「税金の滞納があっても大丈夫」「3時間で3500万円を現金化」「借入でなくても資金繰りは回せます」──これらの言葉が並ぶのは、千葉県の人材派遣業者が語る2社間ファクタリング業者「○○」の体験談である。にわかには信じがたいこの成功談は、リスティング広告経由で表示された同社のページから拾い上げた“顧客の声”の一部である。
しかし、本当にこれは“成功談”なのだろうか?──いや、むしろこれはファクタリング業界の闇と、制度のすき間を突いた違法すれすれ、いや実質的に違法な商売の氷山の一角である。
■ “3時間で3500万円”の正体──それ、誰が出す金ですか?
最大の違和感は、「千葉県の人材派遣業者」が、税金を滞納しているにもかかわらず、3時間で3500万円の資金調達に成功したとされる点である。税金の滞納は、金融機関が融資を断る最も代表的な理由の一つだ。銀行が背を向ける理由が明白であるにもかかわらず、なぜ「○○」なる新興業者がこれほどの巨額資金を“即時”で提供できたのか?
通常、2社間ファクタリングにおける債権譲渡は、買い取り側が相応のリスクを取る形で成り立つ。つまり、本当に債権が存在しているか、二重譲渡の危険はないか、支払企業の信用力はあるか──といった精査を必要とする。だが、わずか「3時間」で「3500万円」規模の取引が完了するとは、どう見ても通常の審査プロセスでは説明がつかない。
ひとつ考えられるのは、そもそも“債権”など実在しなかったという可能性だ。つまり、形だけの売掛金データをもとに、虚構のファクタリング契約を成立させ、実質的には高利貸しと変わらぬ資金融通が行われている──いわゆる**「擬似貸付」「隠れ融資」**という違法行為である。
■「運転資金を借入で補わずに」──という呪文のトリック
○○の体験談には、「借入ではない」「信用情報に傷がつかない」「売上があるのに資金が足りない業種に最適」といった“耳障りの良い言葉”が並ぶ。しかし、これこそが2社間ファクタリングの最大の欺瞞である。
確かに、形式上は「債権の譲渡」にすぎないため、借入ではないとされる。だが、債権を買い取る側(=ファクタリング会社)は、実態として回収不能になれば企業に支払義務を求める契約を結ぶ──つまり、万が一相手先企業が支払不能になっても、「あなたが弁済してね」と、堂々と迫ってくるのだ。これが「償還請求権付き」の契約であり、金融庁や弁護士会が厳しく問題視してきた“実質貸金業”の温床である。
とくに「借入を使わずに資金繰りができた!」という文言は、そのまま「金融機関の審査をかいくぐって高利の金を引っ張れた」という意味に等しい。まともな融資が受けられない企業を、資金調達の蟻地獄へと誘い込む常套句である。
■ 3500万円×2件──その不自然な“実績”は偶然か
今回特筆すべきは、このサイトに掲載されている体験談の中に「3500万円超」の巨額取引が2件もある点だ。
しかも2件とも人材派遣業で、所在地も同じ千葉県。1件は3500万円、もう1件は3520万円と、なぜか極めて近似した数字である。偶然にしては出来すぎている。想像力を働かせるならば、以下の可能性を排除するべきではないだろう。
- 架空の体験談による“信頼演出”:実在しない企業を装い、巨額取引実績を捏造。
- 関係者企業による“資金循環”:グループ内企業で資金移動をし、あたかも取引があったかのように見せかけるマネロン的手法。
- **既存取引の“二重譲渡”**による水増し:すでに他社に譲渡している債権を、再度別会社へ譲渡し資金を得る違法行為。
このような懸念が頭をよぎる時点で、少なくとも健全な金融サービスとは言いがたい。巨額取引がむしろ信用を損なうという、歪んだ構造がここにある。
■「ファクタリングは怖いと思っていたが…」の正体
また、「正直怖いと思っていたが、○○は親切だった」というような“印象操作的文言”も特徴的だ。これは、一般的にファクタリングに対してある「反社的なイメージ」や「闇金まがいの強引な取立て」の噂を逆手にとり、あたかも“クリーンな企業”であるかのように装う典型的なステルスマーケティングの手法である。
だが、見かけが丁寧であろうと、裏で違法スレスレの金融行為をしているのであれば何の意味もない。詐欺師が礼儀正しいからといって、詐欺が許されるわけではない。
■ 法整備の遅れを食い物にする者たち
現在、日本における2社間ファクタリング業は、金融業の登録を要さない「無認可事業」である。金融庁の監督も届かず、手数料も実質利率もブラックボックス。そこをいいことに、○○のような業者が野放図に「巨額即金」などと煽りながら、弱った中小企業を刈り取っている。
「税金滞納でもOK」「即日数千万円」「借入ではないから安心」──こうした言葉の裏にあるのは、ファクタリングという制度を悪用した“貸金業の偽装”にほかならない。
■ 最後に
この「○○」なる業者が、果たして健全な金融サービス提供者なのか、それとも制度の死角に巣食う新手の闇金なのか──判断はもはや読者に委ねるまでもないだろう。
中小企業の経営者諸氏には、どうか“3時間で3500万円”などという魔法のような言葉に騙されぬよう、冷静な判断と、信頼できる第三者の相談を心がけていただきたい。そうしなければ、あなたの会社の売掛金が「うりかけ」では済まず、「売り尽くし」になる日が、そう遠くないかもしれない。

