違法認定後、市場はどう崩れるのか――2社間ファクタリング市場の崩壊シミュレーション(仮説)

不存在債権は「詐欺か?」「不当原因給付か?」

本稿は、現時点で違法認定が出ていないことを前提としたうえで、将来もし2社間ファクタリングに「実質貸付」とする司法判断や行政判断が示された場合に、何が起き得るかを仮定的に整理する試みである。
ここに記す内容は予測であり、断定ではない。実際の展開は制度設計、行政対応、司法判断によって大きく変わり得る。

その点を明確にしたうえで、市場構造に即して、崩壊の連鎖を静かに追っていく。

崩壊は業者からではなく、資金から始まる

最初に動くのは、現場のファクタリング業者ではない可能性が高い。実際に止まるのは、業者の背後にある資金供給である。

銀行、証券会社、ファンド、ノンバンク。これらの主体は、形式上は債権投資や社債引受、ファンド出資という形で関与している。しかし、違法認定が出た瞬間、保有資産の法的性質が一斉に揺らぐ。

貸付と再構成されれば、契約自体が無効または取消対象となる。回収可能性は急速に低下し、引当、評価減、損失処理が一斉に迫られる。

資金の供給が止まった瞬間、表の市場はまだ動いているように見えても、実質的な機能停止が始まる。

次に遮断されるのは送客ネットワークである

資金と並んで、早期に動くと予測されるのが送客網である。

紹介業者、士業、広告会社、比較サイト、アフィリエイト。これらの主体は、刑事責任や民事責任の波及を最も直接に恐れる立場にある。

違法認定と同時に、提携解消、広告停止、リンク削除、契約解除が一斉に起きる可能性が高い。

この遮断は、業者の営業活動に即時の打撃を与える。新規顧客の流入が止まり、既存顧客の継続利用も急速に細る。

市場の「入口」が塞がれた段階で、取引量は短期間で急減する。

利用企業の動きは遅れて顕在化する

利用企業の反応は、最初は比較的静かに進む可能性が高い。

多くの利用企業は、違法認定が出た直後に一斉に行動を起こすわけではない。弁護士や税理士に相談し、情報を集め、様子を見る時間が生じる。

しかし、一定期間を経て、過払い返還請求、無効確認訴訟、不法行為に基づく損害賠償請求が徐々に増え始める。

とくに継続利用者ほど、返還額は大きくなり、集団的な訴訟や一斉請求の動きが現れる可能性がある。

ここで初めて、業者の資金繰りが実体的に破綻局面に入る。

業者の倒産は連鎖的に発生する

業者の破綻は、単発では終わらない。

多くの業者は、高率手数料と継続利用を前提にキャッシュフローを組んでいる。送客遮断、回収困難、返還請求が同時に進行すれば、短期間で資金が枯渇する。

さらに深刻なのは、倒産によって返還原資そのものが消滅する点である。

この段階で、責任追及は必然的に背後の主体へ移動する。

資金供給主体への波及と訴訟の拡張

業者が倒れ、返還不能になった場合、次に矛先が向かうのは、資金供給主体と関与主体である。

ファンド、投資家、銀行、証券会社、紹介業者、広告会社。

共同不法行為、使用者責任、名義貸し、実質運営主体。さまざまな構成で被告は拡張されていく。

とくに、利息相当額の分配を受けていた主体は、返還請求の射程に入る可能性が高い。

ここから市場の問題は、個別業者の不祥事ではなく、金融システムの一部として扱われ始める。

行政対応は段階的に拡大する

行政の動きは、初期段階では比較的限定的に始まる可能性がある。

業者への業務停止、登録拒否、注意喚起。しかし、訴訟と破綻が広がれば、検査対象は必然的に周辺主体へ拡大する。

銀行検査、証券会社検査、ファンドの運用実態調査、士業の懲戒調査、広告表示の是正。

ここで初めて、長年黙認されてきた構造全体が制度の俎上に載る。

市場は「縮小」ではなく「消滅」に近い形で終わる可能性

この連鎖の最終局面は、緩やかな縮小ではなく、急速な市場消滅に近い形になる可能性がある。

なぜなら、2社間ファクタリングの競争力は、高率手数料と規制の空白に依存しているからである。

規制が入り、送客が止まり、資金が止まれば、このモデルが存続できる理由はほとんど残らない。

形を変えた新サービスが出現する可能性はあるが、少なくとも現在の市場構造は、ほぼ原型をとどめずに消える公算が大きい。

本稿は「予測」であり「希望」でもある

最後に改めて明記しておく。

ここに描いたのは、断定ではなく仮説であり、将来の一つの可能性にすぎない。同時に、これは市場が無秩序に拡大し続けることを止めるための、一つの「希望的シナリオ」でもある。

違法性が正面から整理され、責任の所在が明確になり、被害の回復が制度的に進む。その結果として、市場が健全な形に再編される。

それが実現するかどうかは、司法と行政、そして市場参加者の判断に委ねられている。