私たちは「銀行」や「上場企業」に、ある種の“信用”を置いてきた。財務の健全性、法令遵守、社会貢献、そして何よりモラル──そうした美徳の象徴として、彼らを見てきた。
だが、近年は違う。
彼らは自らの「信用」を利用し、その傘の下で限りなくグレーに近い商法を展開する企業を支援・連携し、あるいは「業界団体」という匿名性の高い器に名を連ねている。
その最たる例が、「2社間ファクタリング」への加担である。
■ グレー商法に“信頼の看板”を貸す大企業
2社間ファクタリング──売掛債権を債務者に通知せずに売却し、事実上“借金に似た資金提供”を行う手法である。その実態はしばしば高額手数料、二重譲渡、強引な取り立てといったヤミ金に酷似した構造を持つ。にもかかわらず、大手企業はこの市場の成長に目をつけ、自らも参入、あるいは「監修企業」として名を貸すようになった。
たとえば、「業界健全化」を掲げる一般社団法人OFA(オンライン型ファクタリング協会)には、三井住友カード株式会社やGMOグループの名がある。だがこの協会に強制力はない。ガイドラインを作っても、処罰も公開もない“自己満足の声明”にすぎない。
それでも大手の名があるだけで、利用者は「信頼できそう」と思ってしまう。
これが最大の落とし穴だ。
■ 「合法の仮面」は、弱者を狙うための道具か
悪質な2社間ファクタリング業者が狙うのは、資金繰りに苦しむ中小企業だ。「銀行は貸してくれない」「事業を立て直すには今すぐ資金が必要」──そんな切羽詰まった状況につけこみ、「すぐ現金化」「登記不要」「銀行審査不要」と謳って誘い込む。
ところが蓋を開ければ、数十%にも及ぶ手数料、売掛先への通知による信用毀損、支払い遅延時の恫喝的督促といった地獄が待っている。
にもかかわらず、業者はこう言うのだ。
「うちはOFAの会員です。三井住友カードさんやGMOさんも加盟してますから、安心です」
これはもはや、企業の信用を“犯罪まがいの商売の道具”として悪用している構造だ。
そして三井住友やGMOのような大手は、「うちは直接やってない」として、責任を棚上げして黙認する。
■ 法の盲点と企業モラルの崩壊
今、日本にはファクタリング業を監督する法律が存在しない。貸金業法でも、金融商品取引法でも規制対象外。その盲点を突く形で、2社間ファクタリング業者は“貸金でないから合法”と開き直り、事実上の融資に近い商売を展開している。
法が整備されていないのなら、少なくとも道徳が機能しなければならない。
しかし、ここに参加する大手企業は、「制度がないのなら、責任もない」と居直っているように見える。
社会的信用を盾にしながら、社会的責任は放棄する。
これが、上場企業が取るべき姿勢なのだろうか?
■ 結語:信用は、責任と一対でなければならない
「銀行系だから安心」「上場企業が絡んでいるから大丈夫」──そんな幻想に、もう騙されてはいけない。
本当に問うべきは、「誰がその構造に関わっているのか」ではない。
「その構造が、誰を傷つけているのか」だ。
中小企業の命綱を握り、合法の仮面をかぶって利益を得る。その裏で廃業、夜逃げ、自殺に追い込まれる経営者がどれだけいるかを、大企業は見ていない。
それを許す我々にも、見過ごした責任がある。
信用は“看板”ではない。信用とは、裏切らないという覚悟のことだ。

