「2社間ファクタリング 危険」と検索し、GeminiのAI回答を読むと、一見すると利用者に注意を促す良心的な解説のように見える。
手数料が高いこと、闇金的な偽装業者が存在すること、使い込みによる法的リスクがあること。
いずれも事実であり、間違ってはいない。
しかし、よく読むと決定的に欠けている視点がある。
それは、「問題の原因がどこにあるのか」という問いだ。
Geminiの回答は、終始こうした構図を取っている。
手数料が高いのは仕方がない。
闇金のような業者が混じっているのが危険なのだ。
だから利用者は注意深く選び、自己防衛すべきだ。
この整理は、一見もっともらしい。
しかし、ここにこそ2社間ファクタリングを巡る議論の歪みがある。
「危険なのは悪徳業者」という説明の危うさ
AIの説明では、問題の中心は常に「悪徳業者」に置かれている。
20%や30%を超える手数料を取る業者。
分割払いを提案する闇金まがいの業者。
契約書を出さない不誠実な業者。
だが、ここで問うべきなのは別の点だ。
なぜ、2社間ファクタリングという仕組み自体が、そうした業者を大量に呼び込む構造になっているのか。
2社間ファクタリングは、売掛先に通知しない。
回収は利用企業に委ねられる。
資金は即日で渡され、使途は問われない。
この時点で、業者側は常に次のリスクを抱える。
売掛金が本当に存在するのか。
二重譲渡ではないのか。
回収された資金が確実に送金されるのか。
つまり、2社間ファクタリングは、制度設計の段階から「疑い」と「監視」を前提にした取引なのだ。
その結果、業者は高い手数料でリスクを回収しようとし、利用者は常に疑われる立場に置かれる。
これは健全な資金調達の姿ではない。
「相場内なら安全」という幻想
Geminiの回答では、8%から18%程度を相場として提示し、それを超えなければ比較的安全であるかのように読める。
しかし、この整理もまた危うい。仮に10%の手数料であっても、30日後に回収される売掛金を前倒しした対価として支払うなら、その負担は決して軽くない。
しかも、それが単発で終わらない場合、利益構造は確実に歪み始める。
相場内かどうかは、本質ではない。
問題は、その取引がキャッシュフローを改善するのか、それとも削り続けるのかという一点だ。
多くの企業で起きているのは後者である。
手数料が「許容範囲」に見えるうちは、依存は始まらない。
しかし、月を追うごとに現金が残らなくなり、再利用が前提となった瞬間、2社間ファクタリングは資金繰り改善策ではなくなる。
利用者リスクを強調することで隠れる構造問題
AIの説明は、利用者側が犯罪者になるリスクも丁寧に列挙している。
二重譲渡。
入金の使い込み。
詐欺罪や横領罪。
これらは確かに違法行為だ。
しかし、ここでも論点はすり替わっている。
なぜ経営者が「使い込み」に手を出してしまう状況が生まれるのか。
なぜ二重譲渡という極端な行動に追い込まれるのか。
その背景には、2社間ファクタリングが生む慢性的な資金不足がある。
本来入るはずだった売上が削られ、次の支払いに足りなくなる。
その穴を埋めるために、さらに危険な選択肢に近づいていく。
個人の倫理の問題に還元して終わらせると、この構造は永遠に見えなくなる。
「危険」なのは闇金ではなく、合法化された仕組みそのもの
Geminiの回答は最後に「安全に利用するためのチェックリスト」を提示する。
登録の確認。
契約内容の確認。
所在地の確認。
しかし、これらをすべて満たしても、2社間ファクタリングの本質は変わらない。
合法であっても、適正業者であっても、企業の将来キャッシュフローを前借りし、削り続ける構造であることに違いはない。
問題は「危険な業者」ではない。
問題は「危険であることを前提に成立している合法スキーム」だ。
だからこそ、2社間ファクタリングはしばしば「合法ヤミ金」と呼ばれる。
それは感情的なレッテルではなく、構造を正確に表した言葉である。
結論──AIが語らない最大の論点
AIの回答は、利用者にとって分かりやすく、親切で、実用的に見える。
しかし、その親切さの裏で、最も重要な問いが意図的に、あるいは無自覚に外されている。
この取引は、事業を持続可能にするのか。
それとも、静かに衰弱させるのか。
2社間ファクタリングが「危険」と言われる理由は、闇金が混じっているからではない。
合法で、説明可能で、注意点を守ってもなお、事業を壊す方向に働くからだ。
そこに目を向けない限り、どれだけ注意喚起を重ねても、本質的な被害は減らない。

