脅迫罪の基本的な成立要件とは
刑法第222条によれば、脅迫罪が成立するには「生命、身体、自由、名誉または財産に対し害を加える旨を告知」する必要があります。そしてその告知が、相手に恐怖心を生じさせる程度のものでなければなりません。これは口頭だけでなく、手紙やメールといった文書や電子的手段によるものでも当然に適用されます。
ファクタリング会社からの通知が、このような脅迫罪の要件に該当するかどうかは、その文言や文脈、送信の意図によって判断されます。
成立するケース:違法な圧力や不当な催促
例えば、以下のような文面は脅迫罪が成立する可能性があります。
- 「支払いに応じない場合、勤務先に連絡し、あなたの信用を徹底的に破壊します」
- 「家族や関係先にもこの未払いを通知します。社会的に抹殺されても文句は言えません」
- 「今すぐ支払わなければ、法的手続きを取るが、ただでは済まさない」
これらはいずれも、名誉や社会的信用に対して明確な害悪の告知をしており、受け手に相応の恐怖を与える内容と評価される可能性があります。仮に債権が適法に譲渡されたものであっても、その取り立てが社会通念を逸脱した手段であれば、違法性を帯びます。
特に「脅し文句」に加え、文末で「これは正式な法的請求です」などと一文を添えて正当化を試みても、それだけで違法性が免除されることはありません。
成立しないケース:合法的な請求通知や支払催促
反対に、以下のような表現であれば、一般的には脅迫罪には該当しません。
- 「〇年〇月〇日までに支払いがない場合、法的措置を検討いたします」
- 「未払債権について通知いたします。期日までのご対応をお願いいたします」
- 「ご連絡がない場合、弁護士を通じた回収を進めます」
これらの表現は、あくまでも債権の存在を前提とした通常の請求・督促の範囲にとどまり、受け手に対して不当な恐怖を与えるものではありません。裁判所での強制執行や法的措置の通知も、手続きの正当性を前提とすれば違法にはなりません。
ただし、これらも送信の頻度や時間帯(深夜に繰り返すなど)、口調や態度(威圧的な語調)によっては、脅迫や別の不法行為(例えば業務妨害)と見なされることがあります。
境界線は「社会通念」と「受け手の恐怖」
脅迫罪の判断においては、社会通念上「これは行き過ぎだ」と評価されるかどうか、そして実際に受け手が恐怖心を抱いたかどうかが大きな要素になります。
ファクタリング業者の中には、回収にあたって過激な文言を用いたり、債務不存在の主張が可能なケースにもかかわらず一方的な請求を行ったりする例があります。このような場合には、脅迫罪や強要罪、さらには名誉毀損など、刑事・民事上の責任が問われる可能性も十分にあります。
被害を受けたと感じたら
違法な文言による圧力を受けた場合には、まず証拠(メール、LINE、郵送物など)を保存し、弁護士に相談するのが得策です。また、内容によっては警察に相談することも可能です。
ファクタリングという制度は本来、資金繰りを助けるための健全な仕組みであるべきですが、その名前を借りて過剰な回収や違法な圧力をかける業者も存在します。そうした行為に対しては毅然と対応すべきです。

