弁護士会の
ファクタリング対応

ファクタリング取引を巡るトラブルが増加する中、 弁護士会は被害者救済と予防策の強化に向けて積極的な対応を進めています。
特に、売掛債権の二重譲渡や不透明な契約条件による中小企業の資金繰り悪化といった問題が顕在化しており、法的支援の必要性が高まっています。
弁護士会では、相談窓口の設置や啓発活動を通じて、事業者が安心してファクタリングを利用できる環境づくりを目指しています。
また、法制度の整備やガイドラインの策定にも関与し、業界全体の健全化を図る取り組みが進められています。
本コラムでは、弁護士会や関係者が出した声明などを紹介しながら、対応策や今後の課題について詳しく解説します。
偽装ファクタリング規制の意見書
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偽装ファクタリング業者に対する適切な規制を求める意見書
2020(令和2)年5月13日
東京弁護士会 会長 冨田秀実
第1. 意見の趣旨
1 捜査当局(検察庁・警察)は、ファクタリングと称して、貸金業の登録を受けずに、
業として、年利換算で20%を超える高額な手数料で、「金銭の貸付け」に該当すると
解すべき資金融通サービス(具体的には、ファクタリング契約ないし債権譲渡契約に
おいて、譲受人に償還請求権や買戻請求権が付いている場合、債務者への通知や債務者の
承諾の必要がない場合や、譲渡人が譲受人から債権を回収する業務の委託を受け譲受人に
支払う仕組みとなっている場合など)を行う者(以下「偽装ファクタリング業者」という。)
について、貸金業法違反(無登録営業)および出資法違反(高金利)の摘発・取締りを強化すべきである。
2 国(金融庁・法務省)、都道府県および国民生活センターは、前項のような偽装ファクタリング業者についての
実態把握に努め、広く国民に対し、その手法を公開し、これら偽装ファクタリング業者を利用することのないように
注意喚起するとともに、すでに偽装ファクタリング業者を利用してしまった被害者のための相談体制を強化すべきである。
3 国(衆議院・参議院・金融庁・法務省)は、法解釈上の疑義が生じる余地がないよう、
貸金業法第2条、第42条及び出資法第7条を改正して、第1項のような偽装ファクタリング業者の
行う資金融通サービスについても、金銭の貸付けとみなす(金銭の貸付けに含む)ことを、
条文上、明記することを検討すべきである。
第2. 意見の理由
ファクタリングの増加
いわゆるファクタリングとは、企業が保有している売掛債権を割り引いて買い取り、
その債権の管理・回収を行うサービスであると考えられているが、
このところ、ファクタリングと称して、実質的には、高金利で金銭を貸し付けているものと
みるべき事例が増えてきている。
これらファクタリング業者は、自らの行っている事業は「債権の売買」であり、
金銭の「貸付け」には当たらないから、貸金業法や出資法の適用を受けないなどと主張し、
貸金業の登録も受けないまま、あたかも、合法な金融サービスであるかのように、
堂々と、インターネット上で宣伝広告をし、広く顧客を募っている。
その上で、年利に換算すると数百パーセント以上にも相当するような高額な手数料
(債権額と債権買取金額の差額)を徴収している。
さらに、最近では、給与ファクタリングと称して、給与所得者から、賃金債権を買い取るという形式を用いて、
年利に換算すると数百パーセント以上にも相当するような高額な手数料を徴収して、
資金融通サービスを行う者も増えてきている。
これらの事例のほとんどは、債権の買い取りの際に債務者への通知を行わない、
いわゆる「二者間ファクタリング」であり、ファクタリング業者が自ら債権の管理・回収を
行っているという実態はない。
ファクタリング取引も
「貸付け」に該当し得ること
貸金業法は、「金銭の貸付け」は「手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によってする金銭の交付を含む」としています(同法第2条第1項)。
また、出資法も、「手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によってする金銭の交付」は「金銭の貸付けとみなす」としています(法第7条)。
したがって、たとえファクタリング取引(売買契約)の形式(金銭消費貸借契約以外の法形式)を取っていたとしても、それだけで貸金業法および出資法の適用を免れるものではありません。
いわゆるファクタリング取引であっても、経済的に貸付け(金銭の交付と返還の約束が行われているもの)と同様の機能を有している場合は、貸金業法第2条第1項および出資法第7条の「手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法」に該当することになります。
