■1. すべては「信用」から崩れはじめた
本シリーズで追ってきたのは、倒産者・弱者・資金難の中小企業者が直面する“見えない市場の暴力”である。AI審査という効率化の名の下で、信用評価は機械化され、過去の一点の失敗が“永久刻印”のように未来の意思決定を縛る時代になった。そして、そこにつけ込む形で、法の隙間を巧妙に回避した脱法金融や、表面上は合法を装いながら実質的には支配・収奪に及ぶ合法ヤミ金が肥大化している。
彼らは広告でも第三者を装い、成功体験や利用者の声を“ステルスマーケティング”として大量に投入する。倒産者や資金難の事業者が検索するキーワードを研究し、AI広告最適化で追い回し、心理的に追い詰めたところで高額の手数料・違約金・再契約を迫る。被害者が消費者相談窓口に駆け込んでも、契約形態が法規制外であるため、明確な救済ルートが機能しない。
■2. AI審査は「過去主義」であり、再起を認めない
本来、信用とは“行動の蓄積”で評価されるべきものだ。
しかしAI審査は、その特性上「過去の傷を重く、努力の回復を軽く扱う」。
- 一度の倒産でスコア急落
- 新規の黒字化や改善努力は即時反映されない
- 数値にならない意欲・計画性は無視される
- 一律化されたアルゴリズムで“挑戦者を排除”する構造
結果、倒産した者は金融市場から追い出され、合法ヤミ金のターゲットとなりやすい。「弱者をさらに弱者にする経済構造」が、現在のAIスコア資本主義の核心的な問題だ。
■3. 被害は“孤立と沈黙”を前提に成立する
シリーズでは架空事例として「高橋雅也(仮名)」を描いたが、実態としては全国で同様のパターンが多発している。
- 倒産後、AI審査が全滅
- 公的支援の対象外
- ネット広告で「あなたに合う資金調達」と誘導
- 初回はあえて“優しい対応”
- 契約後に手数料・追加条件・違約金が雪だるま式に膨張
- 経営の自由度を奪われ、精神的に追い詰められる
- 相談しても「契約上問題なし」と扱われる
これらは犯罪ギリギリの領域だが、“合法的に成立してしまう”という構造そのものが問題である。
■4. 再起した者たちが共通して掴んだ“打開点”
倒産から再起できた人たちに共通するのは、次の3点だった。
① AIの外側にある“人間の評価ルート”を使う
地元金融機関、商工会議所、担当者との対面評価。
AI否決でも、理由を説明し、計画を文書化すると小口融資に繋がるケースが多い。
② 「失敗の分析」「改善案」「再挑戦計画」を書き出す
倒産者だからこそ説得力があり、人間の評価者には強く響く。
③ 行動の履歴で“信用の第二創業”を積み上げる
月次報告・継続的な説明・返済の実績。
信用とは“再構築できる資産”であり、時間をかけて再び積み上げられる。
AIスコアは遅れてついてくる。
つまり、信用回復の主戦場は“人間の側”にある。
■5. 社会的課題としての整理 ― 何を変えるべきか
本シリーズで指摘した“信用社会の破綻ポイント”は以下の通りである。
- 倒産=永久的な信用剥奪という価値観
- AI審査の不透明さと再評価プロセスの不在
- 合法ヤミ金が規制外であるという構造的欠陥
- ステルスマーケティングの野放し
- 再起支援制度の乏しさ
- 専門家ネットワークの不足
これらの問題を是正するため、以下のような制度設計が必要だ。
■6. 提案されるべき制度 ― “再起できる社会”への転換
●①「リスタート信用スコア」の創設
再挑戦者の行動・改善努力・計画性を評価する新基準をつくる。
●② 合法ヤミ金に対する新規制の整備
違約金・手数料・契約構造に上限と審査義務を課す。
●③ AI審査の“第二評価”を義務化
欧州基準にならい、AI否決 → 人間審査の流れを制度化する。
●④ 倒産者専門の再起支援チームを全国へ
法律・経営・金融の専門家を一体化し、孤立を防ぐ。
■7. 最後に ― 信用とは「未来」そのものである
AIが審査を担う時代、信用が数字に変わるのは避けられない。
しかし“未来の行動”で評価される余地がなければ、
挑戦する人間は減り、社会全体の活力が衰える。
失敗しても、もう一度立ち上がれる社会。
過去ではなく、未来の意思で評価される社会。
この価値観を再構築しない限り、
AI金融と合法ヤミ金の狭間で潰れる中小企業は増え続けるだろう。
本総集編が、信用社会をもう一度“人間の手に戻す”ための
第一歩となれば幸いである。

