「法令遵守」を掲げるファクタリング業者の本音──その標榜が意味するもの

ファクタリングのトラブル

最近、ファクタリング業者の公式サイトやパンフレットなどで、やたらと「法令遵守」や「反社会的勢力との関係は一切ありません」といった文言を強調する事例が増えています。企業として当然守るべき姿勢であるにもかかわらず、それを「でかでかと」掲げることには、むしろ不自然さを覚える人も少なくないでしょう。

特に、貸金業でもサービサーでもない民間のファクタリング業者が、「自社の正当性を強く主張する姿勢」を見せるとき、そこには往々にして、構造的な違法リスクや業界のイメージ悪化を逆手に取った“予防線”としての意図が透けて見えます。

◆ なぜ「法令遵守」をあえて強調するのか

本来、法令を守るのは当然です。それをあえて強調するということは、**「守っているつもりだけれど、そう見られていない」あるいは「過去に疑義を呈されたことがある」**という背景があることが多いのです。

特に、弁護士法第72条では、「弁護士または弁護士法人でなければ、報酬を得る目的で法律事務を取り扱ってはならない」とされています。債権の回収は典型的な法律事務であり、営利目的であれば原則として弁護士資格が必要です。これに該当する行為を、無資格のファクタリング業者が行っていれば「非弁行為」として処罰対象になります。

そのため、少しでも「回収寄り」の動きを見せたファクタリング業者は、弁護士法違反の疑念を持たれることがあるのです。ここに、過剰なまでの「法令遵守」アピールの根拠があるといえるでしょう。

◆ サービサー登録がないのに「債権管理・回収業務」を行うのか?

さらに問題なのは、「債権管理回収業に関する特別措置法(サービサー法)」の位置付けです。サービサー法では、法務大臣の許可を得た特定の法人(=サービサー)だけが、一定の金銭債権について債権回収業務を行うことを認められています。言い換えれば、それ以外の法人が報酬を得て他人の債権を回収することは、原則として違法です。

ところが一部のファクタリング業者は、「自社が保有する債権(=買い取った売掛債権)は**“特定金銭債権”にあたり、回収業務は合法だ”**と主張しています。しかし、ここには解釈上のグレーゾーンが存在します。

たしかに、サービサー法施行令では、ファクタリング会社の取得した売掛債権も「特定金銭債権」に含まれる可能性があるとされていますが、それはあくまでサービサー業者が取り扱うことができる対象債権という意味に過ぎません

「自社がファクタリングした債権は特定金銭債権なので、サービサー免許がなくても自ら回収できる」との主張は、実務上、相当な法的リスクをはらんでいます。

◆ 本当に「売買契約」か? 実質は「貸付契約」になっていないか

ファクタリングが合法か違法かを分ける最大のポイントは、「債権譲渡契約」であるか、それとも「実質的な融資」であるかです。たとえば、回収不能時に償還義務を契約者に課すような「リコース型ファクタリング」や、手数料が50%を超えるような極端な条件での買取などは、契約形態こそ売買であっても、実態としては高金利融資と見なされるおそれがあります。

この場合、貸金業登録を行っていない業者は、貸金業法違反として処罰対象となり得ます。

このように、ファクタリングという取引は、「形式」と「実態」の両方を満たしていない限り、合法とは言い難い構造になっているのです。

◆ 「反社ではありません」は逆に怪しい?

ファクタリング業界には、かつて反社会的勢力が関与していた事例もあり、「債権回収」の名目で法外な手数料を請求したり、脅迫まがいの督促が行われるといったケースが報道されたことがあります。そのため、今でも業界全体に対して世間の目は厳しく、「反社との関係がない」ことを強調する業者が多いのが現状です。

しかし、「反社との関係は一切ございません」という文言がトップページにまで記載されている業者は、むしろ**「なぜそれをわざわざ書く必要があるのか?」という疑問を呼びます。**

まっとうな業者であれば、そんなことは当たり前。あえてアピールする必要もありません。むしろ、「反社との関係を疑われた過去がある」「関係を断ち切ったことを強調している」などの背景がある可能性が否定できないのです。

◆ 「法令遵守」は中身で語るべきであり、態度でごまかすものではない

以上のように、ファクタリング業者が「法令遵守」を前面に押し出す場合、それが実際の業務と一致しているかどうかを慎重に見極める必要があります。

  • 契約書は明確な債権譲渡になっているか
  • 償還請求義務がないか
  • 債務者への通知が行われているか
  • サービサー登録や貸金業登録の必要がないことが法的に説明できるか
  • 回収方法が法的に適正か(非弁・脅迫的でないか)

こうした点を満たしていない限り、たとえ「法令遵守」と何度繰り返しても、実態が伴っていなければ意味はありません。むしろそれは、「見た目を取り繕っているが、どこかに違法性があるのではないか」と見なされる原因にもなり得るのです。


「法令遵守」とは、行動で示すもの。言葉で飾るものではありません。
ファクタリングという業態の性質上、その言葉が空虚なスローガンにならないよう、慎重な運用が求められています。