この点、例えば、ファクタリング契約ないし債権譲渡契約において、譲受人に償還請求権や買戻請求権が付いている場合など、債権譲受人は回収不能のリスクを負わず、これを譲渡人が負担するような形になっている場合には、手形の割引にも近く、経済的に貸付けと同様の機能を有しているといえるから、「手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法」に該当すると解すべきです。
また、ファクタリング契約ないし債権譲渡契約において、売掛先への通知や承諾の必要がない場合や、債権の譲渡人が譲受人から債権を回収する業務の委託を受け譲受人に支払う仕組みとなっている場合(いわゆる二者間ファクタリング)も、売買の目的物とされる債権を譲渡人から譲受人に確定的に移転させ、譲受人から債務者に対して直接その支払を求めることは、原則として予定されず、譲受人は通常、譲渡人に対してその支払を求めることが想定されていることなどからすれば、実質的には、経済的に債権担保貸付けと同様の機能を有しているものといえるから、「手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法」に該当すると解すべきです。
このところ問題となっている事例の多くは、これらに当たると考えられるものである。したがって、貸金業法の登録を受けずに、業として、このような資金融通サービスを行っている場合には貸金業法違反(同法第47条第2号、第11条第1項)であり、また、その手数料(債権額と買取金額の差)が年率換算で出資法違反の高金利となる場合には出資法違反(同法第5条第2項、同第3項)となる。
ファクタリング被害ホットラインの実施
当会では、近年、貸金業登録のない業者がファクタリングを謳って売掛金や給与などの債権の売買を装い、実質的に利息制限法や出資法の上限利率を超える高い利息を取っている事案が増えていることから、このような悪質なファクタリング取引に苦しんでいる方からの相談に応じるとともに、ファクタリング被害の実態を把握することを目的として、2019年12月10日、「ファクタリング被害ホットライン」と題して、無料電話相談を実施した。
上記のホットラインに寄せられた相談の多くは給与ファクタリングに関するものであり、いずれも、約1か月先の給与債権の一部を債権額の6~8割程度で売ったこととするなど、これを年利に換算すると、数百パーセント以上と、出資法5条第1項・第3項の上限利率をも大幅に上回るものであった。
また、事業者の売掛債権ファクタリングについても、同様に、約1か月先が支払期日となっている売掛債権の一部を債権額の8割程度で売ったこととするなどであり、やはり、これを年利に換算すると、出資法5条第1項・第3項の上限利率をも大幅に上回るものであった。
このような偽装ファクタリングを利用してしまった被害者らの多くは、資金繰りに窮している中で、あたかも、それが適法な金融サービスであるかのような宣伝広告に接し、これを利用してしまったものであり、また、もし偽装ファクタリング業者への支払をしないときは、売掛先や勤務先に知られてしまうことを怖れている。
これら偽装ファクタリング業者は、こうした資金需要者らの弱みにつけこんだ悪質な手法である。
違法ファクタリング業者の
被害の根絶のための取組の必要性
金融庁は、2019年初めに、ホームページ上で、「違法な金融業者からの借入れに関する相談等」に対する「アドバイス」として、次のとおり、注意喚起をしました。
すなわち、「ファクタリング契約や売掛債権売買契約において、譲受人に償還請求権や買戻請求権が付いている場合、売掛先への通知や承諾の必要がない場合や、債権の売り主が譲受人から売掛債権を回収する業務の委託を受け譲受人に支払う仕組みとなっている場合は、ファクタリングを装ったヤミ金融の可能性が高いことから、相手方業者の貸金業登録の有無を確認のうえ、手数料(又は債権額と買取額の差)が年率換算で事実上の高金利になっていないか、十分にご注意ください。」というものである。
しかし、このような注意喚起にもかかわらず、その後も、インターネット上などでは、あたかも、合法な金融サービスであるかのように、堂々と、違法なファクタリング取引の宣伝広告が行われている。その結果、このような偽装ファクタリング業者による被害は、さらに増大している。
しかも、被害にあっても泣き寝入りする者も少なくないと推認されるため、表に出ている被害は、あくまでも氷山の一角に過ぎないとも考えられる。
このような偽装ファクタリング業者による被害の拡大を踏まえ、金融庁は、2020年3月5日付で、一般的な法令解釈に係る書面照会手続に対する回答において、給与ファクタリングを業として行うことが貸金業法上の貸金業にあたるとの解釈を示しており、また、東京地方裁判所令和2年3月24日判決は、かかる給与ファクタリング契約は貸金業法第42条第1項により無効となることを明らかにしています。
こうした被害を根絶するためには、関係各機関の一層の取組の強化が不可欠である。
関係各機関への要請
