二社間ファクタリング被害者の声 ― 佐野恵介さん(仮名・34歳)の証言「“上場企業グループ”の言葉を信じて」

ファクタリングのトラブル

■ きっかけは「安心の上場企業グループ」

僕は東京でフリーランスのデザイナーをしています。
仕事は順調で、取引先も増えていましたが、入金までの期間が長い。
納品から支払いまで45日〜60日というのは珍しくなく、資金繰りに常に不安がありました。

そんな時、SNSで流れてきた広告が目に留まりました。
「上場企業グループが運営する安心の請求書買取」
「即日入金・個人事業主もOK」

“上場企業”という言葉に、完全に安心してしまいました。
よく分からない業者に依頼するよりは、名の知れたグループの方が安全だと思ったのです。
しかも広告には「フリーランスの味方」「業界最安手数料」などのコピー。
“広告に偽りなし”と信じて、申し込みフォームに進みました。


■ 審査という名の「情報収集」

入力フォームは驚くほど細かく、
請求書の画像、取引先とのメール履歴、本人確認書類の表裏、通帳の写し。
さらに「過去6か月の売上推移」「主要取引先3社の連絡先」まで求められました。

「上場企業グループだし、個人情報管理は安心だろう」と、抵抗なく提出。
その時はまさか、この情報がどこへ流れるのかなど、考えもしませんでした。

審査に2日かかり、「お取引可能です!」というメールが届いたときはホッとしました。
請求金額は80万円。
しかし入金されたのは56万円。
つまり手数料は24万円、30%を超えていました。

「上場グループだから安全」「大手だから透明」
そう信じていた僕は、まさか自分が“ヤミ金並みの実効金利”に手を出しているとは思ってもいませんでした。


■ 繰り返すうちに、抜け出せなくなった

入金の早さに安心してしまい、翌月も同じように利用。
しかし、今度は「信用スコアが上がりました」と言われて、別の関連会社の契約に誘導されました。
サイトのデザインも似ていたし、担当者も同じような名乗り。
同じグループ内だと思って契約しましたが、
よく見ると運営会社名が微妙に違う。
実は別法人でした。

そこでも同じように請求書を買い取ってもらいましたが、
手数料は少し高くなり、次第に入金額が減っていきました。
半年の間に、3社と契約、計7回利用。
合計で230万円分の請求書を渡し、手元に残ったのは約160万円。
70万円近くが“手数料”として消えていました。


■ 問い合わせは「メールのみ」──上場グループの影に隠れる無責任構造

トラブルが起きたのは、4回目の利用時。
入金が1日遅れたため、確認の電話をかけようとしましたが、
公式サイトには電話番号が載っていませんでした。
サポートフォームに問い合わせると、「順番に対応しています」と自動返信。
実際に返信が来たのは3日後。

その文面には「弊社はグループ内の別会社であり、運営上の詳細は上場企業とは異なります」と書かれていました。
つまり、“上場企業グループ”とは名ばかりで、実際に運営しているのは登記上独立した別会社。
上場企業の名前は、単なるブランド利用に過ぎなかったのです。


■ 信じたのは「企業」ではなく、「言葉」だった

今思えば、僕が信じたのは企業の信頼ではなく、“上場企業”という言葉そのものでした。
広告には企業名ではなく、「グループ」「関連会社」「提携先」などの曖昧な表現ばかり。
その曖昧さが、僕の警戒心を巧みにすり抜けていったのです。

弁護士に相談しても、「ファクタリング契約は貸金ではない」という壁に阻まれました。
契約書は整っており、形式的には合法。
しかし実質的には、情報収集と高額手数料による搾取の構造。
僕が被害を訴えても、法の枠外で巧妙に設計されたビジネスモデルの前では、ただの“自己責任”とされるだけでした。


■ 終わりに

この事件を通して、僕は痛感しました。
上場企業の名前を出せば、人は安心する。
その心理を逆手に取った“合法の皮を被った闇”が、今も静かに拡大している。

請求書を現金化したいと願う人たちの背中を押す言葉が、
実は奈落への階段になっていることを、僕は身をもって知りました。