■ 広告は良心を必要としない
ファクタリング業者の心理は、広告空間に入った瞬間に完成する。
広告は、善悪を判断しない。
成果が出るかどうかだけを見る。
即日資金化。
審査なし。
赤字でもOK。
取引先に知られない。
こうした言葉が並ぶのは、
それが刺さるからだ。
倫理的に正しいかどうかは、広告の評価軸に存在しない。
■ 「説明しすぎない方が成約率が上がる」
業者は学習する。
実質コストを詳しく書くと、離脱される。
年利換算を示すと、申込みが減る。
リスクを正確に書くと、比較サイトに負ける。
結果、説明は短くなる。
表現は曖昧になる。
都合の悪い情報は奥に追いやられる。
これは詐欺ではない。
広告最適化だ。
■ アフィリエイトが責任を分散させる
さらに問題を複雑にするのが、アフィリエイト構造だ。
業者は言う。
「うちの広告ではない」。
比較サイトは言う。
「業者の公式情報を引用している」。
プラットフォームは言う。
「第三者のコンテンツだ」。
責任は、
きれいに分解され、誰の手にも残らない。
■ AIは「空気」を学習する
ここでAIが登場する。
生成AIは、法律を理解しているわけではない。
倫理を判断しているわけでもない。
学習しているのは、ネット上に最も多く存在する説明だ。
つまり、広告。
比較記事。
業界寄りの解説。
それが「平均値」として再構成される。
■ AIは嘘をついているわけではない
重要なのはここだ。
AIは、虚偽を捏造しているわけではない。
誰かを騙そうとしているわけでもない。
ただ、都合のいい説明だけを均して出している。
合法です。
一般的な手数料です。
リスクはありますが注意すれば大丈夫です。
この無害そうな文体が、最も危険な誘導になる。
■ 業者はAIを「肯定装置」として見る
この状態を見て、業者はどう感じるか。
「ほら、AIも問題ないと言っている」。
「社会的に認められている」。
「規制されていないのが答えだ」。
AIは、
業者の自己正当化を補強する鏡になる。
悪人でないという自己認識が、
さらに強化される。
■ 被害者だけが取り残される
一方で、資金繰りに追い詰められた事業者はどうか。
広告を見る。
AIの説明を見る。
「合法」「一般的」「安全」という言葉を見る。
そして、最後の手段として契約する。
取引が終わった後、残るのは資金ではなく、さらに悪化した状況だ。
■ 誰も嘘をついていないのに、被害は増える
ここに、この問題の本質がある。
業者は、合法だと思っている。
広告は、最適化されているだけだ。
AIは、平均的説明を出している。
行政は、金融ではないと言っている。
誰も、明確な嘘をついていない。
それでも、被害は拡大する。
■ 結論:これは新しい被害類型である
この構造は、従来の詐欺や悪徳商法とは違う。
意図的欺瞞ではない。
だが、結果として搾取が起きる。
これは、情報が倫理を上書きする時代の金融被害だ。
だからこそ、個別業者の善意に期待しても意味がない。
次に問うべきは、この構造を止められるのは誰か。
そして、行政はどこまで責任を負うべきか。