当会としても、このような偽装ファクタリング業者による被害が、社会問題と言いうるほどに拡大している現状を踏まえ、貸金業法及び出資法の潜脱を赦さず、引き続き被害救済に向けた取組を一層強化していく所存です。
しかし、関係各機関に対し、以下の通り要請します。
このような偽装ファクタリング業者は、貸金業法に違反して、無登録で貸金業を営む者であり、出資法に違反して、同法所定の上限金利を超える利息の契約をし、これを受領し、またはその支払いを要求している者であるため、捜査当局(検察庁および警察)においては、その摘発・取締りを強化すべきです。
国(金融庁・法務省)は、都道府県及び国民生活センターは、かかる偽装ファクタリング業者についての実態把握に努め、広く国民に対し、その手法を公開し、これら偽装ファクタリング業者を利用することのないように注意喚起するとともに、すでに偽装ファクタリング業者を利用してしまった被害者のための相談体制を強化すべきです。
このように、現行法の範囲内においても、関係各機関の取組の強化によって、偽装ファクタリング業者について、適切な規制及び取り締まりを行うべきですが、さらに、「金銭の貸付け」について法解釈上の疑義が生じる余地のないようにし、法の潜脱を許さないためには、国(衆議院・参議院・金融庁・法務省)において、貸金業法第2条、第42条及び出資法第7条の改正を行うことも、検討すべきです。
以上
この『東京弁護士会が2020年に公表したこの意見』は、偽装ファクタリング業者の横行と、その実態が「金銭の貸付け」に該当する可能性が高いにもかかわらず、貸金業法や出資法の適用を逃れている現状への危機感を明確に表明したものです。
以下に、要点と注目すべき論点を整理いたします。
意見書の核心ポイント(要約)
- 捜査当局に対する要請
貸金業登録のない業者による「偽装ファクタリング」を、実質的な貸金業とみなし、貸金業法違反(無登録営業)および出資法違反(高金利)での摘発を促す。 - 行政・消費者保護機関への要請
実態調査と手口の広報、被害者相談体制の強化を求める。 - 立法的整備の提案
貸金業法や出資法の条文上に、偽装ファクタリングも「貸付け」と明記すべきと提案。
主な論点・法的な指摘
- 法形式ではなく「実質」を見るべき
ファクタリング形式でも、譲受人がリスクを負わない(償還請求権や買戻請求権がある)場合や、通知なしの二者間契約など、本質的には金銭の貸付けと同等であり、貸金業法第2条や出資法第7条の「手形の割引等」に該当する。 - 「2社間ファクタリング」は特にリスクが高い
債務者への通知もなく、譲渡人が資金回収を続ける形式では、債権が本当に譲渡されたとはいえず、債権担保型の金銭貸付に極めて近い構造とされる。 - 高額手数料=高金利
契約期間が短くても、買取額と債権額の差が大きければ、年利換算で出資法の上限(年109.5%)を遥かに超過しており、これに対する摘発が求められる。
実務的な示唆
ファクタリング契約においても、下記のような契約条項がある場合は「偽装」の可能性が高く、貸金業法・出資法の規制対象とするべき。
- 償還請求権、買戻請求権あり
- 売掛先への通知なし
- 回収委託がある
- 実質的に元本と利息(手数料)の返済が前提
これらを金融庁・消費者庁・都道府県が周知し、立法的に明文化することで抑止力を持たせる必要がある。
今後の展開・重要視される視点
- 現行法の条文解釈に委ねられている部分が多く、立法的明確化が被害防止のカギとなる。
- 「給与ファクタリング」など個人対象の悪質サービスは、生活困窮者を狙い撃ちにするという意味で、消費者保護の観点から特に強い対策が必要。
- 被害の再発防止には、金融広告・宣伝規制の強化や、法務局などへの事業者登録義務化なども検討に値する。
偽装ファクタリングへの
会長声明
近年、事業者が取引先に対して有する売掛債権を買い取る形式で、業として、資金融通サービスを行う者(以下「ファクタリング業者」という。)が増加している。
特に、最近では、新型コロナウイルス感染症の影響によって資金繰りに苦しむ中小企業の間で、このようなファクタリングが利用されている。
しかし、債権の買取代金が著しく低額であったり、高額な手数料を差し引いたりする仕組みのファクタリングを利用すれば、かえって資金繰りが悪化することになる。
ファクタリングと称し、売掛債権を買い取るという形式を採っていたとしても、債権の買取代金が債権額に比べて著しく低額であったり、高額な手数料を差し引いたりする一方で、買い取った当該債権の管理・回収を自ら行わず、その売主に当該債権を回収させ、これをファクタリング業者に支払わせるものは、経済的に貸付けと同様の機能を有していると考えられるから、貸金業法第2条第1項や出資法第7条の「金銭の貸付け」に当たるものである。
したがって、貸金業の登録を受けずに、上記のような資金融通サービスを業として行うことは貸金業法違反であり(同法第47条2号、第11条第1項)、また、徴収する手数料が年利20%を超える場合は出資法違反に該当する。
年109.5%を超える場合は重罰対象となる。
