提携弁護士の罠 ― “合法”を装うファクタリングの実態

ファクタリングのトラブル

■ 「法律に詳しいなら安心」――そう思い込んでしまった

「まさか“弁護士監修”のサービスに騙されるとは思ってもみませんでした。」

東京都内で広告制作業を営む中西(仮名・37歳)は、
苦笑いしながら当時を振り返る。
資金繰りが詰まり、Webで「請求書 買取 即日 法人」と検索した時に出てきたのが、
法律監修をうたうファクタリングサイトだった。
青いバナーには「顧問弁護士監修」「法的リスクゼロ」「安心の契約」と書かれていた。
「法的に安全」と明記されていれば、誰だって信じる。

だが、そこからが地獄の始まりだった。


■ 「法的に問題なし」――その“判断”をしたのは誰か

担当者は非常に礼儀正しく、契約書にも“顧問弁護士監修”と書かれていた。
請求書30万円を提出すると、即日で21万円が振り込まれる。
手数料は約30%。
返済ではなく“売買”という形だから、
「貸金業ではない」「法律的に問題はない」と説明された。

しかし、実際は入金予定の取引先からの入金が遅れると、
翌日には催促の電話が鳴り、
「再度の取引で調整できます」と、次の契約を迫られる。
つまり、延滞をきっかけに“借り増し”をさせる構造。
まさに多重債務の罠だ。

中西は気づいた。
顧問弁護士の名前は契約書に載っているが、
その弁護士が直接契約内容を確認したわけではない。
形式上「監修」と記されているだけ。
つまり、“合法の仮面”を作るための広告用素材だったのだ。


■ 「監修」という名の免罪符

実際に相談を受けた消費者センター職員は語る。
「ファクタリング被害の多くで“弁護士監修”と書かれていますが、
 ほとんどの場合は実際の法的監修ではなく、
 契約書テンプレートの一部に過去の指導を受けたという程度なんです。」

つまり、“監修済み”の一言が、法的安全を保証するわけではない。
むしろ、監修の権威を借りて利用者を安心させる、
巧妙な心理操作の一環にすぎない。

中西は言う。
「法律の専門家が関わっているから大丈夫だと思った。
 でも、実際は誰も責任を取らない構造でした。
 弁護士は“監修”しただけ、運営会社は“販売しただけ”、
 そして自分だけが“返せなくなっただけ”。」


■ 弁護士という“権威”の使い方が変わった

近年、“監修弁護士”を広告に使う企業が急増している。
法的な監修というより、
“法の抜け道を通るための盾”として使われているのだ。
しかも、それを可能にしているのは
法規制が想定していなかった「請求書売買型スキーム」の存在。

形式上は“債権譲渡”でも、実質的には短期高利の貸金取引
だが弁護士の名前を掲げることで、
ユーザーは「グレーだけど安全」と思い込んでしまう。
実際に法廷で争われても、
“契約上は売買”という一文がすべてを覆してしまう。


■ 「法の名を借りたビジネスモデル」――利用者だけが泣く構図

契約書を読み返すと、中西は愕然とした。
「私は“債権を売った側”とされていました。
 つまり、何を言われても“支払い義務がある”立場にされていたんです。」

しかも、その契約書の末尾にはこう記されていた。
「本契約は弁護士監修のもと適法に作成されています。」
この一文によって、
運営会社は“法的に正しい契約”を主張し、
監修弁護士は“あくまで監修しただけ”として逃げる。

最終的に、中西は破産を選んだ。
「弁護士が関わってる=安全」ではない。
むしろ、そう思わせる仕組みそのものが、
構造的な搾取の一部になっている。


■ 編集後記(中間のまとめ)

「法的に問題ない」と言う者ほど、法の限界を熟知している。

ファクタリング業界における“弁護士監修”は、
法を守るための印ではなく、
法の外側を安全に歩くための免罪符に変質している。

被害者は、自ら法的安全を信じた瞬間に、
もっとも危険な領域へ踏み出してしまうのだ。