その表現は脅しでは?

ファクタリングの違法性と契約について

債権譲渡登記・刑事罰に言及するファクタリング業者の“圧力的PR”を検証する

ファクタリングは、売掛債権を譲渡して早期に資金化する手法として、中小企業や個人事業主から一定の需要があります。特に2社間ファクタリングは、売掛先に通知せず資金調達ができることから、取引先との関係性を気にする事業者に選ばれてきました。

ところが、ファクタリング業者の中には、自社サービスの説明のなかで“ある種の脅し”とも受け取れるような表現を用いるケースが見られます。

「返済しなければ刑事罰」「登記記録が訴訟の証拠になる」──こうした記載が、顧客に対して過剰な圧力を与えていないか。
本稿では、ファクタリングの仕組みと照らし合わせながら、このような表現の妥当性やリスクについて検証します。


「刑事罰に処される」──詐欺罪・横領罪の安易な持ち出し

あるファクタリング業者のWebサイトでは、以下のような文言が掲載されていました。

ファクタリング会社に回収した売掛金を返済しない状態を続ければ、最悪の場合、刑事罰に処されます。詐欺罪や横領罪などの刑事告訴に発展します。

この一文は、一見すると「契約を守らないと法的責任がある」という、当たり前の内容に見えるかもしれません。しかし、ここで注目すべきなのは、**「刑事罰」「詐欺罪」「横領罪」**といった重い言葉を前面に出し、それを一般的な債務不履行と直結させている点です。

通常、2社間ファクタリングはあくまで債権譲渡契約に基づく民事取引です。債務者(売掛先)からの支払いを受けた後に、それをファクタリング業者に送金しなかったとしても、まずは民事上の契約違反・不履行の問題として扱われるのが原則です。

それを即座に「詐欺罪」「横領罪」と断定的に書くのは、法律構成を無視した過剰表現であり、場合によっては顧客の判断を萎縮させる不適切な営業トークに該当するおそれがあります。

とくに資金繰りに困ってファクタリングを利用する事業者にとって、「刑事罰」という言葉は強い心理的プレッシャーを与えます。契約違反と犯罪の区別があいまいなまま一方的に記載されている場合、それは事実上の恫喝的説明と受け取られても不思議ではありません。


登記があると「訴訟で敗訴」?

債権譲渡登記を“脅しの証拠”として扱う危うさ

同じく問題となるのが、債権譲渡登記に関する次のような表現です。

登記の記録を証拠に使われると、敗訴となり社会的信用を失う恐れもあります。

債権譲渡登記とは、債権の譲渡が第三者に対して対抗できるようにするための手続きであり、不動産登記のように公示性を持ちます。とくに2社間ファクタリングでは売掛先への通知が行われないため、債権の二重譲渡リスクを回避する目的で登記を活用することがあります。

しかしながら、登記されたからといって直ちに訴訟で敗訴が確定するわけではありません。あくまで、登記は「ある時点での譲渡の存在を第三者に対して主張する」ためのものにすぎません。訴訟においては、登記だけでなく契約書・実際の債権の帰属・送金履歴などを総合的に判断されます。

この点を無視し、「登記がある=負ける」「登記がある=信用を失う」と一方的に記載するのは、読者に登記=犯罪の証拠であるかのような誤解を与えるものであり、極めてバランスを欠いた説明です。

中小企業経営者の中には、「登記されたら裁判で負けてしまうのか」と不安に陥る方もいるでしょう。そうした無知につけこみ、恐怖感を利用して契約履行を迫るのであれば、それは誠実な商行為とは言えません。


支払いが遅れた事業者に「脅す」のが正当なのか

もちろん、契約を履行しないことにはリスクがあります。売掛金を受け取りながらファクタリング会社への返済を放置すれば、契約違反で訴訟を提起される可能性もあります。

しかし、それを説明するのと、刑事罰や登記・社会的信用の失墜を並べ立てて一方的に警告することはまったく別の話です。

とくに問題となるのは、こうした記載がFAQやコラムの中にさりげなく紛れていることです。警告として明確に記すのではなく、あたかも“常識的リスク”のように読者の脳裏に刷り込もうとする構造が見え隠れします。

このような表現は、金融業において最も重要な「説明責任」と「誠実性」に反する行為です。顧客がリスクを正しく理解するためには、

  • どのようなケースで民事訴訟になるのか
  • 刑事責任が問われるのはどのような特殊事情のときか
  • 登記にはどういう効力と限界があるのか
    といった、冷静かつ中立的な情報提供が求められます。

ファクタリングは「最終手段」ではない

だからこそ誠実な説明が必要

ファクタリングは、本来であれば事業の成長や回転資金の確保に役立つ手段です。ところが、「支払いが遅れれば刑事告訴」とまで書かれてしまうと、利用者は「怖い業者」「関わってはいけない手法」と感じてしまいます。

そして、実際にトラブルが起きたときに誰にも相談できず、さらに孤立し、資金繰りが破綻するという悪循環に陥ります。

ファクタリング業者が本当に顧客の味方であると自負するのであれば、

  • 法的リスクを正しく説明する
  • 脅迫的な言い回しを避ける
  • 問題が起きた際には誠実な対応を約束する
    といった信頼形成の姿勢が欠かせません。

終わりに──「誠実な説明」は、最低限の責任

登記や刑事罰のようなキーワードは、法律に詳しくない人々にとって強烈な印象を与えます。それゆえに、説明の中でこうした言葉を用いるときには、慎重な配慮が求められるはずです。

事実を伝えることと、恐怖を利用して契約履行を迫ることは違います。前者は説明責任であり、後者は威圧行為に近いものです。

健全なファクタリング市場の発展のためにも、法的な正しさだけでなく、倫理的な誠実さが問われる時代になっています。
「その説明は、本当に顧客の利益のために書かれているのか?」──すべてのファクタリング事業者が、この問いを自らに投げかけるべきではないでしょうか。