民事的にも、手数料が年利15~20%を超えると利息制限法により制限超過部分が無効、年109.5%を超える場合は契約全体が無効(貸金業法第42条1項)となる。
そこで、当連合会は、金融庁・警察庁など関係行政機関に対し、中小企業が被害に遭わないよう注意喚起を積極的に行うとともに、違法なファクタリング業者の取締り強化を求める。
あわせて、当連合会としても、被害者救済のため相談体制を強化するなど、引き続き努力する所存である。
2020年(令和2年)6月17日
日本弁護士連合会 会長 荒中
ファクタリング被害
ホットライン結果報告
2020年11月11日、「全国ファクタリング被害ホットライン」が行われました。
本ホットラインはコロナ禍による資金繰りの悪化等に伴い、債権譲渡の形式(ファクタリング)を装い金利規制を潜脱しようという違法な業者の存在が明らかになってきたため、開催したものです。
相談件数は全部で18件、うち事業者ファクタリングが7件、給与ファクタリングが7件、その他のファクタリングが2件、ファクタリングでないものが2件でした。
感想としては、予想よりも事業者ファクタリングが多いという印象です。
給与ファクタリングは、個人の給与を債権譲渡の形式をとって業者が買い取る形で、勤務先(第三債務者)に知られることを恐れる利用者の心理を逆手に取って、実質高金利をとるという手法です。
緊急事態宣言が発出され、生活に困窮する多くの給与所得者が手を出してしまうのではないかと危惧されました。
しかし、労働債権については直接払いの原則があり、金融庁を含め早い段階で給与ファクタリングの問題点が示されたことから、現在、給与ファクタリングの被害は下火になっています。
一方、事業者ファクタリングは、売掛金等の債権について債権譲渡の形式をとって業者が買い取る形式で、利用者の顧客等(第三債務者)に知られることを恐れる利用者の心理を逆手に取って、実質高金利をとるという手法です。
利息制限法の潜脱であること、貸金業法上の問題があること等は給与ファクタリングと事業者ファクタリングで何ら違いはありません。
第三債務者に通知されてしまうと、取引停止に追い込まれかねないという点、資金繰りの困難性から一度手を出してしまうとなかなかこれを断ち切ることができないという点が問題です。
このような事業者ファクタリングは、実質的にはヤミ金の高金利と変わらないものも多く、利用者は遅かれ早かれ破綻するのではというところが危惧されるところです。
今回本ホットラインを実施するに当たり、eラーニングとマニュアルを作成しました。
利息制限法の適用について、貸金業法上の問題点及び貸金業法の金利規制からの救済方法等について解説をしています。
これらの研修材料に接し、ファクタリング問題を研鑽することができ、今後の相談等に向けて非常に有益な情報を得ることができました。
また、給与ファクタリング及び事業者ファクタリングに該当しない別のカテゴリーに属するファクタリングも2件ほど相談がありました。
これは、利息制限法、貸金業法(場合によっては出資法)等の金利規制を潜脱する動きが常に存在していることを示すものではないかと思います。
当部会としては、このような動きを常に注視していかなければならないと考えています。
なお、今回の事業者ファクタリングの相談は東京・大阪に集中していました。
(東京・大阪は事業者ファクタリングの相談が多いのに対し、地方は給与ファクタリングが多いという構図です。)
件数が18件(うちファクタリング16件)なので、このことから傾向を一般化するのは早計ですが、何らかの傾向を示唆するものではないかとも考える次第です。
最後に、当部会としては、今後も、金利規制の潜脱がないかどうかを常に注視していきながら、潜脱する動きがあるときはこれと闘っていこうと考えております。
事業者ファクタリングは、金利規制との関係では容易に勝てるという状況ではありませんが、部会員一同、高金利の潜脱を許さないという目的の下、粉骨砕身していく覚悟です。
この度は、全国で本ホットラインを実施いただきありがとうございました。
今後、同様のホットラインを実施する際にもぜひご協力をお願いいたします。
多重債務部会
副委員長 小野仁司(神奈川県)
ホットラインの結果報告について
本ホットラインの報告は、事業者ファクタリングが給与ファクタリングと同様に違法な高金利貸付けに該当し得ることを明確にし、利用者が抱える恐怖や弱みにつけ込む業者の実態を浮き彫りにしています。
事業者が正当な法の保護を受けられるよう、こうした取組みの継続と、違法業者の摘発・排除を強く支持します。

会長声明について
本声明は、ファクタリングを装った違法な貸付けにより中小企業が過大な手数料を負担させられ、かえって資金繰りを悪化させる実態に警鐘を鳴らすものであり、極めて意義深いものです。
利用者が安心して資金調達できる環境を整えるためには、貸金業法や出資法の厳格な運用により、法の抜け穴を突く違法業者の取締りを強化し、被害拡大を未然に防ぐ必要があります。