伸び続ける2社間ファクタリング市場 — 歯止めない拡散に警鐘を

不存在債権は「詐欺か?」「不当原因給付か?」

「正式な統計はないが、どうも伸びている気がする」――この直感は、数字を紐解けば現実に近いものでした。

🔍 市場拡大は感覚的ではない──世界と日本のデータ

まずグローバル市場では、ファクタリング全体の取扱高は、2022年に約3兆3,362億ドル、2023年には約3兆6,105億ドルへと、年率約8%で拡大中です。2030年には5兆ドル超の規模へと飛躍する見込みで、資金調達手段としての存在感が増しています 。

一方日本国内でも需要は増加傾向。2023年度の売掛債権買取額は、5.7兆円規模に膨れ上がり、コロナ禍後の経済回復・円安・物価高騰と相まって、資金ニーズが顕著となっています 。市場規模や業者数の成長がはっきり示されています。

特に特徴的なのは、2社間ファクタリングに特化した業者の参入急増です。2023年の時点で2社間特化型は23社にのぼり、建設業・運送業・個人向けに特化した専門業者も複数存在しています 。さらに、オンライン完結型2社間案件は急速に普及し、「ネット広告で見かけるようになった」というユーザー実感とも一致する動きです 。

💡 ネット広告激増 — 規制の“空白地帯”

こうした背景を受けて、とりわけここ半年ほどで2社間ファクタリング業者のネット広告は急増しています。主に「即日現金」「審査なし」「売掛先に知られずに」などの文言が並び、SNSやGoogle広告上に氾濫。インターネット広告費全体が2024年に前年比6.4%増と堅調に伸びている中 、ファクタリング業者がこの波に乗り、露出機会を最大化している様子が見受けられます。

「広告増=市場拡大の条件は整った」と言えるでしょう。しかし、こうした広告は“情報弱者ビジネス”ともなりかねず、特に資金繰りに悩む中小・個人事業主に強く刺さる罠が潜んでいます。

🏛️ 行政・メディア・世論は動いているのか?

一方で行政の対応は、まるで置いてきぼり。現時点で全国的な統計は存在せず、各都道府県の注意喚起は「通り一遍」「他人事のような」内容にとどまっています(大阪府の注意喚起も酷評に値します)。明確な被害件数、悪質業者の名指し、公的窓口設置…といった施策が皆無のままです。

また、報道も部分的。典型的な被害事例が取り上げられることはあるものの、定量的被害額や行政が把握している件数には触れず、「利用者注意」とだけ終わる。世論としても、顕在化した被害が「自己責任論」で済まされやすい構造が見え隠れします。

🚨 なぜ歯止めがかからないのか?

  • 法整備の遅れ:ファクタリング手数料に関する法的上限はなし。“二重取り”や“実質的貸金”構造は景表法や貸金業法でグレーに置かれ続けている。
  • 統計不整備:被害額や相談件数を把握・公開する仕組みが未構築。行政は「正式な統計はありません」と明言するだけ。
  • ネット広告の規制なし:金融商品に類するにもかかわらず、金融庁・経産省ともにネット広告への規制を講じていない。
  • 情報格差:「審査なし、即日入金」は中小・個人事業主にとって魅力的。知識・資源が限られる主体をターゲットに成長していく。

🛠️ 止めるべきステップとは?

  1. 統計整備と被害実態の可視化
    → 全国規模で被害額・相談件数を集計、公表すべき。行政の責任はここから。
  2. 広告規制の導入
    → PRTR制度や金融広告規制を拡張し、「法外手数料」「審査なし」「審査甘い」といった文言に制限を。
  3. 公的相談窓口・無料契約チェック
    → 地方自治体や公的機関が実務チェックできる体制を。AI契約書診断APIなども活用。
  4. 悪質業者のブラックリスト化
    → 行政・弁護士会・消費者庁が連携し、実名と被害内訳を公表。警告を徹底する。
  5. 啓発強化と補助金制度創設
    → 中小支援施策にファクタリング契約チェック補助を追加。知識の非対称性を是正。

🧭 結び — 市場成長の裏にあるリスク

数字と実態が示すのは、「2社間ファクタリング市場は、統計整備も規制も追いつかないまま拡大している」という現実です。ネット露出は増え、業者は増え、資金ニーズは高まっている。

にもかかわらず行政も世論も無策で、時間だけが過ぎています。もし今、この拡散に“歯止め”をかける瞬間があるとすれば、それは「統計を作る」「広告と業者の監視をする」「公的支援を具体化する」ことでしかありません。個人・中小企業の資金繰りを理由にした「自己責任論」に押し込めず、構造的に歪んだ市場に国家として肩入れしないための行動を、いまこそ求めます。