「大手だから安心、と思ったのが間違いだった」
私は東京で小さな映像制作会社を経営しています。
テレビ局の下請けのような仕事が多く、入金は60日後、長いと90日後。
撮影スタッフやナレーターへの支払いは即日。
資金繰りにいつも神経をすり減らしていました。
そんな時、SNS広告で目に入ったのが「上場企業グループ運営の請求書買取サービス」。
見た瞬間、心が少し軽くなった気がしました。
上場企業という言葉の響きに、どこか“ちゃんとしている”という安心感がありました。
「金融ではなく、請求書の売却です」と書いてあったのも決め手でした。
サイトは綺麗で、イラストも柔らかく、まるで銀行よりも信頼できそうに見えました。
問い合わせフォームに請求書のPDFと身分証を添付して送信。
数時間後には「お見積りが出ました」と電話がありました。
請求書額は80万円、入金予定は50万円。
手数料は約30%。
「初回ですので安全確認料が含まれています」と言われ、納得してしまいました。
入金は即日。
正直、スピードには驚きました。
「これが上場グループの安心感か」とさえ思ったのです。
しかし翌月、取引先に「御社の請求書、買取業者から照会が来ました」と言われ、顔から火が出るほど恥ずかしかった。
“ファクタリングは資金繰りの工夫”ではなく、“資金に困っている証”と見られたのです。
そこから悪夢が始まりました。
2回目の利用では「取引履歴を積み上げたので手数料は下がります」と言われたのに、
実際には26%程度。
80万円の請求書で手元に届くのはわずか58万円。
しかも「システム利用料」や「モニタリング費」と称する細かい手数料が加算され、
実質金利に換算すると年率100%を軽く超えていました。
それでも「上場グループだから大丈夫」と信じてしまった。
普通なら警戒するような条件でも、“大手だから”という一点で疑いが薄れる。
これが一番怖いところでした。
数ヶ月後、弁護士に相談して初めて知ったのは、
その会社自体は資金を動かしておらず、実際に請求書を買っているのは“別会社”だということ。
つまり、上場企業グループを名乗りながら、実際の契約相手は資本金100万円の子会社。
責任の所在をぼかしながら、ブランドだけが前に出ていたのです。
「大手=安全」というイメージに、私たちは弱い。
でもそれは、広告戦略として計算し尽くされている。
LP(ランディングページ)は銀行風の配色で、FAQもきっちり整っている。
しかし契約書をよく読むと、法的には貸金ではなく“売買契約”。
つまり金利規制の対象外。
この抜け道を、堂々と“安心の上場企業ブランド”が使っている。
私はいま、当時の契約書を読み返すたびに背筋が寒くなります。
どこにも嘘は書いていない。
でも全体としては、完全に誤解させるように作られている。
これが「法人化した闇」なんだと実感しました。
結局、私はその後の資金繰りが崩れ、取引先との関係も悪化。
信頼を取り戻すのに1年かかりました。
「上場企業だから」「法人だから」「きちんとしたサイトだから」――
そう信じた私の判断ミスかもしれません。
けれど、それを狙っている仕組みがあるのも確かです。
上場グループの名のもとで、見えない貸金業が堂々と展開されている。
それはもはや、個人の判断ミスではなく、社会の構造的な罠です

