殆どのファクタリングを不法とする根拠となるものは何?

ファクタリングの違法性と契約について

殆どのファクタリングを不法とする根拠となるものは何?

ファクタリングは「借入ではない資金調達手段」として中小企業に広く普及しています。とくに売掛債権を早期現金化できる利点は、急な支払いが発生した際や、資金繰りに余裕のない企業にとって強力な選択肢となっています。しかし、実際には「ほとんどのファクタリングは違法ではないか」とする厳しい見解が法曹関係者や一部の研究者の間で存在しています。

この見解がなぜ生まれるのか。どのような論拠に基づいて、多くのファクタリング契約が「不法」だとされるのか。今回は、ファクタリング利用者の立場から、その根拠を深掘りし、現実に直面しうるリスクについても明らかにしていきます。


“形式上の売買”では逃れられない実態主義の壁

ファクタリング業者との契約書には、ほぼ必ず「売買契約」と明記されています。利用者も「借金ではない」と説明を受け、あたかもリスクのない資金調達のように感じるかもしれません。しかし、法律の世界では「形式」よりも「実態」が重視されます。つまり、書面上でどう記載されているかではなく、契約の本質がどうであったかが問われます。

たとえば、以下のような構造が見られる場合、「売買ではなく貸付である」と評価される可能性が非常に高くなります。

  • 債権が売却されたにも関わらず、利用者がその回収責任を負い続けている(償還請求権あり)
  • 回収できなかった場合には返金義務を課されている
  • 実質的に元本+利息(手数料)を期日までに返す構造になっている
  • 利用者が自由に売掛先に対する管理を続けている
  • 手数料が出資法の上限を大きく超える水準(例:30〜50%)に設定されている

これらが重なると、裁判所は「これは単なる名目だけの債権譲渡であり、実質は貸付契約である」と判断しやすくなります。


出資法違反の可能性──年利20%を超える「手数料」

ファクタリング契約では、早期現金化に伴い「手数料」が発生します。これが10%、20%、ひどい場合は40%を超えるケースもあります。しかし、仮に実態が「貸付」であると認定された場合、出資法という強力な刑事法が適用されます。

出資法は、「業として金銭を貸し付ける者が年20%を超える利息を取った場合、5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金(またはその併科)」という非常に重い罰則を定めています。
これが適用されれば、その契約は公序良俗違反として無効となり、利用者が支払った手数料の返還請求や、損害賠償請求に発展する可能性もあります。


貸金業法違反のリスク──無登録営業が違法となる理由

貸金業を行うには、貸金業法に基づく登録が必要です。しかし多くのファクタリング業者は、「貸付ではない。あくまで売掛債権の買取だ」と主張し、登録をしていません。ここに根本的なリスクがあります。

すでに述べたように、実質が貸付と評価されるような契約構造であれば、形式にかかわらず「無登録での貸金業を営んでいた」とみなされ、これも刑事罰の対象になります。つまり、違法営業であるという判断がなされる可能性があるのです。

さらに、無登録の貸金業者との契約は違法な契約であり、無効とされるリスクもあります。その場合、譲渡人は「借りたはずの資金を返す義務はない」となる可能性すらあるのです。


二重譲渡・債権不存在──法的な脆弱性

もうひとつ、法的にファクタリングを「不法」とする根拠となるのが、「譲渡対象の債権が存在しない(または確定していない)」ケースや、「すでに他社に譲渡済の債権である(二重譲渡)」という問題です。

売掛債権の発生根拠(請求書の正当性や契約の有効性など)が曖昧な場合、その債権は法的に「不存在」または「無効」とされる可能性があり、そうした債権を担保にした契約自体が違法・無効とされることがあります。
また、債権譲渡登記を行っていない2社間ファクタリングでは、対抗要件が備わっていないため、第三者(他の債権者や債務者)が債務不履行・差押・弁済供託などの対応をとった場合に、売掛金が回収不能になるリスクもあります。


裁判例・金融庁見解から見える“限界”

日本ではファクタリングを明示的に規定した法律は存在しません。そのため、各契約の合法性は個別の裁判に委ねられます。実際、一部の地方裁判所では、「このファクタリング契約は実質的に貸付であり、出資法違反である」と認定した判例も出ています。

また、2020年以降、金融庁や消費者庁もファクタリングの実態について問題視するようになり、以下のような注意喚起を行っています:

  • 契約が売買であると見せかけて、実質的に返済義務を課していれば貸金と判断される
  • 高率な手数料は出資法違反の恐れがある
  • 貸金業法の適用を受ける構造であれば、無登録営業は違法

こうした指摘は、ファクタリングの構造そのものに対してではなく、現実の運用実態が違法性を帯びているという点を重視しています。


「合法」と言い切るにはあまりに不安定な制度

こうして見ていくと、いかに多くのファクタリングが「形式だけを整えて実質が貸金」である可能性が高いかが浮かび上がってきます。問題の本質は、「売掛金の売買」という建前と、「期日までに返金する契約構造」の乖離です。

利用者の多くは「借入ではないから大丈夫」と安心してしまいがちですが、実際には多くの契約が出資法・貸金業法・民法など複数の法律に抵触する危険な橋を渡っており、何かのきっかけで違法と認定される可能性が十分にあるのです。


結論:多数のファクタリング契約が違法とされる素地はある

「殆どのファクタリングが不法」とまで断言できるかは別として、実態として多数のファクタリング契約が出資法や貸金業法の違反とされる要素を含んでいるのは事実です。

現行法のままでは、利用者が知らないうちに違法契約に巻き込まれている可能性があります。だからこそ、ファクタリングを利用する際は「借入ではない」という言葉に安易に安心せず、手数料の妥当性や契約条項の内容、登記の有無、業者の法的登録状況などを慎重に確認しなければなりません。

安心を買うつもりで利用したファクタリングが、法的リスクの種になっていた――そんな事態に陥らないためにも、制度の限界と現実を正しく見据える必要があります。