【寄稿】倒産と再起 ― 佐藤健一氏の告白第4話:見えない壁 ― 信用再生の現実

ファクタリングの違法性と契約について

倒産から一年 ― “過去”が消えない社会

 倒産から一年が経ちました。表面的には平穏を取り戻したように見えます。日常も戻り、少しずつ仕事も増えました。
 けれど、どれだけ前向きに生き直そうとしても、倒産の「痕跡」は消えません。

 AIスコア、信用情報、取引履歴。
 すべてがデータとして記録され、私の「過去」はシステムの中で半永久的に生き続けています。どれだけ努力しても、再起を志しても、デジタル社会は一度失った信用を容易には許さないのです。

 ある日、新たな取引先との契約を進めていた時のこと。契約直前に突然「与信審査の結果、今回は見送らせていただきます」という通知が届きました。
 理由は明示されませんでしたが、心当たりはありました。AIスコアが示す「倒産履歴」。それが“見えない壁”として、私の前に立ちはだかっていたのです。


再挑戦の壁

 倒産経験者にとって、社会復帰は二重の困難を伴います。
 ひとつは経済的な再建。もうひとつは「信用の再生」という目に見えない戦いです。

 事業を再開しようと銀行に相談しても、「審査上、厳しいですね」の一言で断られる。
 新しいオフィスを借りようとしても、保証会社の審査で落とされる。
 データ上の“信用欠如”が、私の人間性を先に否定してくるのです。

 倒産そのものは法的にも社会的にも責められることではありません。
 けれど、AIスコア資本主義の中では、一度ついた傷が「人間の評価」として永久に残る。これこそが現代社会の残酷さです。


それでも諦めなかった日々

 それでも私は、諦めませんでした。
 自分を信じてくれた数少ない支援者たちと、小さな案件から一歩ずつ始めました。利益よりも「信用を取り戻す行動」を優先し、納期を守り、誠実に対応し、透明な経理を心がけました。

 ある時、かつての取引先がこう言ってくれました。
 「あなたの仕事ぶりを見ていると、倒産なんて関係ないと思える」
 その言葉が、何よりの報酬でした。

 信用は数値で表せません。AIスコアや評価指標ではなく、人間が人間を信じる瞬間にこそ、信用が生まれるのだと、ようやく理解しました。


社会の冷たさと希望のあいだで

 私は倒産者支援の会に参加するようになりました。
 そこには、私と同じように「合法ヤミ金」や「危険金融」に巻き込まれた人々が集まっていました。彼らの話はどれも生々しく、そして痛切でした。

 共通していたのは、制度があっても届かない現実です。
 「相談窓口はあるけれど、返済期限は待ってくれない」
 「支援金は出るけれど、申請の条件が厳しすぎて通らない」
 こうした“制度の形式化”こそが、再起を阻む最大の壁なのだと痛感しました。

 それでも、人と人のつながりの中には希望がありました。互いの失敗を責めず、励まし合う場が、倒産者にとっての最後の救いとなるのです。


精神的成長と再出発

 倒産で失ったのは、金でも事業でもありません。自分自身への信頼でした。
 しかし、それを取り戻すために、私は何度も立ち上がりました。恥を受け入れ、過去を隠さずに語り、同じ苦しみを抱える人々の相談に乗るようになりました。

 ある意味で、倒産は「自分を再構築するためのリセット」だったのかもしれません。
 失敗を通じて、人の痛みがわかるようになり、社会の構造的な冷たさを直視できるようになった。
 そして、心の奥底に「もう一度、信頼を築く力は自分の中にある」という確信が生まれたのです。

 倒産前の私は、信用を“結果”として求めていました。
 しかし今は、信用を“生き方”として築いていく。
 それが、私の再出発の原点です。


読者へのメッセージ

 この社会では、数字とデータがすべてを判断します。
 けれど、本当の信用とは、過去の記録やスコアで測れるものではありません。

 AIが「低信用」と判定しても、人間としての価値は失われません。
 失敗を恐れず、正直に生き、誰かの力になろうとする行動こそが、本当の意味での信用再生なのです。

 もし、今まさに壁にぶつかっている人がいるなら、伝えたい。
 見えない壁を壊すのは制度ではなく、人の意志と誠実さです。
 倒産は終わりではない。
 それは、再び「生き直す」ための始まりなのです。