金融庁が2社間ファクタリングを管轄外とする理由

不存在債権は「詐欺か?」「不当原因給付か?」

――見て見ぬふりがもたらすヤミ金化の現実

「債権譲渡だから関係ない」金融庁の建前

2社間ファクタリングに関する問題を金融庁に相談しても、返ってくるのは決まり文句のような一言です。

「債権譲渡契約なので、当庁の所管外です。」

あくまで貸金契約ではなく、形式上は「売掛債権を譲渡して現金を受け取る」契約であるため、貸金業法の適用対象外であるというのが金融庁のスタンスです。そのため、2社間ファクタリングでどれだけ高い「手数料」が差し引かれていても、年利換算すれば利息制限法や出資法を大きく超えていても、行政は「これは貸金ではない」との一点張りで介入しようとしません。

しかし現場を見れば、それは単なる“建前”に過ぎないことは明白です。

実態は貸付でしかない2社間ファクタリング

2社間ファクタリングでは、ファクタリング業者が売掛債権の「実質的な回収」を債権者(売主)に丸投げしているケースがほとんどです。

売掛先への通知も行われず、回収不能時の責任も売主にあるため、ファクタリング会社は「資金を渡して、決まった期日に元本+手数料を回収する」という構造になります。しかもこの「手数料」は、1か月で10〜30%という異常な水準に達することが少なくありません。

これは債権譲渡ではなく、実質的に「元本と利息を返させる短期高利の融資=貸金業」と言えます。にもかかわらず、金融庁は「形式上、売買契約だから関係ない」として、制度整備や規制導入を拒んでいるのです。

なぜ金融庁は所管外を主張し続けるのか?

では、なぜ金融庁はここまで「所管外」に固執するのでしょうか。表向きの理由としては、現行法上、債権譲渡は民法・商法の領域に属し、金融商品取引法や貸金業法の枠外にあるという点が挙げられます。

しかし、裏にはより根深い事情があるとも考えられます。

① 既存の制度では対応できない

2社間ファクタリングのような“貸金類似行為”を規制するには、貸金業法の再定義や、新たな業法の制定が必要になります。これは非常に時間と政治的コストを要する作業です。明確な被害事例や世論の後押しがなければ、動かないのが行政の本音でしょう。

② 大手金融機関への配慮

銀行系ファンドや大手ノンバンクも、2社間に類する債権流動化スキームを用いています。もし金融庁が「2社間ファクタリングは実質的に貸金であり違法の可能性がある」と公式に認めた場合、それらの大企業も規制対象となる恐れが出てきます。

このため、規模の小さな業者による問題であっても、「全体のスキームへの影響を避けたい」という意図から、当局が見て見ぬふりをしているのではないかという見方は、決して的外れではありません。

③ 行政の縦割りと責任回避

金融庁は貸金業を所管しますが、債権譲渡自体は民事の問題であり、法務省や消費者庁ともまたがる領域になります。この“縦割り行政”の弊害により、どの省庁も正面から取り組もうとせず、結果的に誰も責任を負わないという構造ができ上がっているのです。

被害の深刻化と放置の代償

2社間ファクタリングを巡る被害は、今も水面下で続いています。特に問題なのは、利用者の多くが中小企業であり、資金繰りに苦しむ事業者ほどこの“ヤミ金まがい”の手法に頼らざるを得なくなる点です。

本来ならば、困窮した事業者を守るべき行政が、形式論で逃げ続けることで、結果として違法高利行為を容認している構図が浮かび上がります。金融庁の「所管外」という姿勢は、企業の再建を阻むどころか、事業継続そのものを奪っているのです。

求められる制度改革と行政の目覚め

2社間ファクタリングをめぐる法的グレーゾーンを解消するには、以下のような措置が急務です。

  • 貸金業法またはファクタリング専用の新法による、実態ベースでの業務定義
  • 高額な手数料を「実質年利」として換算するガイドラインの策定
  • ファクタリング業者への登録制・免許制の導入
  • 債権譲渡であっても一定の範囲で金融庁の監督権限を明示する法改正

民間が抜け穴をつくる前に、行政が制度の穴を塞がなければならない時期に来ています。

まとめ:制度の“盲点”を放置するリスク

金融庁が2社間ファクタリングを所管外とする姿勢は、制度的には一貫しているように見えますが、実態に即していないという批判は根強くあります。

形式と実態が大きく乖離しているにもかかわらず、「債権譲渡だから貸金ではない」と言い張る姿勢は、まさに官製グレーゾーンの温存です。そしてこの“放置”が、ヤミ金まがいのファクタリング業者の跋扈を許し、多くの中小企業の経営を追い詰めています。

このまま見て見ぬふりを続けることは、金融行政にとっても大きな信頼失墜につながりかねません。形式よりも実態を見る。今こそ、その基本に立ち返るべき時ではないでしょうか。