裁判所はなぜ踏み込めないのか―二社間ファクタリングが司法審査をすり抜ける理由

ファクタリングのトラブル

二社間ファクタリングは、行政が止めないだけでなく、裁判所ですら決定打を打てていない。

それは裁判官が無能だからでも、業者と癒着しているからでもない。

司法が踏み込めないように、最初から構造が作られている。


1. 裁判所は「契約」を出発点にする

民事裁判において、裁判所が最初に見るのは動機でも被害感情でもない。

見るのはただ一つ。

何が合意されたか

二社間ファクタリングでは、

・債権譲渡契約
・買取価格
・手数料
・ノンリコース条項

すべてが書面化されている。

裁判官の目にはこう映る。

当事者が合意している

この時点で、司法の介入余地は一気に狭まる。


2. 「違法」を主張する側の立証が重すぎる

利用者が勝つには、単に「高すぎる」「苦しかった」では足りない。

求められるのは、

・実態が貸付であること
・形式を仮装したこと
・違法性の認識があったこと

つまり、実質貸付の立証、しかしこれが、ほぼ不可能に近い。

なぜなら、

・返済義務がない
・利息の記載がない
・貸付という言葉がない

契約書自体が、違法性を否定するために存在しているからだ。


3. 「高すぎる」だけでは裁けない

多くの人がここで誤解する。

年利換算100%超ならアウトでは?

裁判所は年利換算を基本的に使わない。

理由は単純で、利息ではないからだ。

手数料がいくら高くても、

・法律に上限規定がない
・市場相場という曖昧な概念

しか存在しない以上、裁判所は

高いが、違法とは言えない

という結論にしか到達できない。


4. 公序良俗という“最後の刃”が鈍い理由

唯一、裁判所が踏み込める可能性があるのが、

民法90条 公序良俗違反

だが、これが極めて使いづらい。

なぜなら、

・適用基準が抽象的
・社会通念に依存
・乱用すれば契約自由が崩れる

裁判官は本能的に慎重になる。

よほど、

・詐欺的勧誘
・暴力的回収
・明確な欺罔

がない限り、「悪いが無効」とまでは言わない。


5. 事業者取引という“免罪符”

さらに追い打ちをかけるのがこれだ。

事業者間取引

この一言で、

・弱者保護の論理
・情報格差の考慮
・救済的解釈

が一気に後退する。

裁判所はこう考える。

事業判断の失敗ではないか

これに反論するには、「これは事業判断ではなく、構造的搾取だ」と証明しなければならない。

現行法では、ほぼ不可能だ。


6. 判決の射程が“個別事案”に閉じる

仮に一件、利用者が部分的に勝ったとしても、判決は必ずこう書かれる。

本件事案に限り

つまり、業界全体を否定することはしない。

裁判所は制度設計者ではない。

構造を壊すのは、立法か行政の役割だ。

司法はそれを代行しない。


7. 裁判官は「線を越える命令」を出せない

裁判所が恐れているのはこれだ。

・債権譲渡の否定
・商取引の萎縮
・金融実務への波及

一件を裁くために、市場全体を揺らがせる判断は出せない。

だから、明白な違法でない限り踏み込まない。


結論:裁判所は最後の砦ではない

多くの人が誤解している。

裁判所が止めてくれるはずだ

違う。

裁判所は、

・制度の隙間を埋めない
・規制の代役をしない
・社会問題の最終処理場ではない

二社間ファクタリングが生き残っているのは、司法が甘いからではない。

司法が踏み込めないように設計されているからだ。