■ 合法=安全という致命的な誤解
ファクタリング広告、とりわけ2社間ファクタリングの広告は、長年にわたり事実上の規制空白地帯に置かれてきた。
「融資ではない」「貸金業ではない」「合法な取引」という説明が繰り返されるが、これは安全性や妥当性を意味しない。合法であることと、利用者にとって有害でないことは全く別の問題である。
。手数料10%という数字は一見低く見えるが、1か月取引であれば年利換算120%に相当する。通常の金融感覚からすれば異常な水準であるにもかかわらず、広告ではこの点がほとんど説明されない。合法という言葉が、利用者の警戒心を意図的に鈍らせている。
■ なぜ行政は規制してこなかったのか
最大の理由は、所管の不明確さである。
金融庁は「金銭貸借ではない」として積極的に関与せず、消費者庁は「事業者間取引」であることを理由に景品表示法の適用に慎重である。経済産業行政も金融分野には踏み込まない。
。結果として、どの行政機関も「自分の担当ではない」という立場を取り続け、広告の実態と被害の増加を把握しながら、実質的な是正措置を講じてこなかった。この行政の不作為こそが、現在の無秩序なファクタリング広告市場を生み出した最大の要因である。
■ アフィリエイトとリスティング広告の暴走
ファクタリング広告は、アフィリエイトやリスティング広告と極めて相性が悪い。
手数料が高い業者ほど広告予算を投下でき、アフィリエイト報酬も高く設定できる。その結果、検索結果や比較サイトでは、高コストで利用者に不利な業者ほど「おすすめ」「優良」として表示される。
。「最安水準」「即日資金調達」「審査なし」「専門家監修」といった文言は、多くの場合、実態や客観的根拠を欠いている。しかし広告主、代理店、媒体は責任を分散し、誰も内容の正確性を担保しない。被害は利用者に集中する一方である。
■ 悪徳だが違法ではないという危険な地帯
ここで重要なのは、「違法」と「悪徳」は意味が異なるという点である。
違法でなければ問題ないという考え方は、極めて危険だ。ファクタリング広告の多くは、法形式上は適法であっても、情報の出し方、誇張、重要事項の非開示という点で、明らかに悪徳性を帯びている。
。行政がこの悪徳性に向き合わず、「違法ではない」という理由だけで放置してきたことが、市場全体に歪みを生んだ。合法であることが、結果として“免罪符”として機能してしまっている。
■ AI時代に拡大する被害構造
近年、問題はさらに深刻化している。
アフィリエイト記事や広告LPの内容がAIの学習データに取り込まれ、検索AIがそれを「中立的な解説」として再生産しているからだ。
。AIが「2社間ファクタリングは安全」「一般的な資金調達手段」と説明すれば、利用者は広告以上に無防備になる。これは単なる誤情報ではなく、広告構造がAIを通じて拡張された結果であり、行政が想定していなかった新しい被害類型である。
■ 行政に求められる最低限の規制
必要なのは、ファクタリングを全面的に否定することではない。
広告に対して最低限のルールを設けることである。
。具体的には、
手数料の年率換算表示の義務化。
ノンリコース条件の厳格な明示。
広告主とアフィリエイト媒体の責任の明確化。
AI検索結果における誤情報是正の仕組み。
これらはいずれも、他の金融商品では当然とされている水準であり、過剰規制とは言えない。
■ 見て見ぬふりを続ける行政への問い
ファクタリング広告を放置することは、資金繰りに追い詰められた事業者を、情報の荒野に放り出すことと同義である。
違法性の有無だけを盾に、悪徳性から目を背け続けるなら、行政は被害拡大の共犯と評価されても仕方がない。
。いま問われているのは、法律論の形式ではない。
行政が、金融弱者を守る意思を持っているのかどうか。その姿勢そのものである。

