかし、法律上は「名目より実質」が原則。

■ 手数料が利息と評価される条件

  • 元本に連動したパーセンテージ
  • 支払時期が貸付の返済期日に一致
  • 継続的・反復的に設定
  • 違約金が過大で利息の補填となっている

この場合、
→ 利息制限法の上限(年15〜20%)超過は無効
→ 出資法違反(109.5%超で刑事罰)
となる。

社債スキームの「発行手数料40%」「買取料30%」などは、
利息として見れば完全に違法水準である。


「買戻し条項」の存在が“融資性”を決定づける

疑似貸金スキームの核心的特徴に、“買戻し条項”がある。

  • 売掛債権を譲渡したはずなのに、回収不能時は「買い戻せ」と要求
  • 社債を「償還不能なら追加償還」と迫る
  • SPCが負うべきリスクを企業に押し戻す

これは、法的に極めて重要で、リスクを負わない買取は“買取ではない”と評価される。

つまり、
→ 本件は売買ではなく担保付き貸付
と解釈される。

この瞬間、すべての規制逃れは崩れる。


「貸付」なのに貸金業登録がない=無登録営業の違法性(貸金業法12条)

実質貸付と認定されれば、ノンバンクであれSPCであれ、**貸金業登録をしていない限り「無登録貸金業」**になる。

  • 法人は2年以下の懲役または300万円以下の罰金
  • 代表者も併せて罰せられる(両罰規定)
  • 取引は無効となる可能性がある
  • 行政処分の対象

「貸金業ではない」と主張する業者に限って、実態は貸金そのものという矛盾した構造が生じる。


ステルスマーケティングや誤認誘引による景表法・特商法違反

疑似貸金は広告も問題が大きい。

典型的には:

  • 「融資ではないので安心」
  • 「審査なしで即日入金」
  • 「ブラックでもOK」
  • 「社債だから健全な資金調達」

これらは、実態が高利貸付である場合、
景品表示法の“優良誤認”“有利誤認”
に該当する。

また、業者によっては“第三者装い型の記事広告”“ネットメディアに見せたステマ”が常態化している。
これは**改正ステマ規制(2023年施行)**の明確な違反である。


最終的な法的リスクは“スキーム全体の無効化”に及ぶ

実質貸付であるにもかかわらず、

  • 社債形式
  • SPC
  • 契約書の巧妙な文言
  • 手数料名目の偽装

これらが積み重なっても、裁判所は「実質」から逃げない。

そのため、最終的には以下が認定される可能性が高い。

  • 契約の公序良俗違反(民法90条)
  • 利息制限法超過分の返還
  • 出資法違反の刑事責任
  • 無登録貸金業による行政・刑事処分
  • 手数料収受の返還請求

すなわち、
複雑なスキームほど“脱法目的”が露骨になり、違法性はむしろ強く評価される。


■結論:SPC・ノンバンクを用いた疑似貸金は「形式を変えただけの高利貸し」であり、法的には崩れやすい

たとえ業者がどれほど巧妙なスキームで着飾ろうと、本質が**「元本+利益の回収を目的とした資金の供与」**である以上、それは「貸付」であり、貸金業・利息制限法・出資法の規制から逃れられない。

SPCは盾にはならない。
形式は実質に負ける。

つまりこの構造は、**法律の“スキマ”ではなく、“脱法の温床”**そのものである。