2社間ファクタリングの問題点は、結果だけを切り取ると見えにくくなります。
なぜなら、利用に至る判断は一見すると合理的で、責任ある行動に見えるからです。
ここでは、結果ではなく「判断の連なり」を追います。
事例1。建設業個人事業者。資金不足ではなく時間不足。
地方で建設業を営む個人事業者。
元請けからの入金サイトは90日。
一方で、材料費と外注費は30日以内に支払いが必要でした。
資金繰りが破綻していたわけではありません。
受注もあり、工事も進んでいました。
問題は、入金までの時間だけでした。
銀行融資は検討しました。
しかし、審査には数週間かかる。
決算内容も良いとは言えず、通る保証もない。
支払い期限は待ってくれません。
ここで2社間ファクタリングが提示されます。
審査は早い。
担保も保証人も不要。
請求書があれば数日で資金化できる。
この時点での判断は、極めて現実的です。
工事を止めない。
信用を失わない。
損害を最小限に抑える。
その条件を満たす手段が、他に見当たらなかった。
──実際に起きた流れを整理します。
・請求書を譲渡し、材料費と外注費を支払う。工事は滞りなく進行。
・翌月、本来入金されるはずだった資金がなく、運転資金が不足。
・工事は続いており、次の支払いも発生。再利用を選択。
ここで重要なのは、再利用が「欲」ではなく「防衛」だった点です。
支払いを止めれば違約。
工事を止めれば損害賠償。
再利用は、最も被害が少ない選択でした。
制度は、合理的判断を積み重ねるほど、抜けられない形になっています。
事例2。運送業小規模法人。事業継続の判断が裏目に出る。
従業員数名の運送会社。
主な取引先は一社。
ある日、車両が故障し、即時修理が必要になりました。
運送業にとって、車両停止は売上停止を意味します。
一日止まれば、その分の売上が消える。
従業員の給料も支払えない。
銀行融資は時間がかかる。
リースは審査に落ちる可能性が高い。
修理工場は待ってくれない。
ここでも2社間ファクタリングが選ばれます。
理由は単純です。
「間に合う」からです。
──結果の経過を追います。
・請求書を譲渡し、修理費を即時支払う。業務は再開。
・手数料差引後の受取額が想定より少なく、燃料費が不足。
・支払い優先のため、次の請求書も譲渡。
この判断も、誤りとは言えません。
従業員を守る。
取引先との関係を維持する。
会社を止めない。
2社間ファクタリングは、その判断を支えるどころか、体力を削ります。
短期的な回復と引き換えに、長期的な持久力を奪います。
事例3。フリーランス。破綻していないのに苦しくなる。
広告制作を行うフリーランス。
複数の取引先があり、仕事量も安定しています。
売上がないわけではありません。
問題は、入金時期と納税時期のズレでした。
納税期限が迫る。
入金は翌月以降。
延納も考えましたが、信用を落としたくない。
ここで2社間ファクタリングを利用します。
──表面上の結果は成功です。
・納税は期限内に完了。
・業務も継続。
・法的な問題もない。
しかし、翌月。
本来の入金が圧縮され、生活費と税の両立が難しくなります。
再利用でしのぐ。
負担は静かに積み上がります。
この事例の特徴は、失敗が見えにくい点です。
倒産しない。
仕事も続いている。
それでも、生活の余裕は確実に削られていきます。
三事例に共通する判断構造。
三つの事例を並べると、共通点は明確です。
・利用時点では、他に現実的な選択肢がない。
・判断は合理的で、責任ある行動に見える。
・利用後、選択肢が減り、再利用が最適解になる。
これは、利用者の能力や性格の問題ではありません。
制度が、同じ判断を繰り返させる設計になっています。
なぜ啓発では防げないのか。
注意すれば避けられる制度は、啓発が機能します。
しかし、この制度では違います。
理解していても、避けられない局面で使われます。
冷静さの欠如ではない。
知識不足でもない。
時間と選択肢が奪われた状態で、最も合理的に見える手段が提示される。
これが、2社間ファクタリングの本質です。
深掘り事例稿の結論。
ここまで掘り下げると、論点ははっきりします。
問題は、利用者の判断ではありません。
制度が、合理的判断を通じて利用者を追い込む点にあります。
だから、
「気をつければいい」では足りない。
「使わなければいい」でも足りない。
存在を前提にしている限り、同じ判断と同じ結果が再生産されます。
制度は、結果で評価されるべきです。

