違法性を断定できなかったという壁
2社間ファクタリングをめぐる問題は、長年にわたり水面下で拡大してきた。
それにもかかわらず、大手メディアで正面から扱われる機会は多くなかった。
最大の理由は、違法性を明確に示しにくかった点にある。
2社間ファクタリングは、少なくとも形式上は合法と説明されてきた。
貸付ではなく債権譲渡であるという整理が、制度上なされていたからだ。
メディアは原則として、違法性や不正行為を軸に問題を構成する。
合法とされている取引を、違法であるかのように報じることは難しい。
この前提が、最初のハードルになった。
被害者像が見えにくかった構造
次に大きかったのは、被害構造が直感的に伝わりにくかった点である。
高金利や強引な取り立てであれば、一般読者にも分かりやすい。
一方で、2社間ファクタリングは契約に基づく取引として成立している。
利用者は事業者であり、消費者ではない。
自ら契約に署名し、資金を受け取っている以上、自己責任ではないのかという見方が生じやすい。
メディアが問題提起をしても、共感が得られにくい土壌があった。
この点が、記事化の優先順位を下げる要因になった。
取材が成立しにくい現実
取材の難しさも、扱いづらさを強めた。
利用者の多くは、資金繰りに追い込まれた中小事業者である。
経営状態を公にすることは、信用不安に直結する。
そのため、実名や顔出しでの証言は期待しにくい。
匿名取材が中心にならざるを得ず、証言の裏取りも難しくなる。
匿名証言だけで構成された記事は、どうしても説得力を欠きやすい。
編集部として慎重になるのは避けられなかった。
業界構造の複雑さと説明コスト
2社間ファクタリング業界の構造も、報道を難しくした。
正規事業者を装い、広告や広報活動を積極的に行う業者も存在する。
金融用語や契約構造は専門性が高く、短い紙幅で正確に説明することが難しい。
説明を省けば誤解を招く。
丁寧に説明すれば紙幅を超える。
このジレンマが、継続的な報道を阻んだ。
広告との距離感という問題
もう一つ見逃せないのが、広告との関係である。
ファクタリング関連の広告は、特にウェブメディアで一定の市場を形成してきた。
すべてのメディアが影響を受けているわけではない。
しかし、完全に無関係とも言い切れない。
扱い方を誤れば、編集部内で慎重論が出る。
その結果、リスクの少ないテーマが優先される。
これは個々の記者の問題ではなく、構造の問題である。
扱いづらさが沈黙を生んだ
こうして2社間ファクタリングは、違法とは断定できず、被害者像も曖昧で、構造説明にも手間がかかるテーマとして位置づけられた。
結果として、扱いづらい問題として後回しにされ続けた。
メディアが沈黙してきた理由は、問題が存在しなかったからではない。
報道の枠組みに収まりにくい形で、問題が設計されていたからである。
この構造を解きほぐさない限り、同じ種類の問題は、今後も表に出にくいままだろう。

