飲食店ほど、“資金繰りの波”が極端に表れる業種はない。
ランチは満席でもディナーは閑散。
天候ひとつで売上は半減し、仕入れは前払い、人件費は固定。
キャッシュフローの“呼吸”が少しでも乱れれば、一気に倒れてしまう。
この不安定な土壌こそ――
合法ヤミ金(=法の隙間を歩く危険金融)が、もっとも好んで狙う市場である。
以下は実際の取材構成に基づき、仮名を用いて再構成した“潜入ルポ”である。
■1|狙われる「明日の仕入れが払えない」個人店
東京・下町の小さな居酒屋を営む 山岸店長(仮名・47歳) は、
魚の仕入れが重なる繁忙期の手前で、突然の資金ショートに直面した。
銀行は「決算書を見てから」で動かない。
カードローンは上限いっぱい。
それでも、翌朝には仕入れ代金を払わなければ店が止まる。
そこで目に入ったのが――
「即日×審査30分」「売掛金がなくてもOK」
と謳う謎のファクタリング業者だった。
本来、ファクタリングは「売掛金」を譲渡して資金化する仕組みだが、
飲食店には売掛がほとんどない。
なのに「売掛なしでもOK」と書いてある時点で、
それは ファクタリングを装った“脱法金融” である。
■2|手数料38%。「手数料ではなく“買取率”です」と言い張る詭弁
山岸店長は店舗近くのカフェで営業マンと会った。
ノートPCすら持たず、iPadで身分証を撮影し、
「では査定しますね」と数分で“審査通過”。
提示された条件は――
- 必要額:40万円
- 振込額:24万8,000円
- 「利用料」:15万2,000円
- 返済期限:30日
- 返済総額:40万円
「え、これ実質金利…?」と尋ねた瞬間、営業マンは笑って答えた。
「いえいえ、金利じゃないですよ。『買取率』です」
ここが合法ヤミ金の常套句だ。
彼らは“金利”ではなく“買取率”と言い張ることで、
金融庁の管轄外に逃げる。
消費者金融法の上限金利20%も適用されない。
だが実質年利は数百%を軽く超える。
これは完全に“危険金融”である。
■3|返済が滞ると始まる「営業妨害ギリギリ」の取立て
山岸店長は結果的に、2回目の返済で行き詰まった。
その瞬間、業者の態度は豹変した。
- 毎朝10時に店へ電話
- スタッフに「返済の件で連絡しています」
- SNSの店舗アカウントにDM
- グルメレビューサイトに「無責任な店」と書き込みを示唆
形式上は“取引先との契約トラブル”なので、警察は動かない。
しかし実態は、ヤミ金以上に執拗な取立てだ。
山岸店長が震える声で言った。
「俺、店を守りたいだけなんですよ。でもこの人らは、店がつぶれても構わないんですよね。」
これが飲食店に対する合法ヤミ金の“本性”だ。
■4|飲食店がカモにされる3つの理由
なぜ飲食店ばかりが狙われるのか?
① 売上が不安定で、急な資金需要が多い
天候、人件費、イベント…変動要素が多い。
② 売掛金がないため、銀行の制度融資に乗りにくい
これが合法ヤミ金が付け入る最大のポイント。
③ 「店を止めたくない」という心理を利用される
仕入れが止まれば即死なので、弱みが大きい業界。
大手チェーンのように本部が資金で支える仕組みがないため、
個人店ほど危険金融に巻き込まれやすい。
■5|飲食店向け“合法ヤミ金”の典型的な売り文句
実際に複数業者を偽名で調査した結果、
飲食店向けには次の文句が驚くほど共通していた。
- 「飲食店さんは審査ゆるいですよ!」
- 「売上の写真でOK、決算書いりません」
- 「今月だけ乗り切れば大丈夫ですよね?」
- 「仕入れは止められませんよね?」
- 「明日潰れたら困るでしょ?」
これらはすべて、飲食業の“心理的急所”を突いたセールスだ。
■6|結論 ― 飲食店が守るべき“防衛線”はただ一つ
飲食店が生き残るために絶対に必要なのは、
**「危険金融に手を出さない仕組みづくり」**である。
- 当日仕入れが必要な構造の見直し
- バックヤードの固定費圧縮
- 売上の季節変動を見据えた“資金の貯金”
- 商工会議所・信用保証協会・自治体融資の早期活用
- 資金ショート時の「相談先リスト」を作っておく
- SNSと口コミ強化で売上を安定化
合法ヤミ金は、
「今すぐ必要なんですよね?」という一言を餌にしてくる。
その瞬間の判断が命取りになる。
飲食店は、地域にとっての文化でもあり、人の集まる場所でもある。
そんな場所が、脱法金融のせいで消えてしまうのはあまりに理不尽だ。
このルポは、その“理不尽”を一つでも減らすために書いている。

