オンライン型ファクタリングの拡大に潜む「信用の空白」——“ペイトナー”53億円調達報道を読む

ファクタリングの違法性と契約について

2025年7月2日、オンライン型ファクタリングサービスを展開するある企業が、主要メガバンクを含む複数の金融機関から総額53億円の資金調達を行ったと発表した。表面的には「フリーランス支援」「挑戦を後押しする金融の民主化」といった美名が踊るプレスリリースだが、その内実に目を凝らせば、従来の与信基準とリスク管理の境界を曖昧にする、極めて危うい金融構造の拡大であることが透けて見えてくる。

■「債権流動化」の美名とリスクの転嫁

今回の資金調達の要は、ファクタリングによって取得した「買取債権」の流動化にある。つまり、フリーランスなどから買い取った請求書(売掛債権)を裏付けとして、金融機関から資金を引き出すというものだ。しかも、信託銀行を介したスキームと、API連携によるデータ取得を用いることで、従来の信用調査を飛び越えた与信が可能になっている。

しかし、この「流動化」は何を意味するのか。本来、債権とは回収可能性に依存する不確実な資産であり、そのリスクは担保や保証により管理されてきた。ところがオンライン型ファクタリングでは、スピードと利便性を武器に「相手先に通知しない」形で進められるため、裏付けとなる債権の実在性や信用性を第三者が十分に検証できないケースが少なくない。

にもかかわらず、銀行から数十億円単位の融資が得られるのは、成長性という“期待値”に大きく依存している。これは、かつての「サブプライムローン」や「CLO(ローン担保証券)」のように、信用が十分に評価されていない資産を束ねて市場性のある商品に仕立て直す、いわば“過剰流動化”と類似した構造ではないか。

■「急成長」はビジネスモデルの歪さを覆い隠す

プレスリリースでは「取扱高5年で500倍」「累計申込件数40万件突破」といった成長性が強調されている。しかし、この急拡大は裏を返せば、資金繰りに逼迫する個人事業主や零細企業が、それだけ多くこのサービスに頼らざるを得なかった現実を示している。

実際、2社間ファクタリングでは、利用者の取引先に通知されない代わりに、利用者自身がリスクを背負う。高金利に近い手数料が課され、継続的に利用することで搾取的なスパイラルに陥るケースも少なくない。しかも、回収不能時の対応が厳格に規定されていないため、ファクタリング会社と利用者の間に“準債務”的な関係が生まれ、結果的に「借金に近い負担」を抱える利用者も存在する。

急成長しているのは、決して社会課題を解決するビジネスではない。「困っている人から先に金を取る」構造が、テクノロジーの美名で包まれているに過ぎない。

■金融機関の“責任なき資金供給”は正当か?

この企業の資金調達に関わったのは、国内のメガバンクをはじめ、地方銀行、証券会社、さらには新興キャピタル系ファンドまで多岐にわたる。みずほ銀行は「将来的な債権の証券化」まで見据えているというが、果たしてこのような金融商品の“裏付け”に、現実的な回収可能性とリスク分散が伴っているのだろうか。

こうした事業に資金供給する金融機関は、往々にして「信託スキームを通じた匿名化」「第三者機関の形式的なリスク評価」に依拠し、貸し倒れリスクを簿外に追いやっている。かつて金融危機を引き起こした「証券化の罠」と本質的に同じ構図が、また新しいかたちで繰り返されようとしているように見える。

■フリーランスの“金融包摂”と“金融収奪”の境界線

もちろん、金融サービスの民主化や個人事業主の資金ニーズへの対応は、必要な視点だ。しかし、現実にはオンラインファクタリングという仕組みが、困窮者の足元を見て、高利の手数料で利益を上げる構造になっている場合も多い。

今回のような巨額調達が、単に「誰にも知られず現金を手にする仕組み」をさらに拡大させ、結果として利用者の経済的自立を奪う道具にならないと、誰が保証できるのか。真に求められるのは、「挑戦できるお金の仕組み」ではなく、「安心して返せるお金の仕組み」であるはずだ。

フリーランス支援という名目のもとに、社会的弱者に新たなリスクを押しつけ、自己責任という言葉で収奪する。そうしたビジネスに、果たして未来はあるのだろうか。