■ 表向きは「BtoB決済」、実態は“偽装ファクタリング”
近年、虎ノ門の高層オフィスに拠点を構え、VC資本をバックに急成長している新興系金融企業がある。表向きの事業内容は「BtoB決済サービス」や「与信モデルの構築」などだが、主力商品は明らかに2社間ファクタリング型の即日資金化サービスである。
だが、そのWebサイトや広報資料には、「ファクタリング」という言葉は極力使われていない。「ノーリスク」「即日払い」「柔軟な審査」といった魅力的なコピーの裏で、実際には債権譲渡を装った、法規制回避型の貸付スキームが行われている可能性が高い。
■ 巨大な出資者が裏付ける“信用の演出”
この企業には、政府系ファンド、メガバンク系列のベンチャーキャピタル、大手地方銀行、上場企業が株主として名を連ねている。さらには、金融庁の登録が必要とされる銀行・信託・保険の名まである。
こうした「一流企業たちの名義」は、一見すれば社会的信頼性の証明書のように映る。だが問題は、この信用が本当にそのビジネスモデルの健全性を担保しているかどうかである。仮に出資者がスキームの実態を正確に把握していないとすれば、これは出資者責任の重大な逸脱であり、逆に「信用の私物化」ではないのか。
■ 弁護士の肩書で正当化はできない
この企業は、著名法律事務所を複数名乗っている。上場企業やIPO準備企業が頼るような大手弁護士法人が並ぶ構成だ。もちろん、これは「法的に問題ない」という印象を与えるための強いメッセージである。
しかし、いくら弁護士が関わっていても、実態として貸金に近い行為がなされていれば、それは違法である。貸金業法や利息制限法に違反する可能性がある取引を、外形だけで「債権譲渡」と偽装しても、法の趣旨から見れば許容されるものではない。
顧問弁護士の名を借りて、法のグレーゾーンを突き抜ける行為は、むしろ法制度そのものへの信頼を損なう行為である。
■ 返済を強いる“非・貸金業者”の詭弁
この企業のサービス構造では、売掛先への通知を行わない「2社間ファクタリング」が中心だ。つまり、債権譲渡の実態は外部から見えず、実質的には売掛金の回収を利用者に任せたまま、その金銭を“返済”させる構図になっている。
この「返済」という言葉の存在こそが、ファクタリングではなく、隠れた融資行為であることを示している。本来、ファクタリングは譲渡であり、返済という言葉は発生しないはずだ。
にもかかわらず、「支払遅延」「未回収時の協力義務」「再請求の可能性」などの契約条項が盛り込まれているならば、これは事実上の償還請求権付き融資であり、貸金業登録が必要な取引と評価されかねない。
■ 実質は“登録不要の高利貸し”
このような構造は、貸金業法の規制を受けずに資金を貸し付ける“合法ヤミ金”と同様の構造を持つ。しかも、利用者は資金繰りに困窮した中小零細企業であり、法的知識も乏しく、「正規の金融取引」だと信じて契約してしまう。
売掛先からの入金が遅れれば、「返済不能」となり、違約金・遅延損害金・法的措置などが現実化する。しかも、利息制限法や出資法の対象外とされているため、実質年率100%を超える“手数料”が課される例も珍しくない。
これは形式を取り繕った高利貸し以外の何物でもない。
■ 問われるべきは、業者だけではなく、仕組みを許した側
このスキームが社会的に許容されている最大の要因は、**それを支えている出資者、顧問、そして行政の“黙認”**である。貸金業法を回避し、消費者保護の枠外に位置するこの金融モデルは、本来であれば速やかに制度的対応が必要なはずだ。
にもかかわらず、大手金融、ベンチャーキャピタル、政府系投資ファンドがこれを放置しているのは、制度疲労か、あるいは“見て見ぬふり”か。
■ 結語:「法の目をかすめた正義」は、いずれ崩れる
いくらオフィスが洗練されていても、いくら株主に一流企業が名を連ねていても、“貸金を貸金と呼ばない商売”は、いつか社会的信頼を失う。
いま必要なのは、「制度の抜け穴」を正すことと、「金融サービスにおける倫理」の再構築である。資本力を背景に法の網をかいくぐることができても、それは永続的な信用にはならない。
このスキームが存続し続ける限り、救われるべき中小企業はむしろ、誤った“信用”に騙され、崖から落とされ続けることになるだろう。

