Ⅰ. 偽装金融とは何か
現代の金融社会では、「合法」とされる金融商品が、実は被害者を静かに追い込む仕組みになっている。これが、いわゆる偽装金融の実態である。契約書上はすべて整備され、法律上も問題がないように見える。しかし、実際には高利や手数料によって資金が吸い上げられ、心理的圧迫や経営上の制約を被害者に強いる、形式的には合法でも実質的には“ヤミ金”の構造が隠されているのである。
Ⅱ. 実例:小規模事業者が直面する危険金融
東京都内の小規模飲食店を営むA氏の事例を見てみよう。コロナ禍で売上が激減したA氏は、急場しのぎに売掛金ファクタリングを利用した。契約上は「債権買取」という形式を取り、貸金業法の規制外として行われる取引である。
表面上は単純な契約に見えるが、手数料や中間マージンが高額で、年利換算すると50%を超える過酷な利率が設定されていた。資金が入ってもすぐに返済に消えるため、A氏のキャッシュフローは悪化し、借入の連鎖に追い込まれたのである。このような構造こそ、危険金融の典型例である。
Ⅲ. 合法ヤミ金の心理的圧迫
形式上は合法でも、返済不能に陥った被害者に対しては、心理的圧迫が加わる。A氏の場合も、電話やメールでの催促、担当者による精神的圧力が日常的に行われた。行政や司法に相談しても、「契約上合法であるため民事上の対応しかできない」との回答に終始した。まさに、合法ヤミ金の特徴である。
別の事例として、地方の建設業者C氏はファクタリング利用後、債権回収会社から日常的に電話で催促され、精神的負担が増大。結果として事業運営にも支障が生じ、経営の自由を奪われる状況に置かれた。形式的に合法でも、実質的には被害者を追い込む構造がここにある。
Ⅳ. 脱法金融の巧妙な手口
B社のケースでは、契約を巧妙に分割・回転させることで、実質的な利息を隠す手法が用いられていた。表面上は一社との契約だが、複数の会社を経由することで、返済額は契約書以上に膨らみ、被害者は契約形式の合法性に縛られ抵抗できない状況に陥る。これが脱法金融の典型的手口である。
さらに、AIスコアや信用情報を活用して契約条件を差別化する仕組みも登場している。法律上は差別ではないが、実質的には資金アクセスの自由を制限し、形式的には合法でも実質的には搾取構造を社会全体に浸透させる危険がある。
Ⅴ. 被害者が声を上げられない理由
危険金融や脱法金融、合法ヤミ金の被害者が声を上げられない理由は複数ある。
- 契約の形式が合法であること
書面上はすべて整備され、利息や手数料も法律上問題ないため、行政や司法の即時介入は困難。 - 心理的圧迫
返済不能者には電話やメールで催促が入り、精神的に追い込まれる。小規模事業者は事業継続に必死で、法的手段を取る余力がない。 - 制度の隙間
法の抜け穴を突いた契約構造は、制度として取り締まることが困難。被害者は孤立しやすく、声を上げても救済が得られにくい。
Ⅵ. 再構築に向けた三本柱
では、こうした被害を防ぎ、信用社会を再構築するには何が必要か。三つの柱が考えられる。
- 制度の透明化と法整備
契約形式に関わらず、実質的な搾取構造を規制。AIスコア利用や信用情報活用も含めた法整備を進める。 - 情報公開と教育
危険金融、脱法金融、合法ヤミ金の手口を社会全体に周知し、金融リテラシー教育を徹底することで、被害者が自己防衛できる環境を作る。 - 広告・マーケティングの規制
第三者装い型サイトやステルスマーケティングを禁止し、金融商品やサービスの情報の正確性を担保。被害者が誤認して契約するリスクを減らす。
Ⅶ. 結語 ― 信用社会の再構築へ
偽装金融は単なる個別の問題ではない。危険金融、脱法金融、合法ヤミ金という三つの構造は、法の隙間を巧みに利用した社会的リスクである。
被害者救済、制度改善、教育・情報公開の三本柱を組み合わせることで、初めて形式上合法でも被害を生む金融構造を封じることができる。
この再構築こそ、真の信用社会を取り戻すための設計図である。

