1. 表向きの顔:即日入金とスマホ完結
都内の雑居ビルに入ると、受付の壁には大きく「スマホで即日入金」「最短30分で資金化」と派手なポスター。
中小企業の経営者やフリーランスが、資金繰りの切迫感に駆られ、この言葉に吸い寄せられる。
広告では、手数料も「1%~」と軽やかにうたわれ、文字通り“救済”を約束しているように見える。しかし、その明るい表情の裏で、現場はまったく別の顔をしていた。
2. 内部会議で飛び交う“返済指示”
——建前「債権買取」、実態「返済日管理」の矛盾
会議室の空気は殺気立っている。
表向きは「債権買取」の建前だが、実際には全員が返済日管理の担当者になりきっていた。
課長が紙を叩きつけ、声を荒げる。
「坂本浩二は22日返済日だ。前電(催促の事前電話)入れとけ!」
顧客の名は呼び捨て。
“返済日”という言葉が飛び交い、建前の“買取契約”と矛盾する日常業務を、社内では誰も気にしない。
元従業員のA氏は語る。
「外では“支払日”と言いますが、社内では全員“返済日”。
課長が“支払日”と呼んだら逆に違和感が出るくらいです」
3. 返済スパイラルの現実
返済は、通常の借金のように元本を返すわけではない。
顧客は次月の新規請求書を提出し、ファクタリング会社がそれを買い取ることで、前回分の“返済”が成立する。
顧客側もこの矛盾を理解している。
「じゃあ、次の請求書でジャンプできますか?」
このやり取りは日常茶飯事だ。
業者は形式上、新規取引として処理する。
しかし実態は、返済と新規取引が交錯する自転車操業スパイラルそのもの。
A氏は言う。
「新規請求書を出せば前回分は返済扱いになります。
でも次の月にはまた請求書を出さないと、顧客も詰むし、手数料で死ぬ。
誰も完全な解決策は持っていないんです」
4. 怒鳴り声と心理的圧力
電話の向こうでは怒声が飛ぶ。
「返せないのかよ!」
「大口案件は取り立てるまで帰ってくるな!」
元従業員は息を潜めながら見ていた。
形式上は“債権買取”だが、実態は貸金業そのものの催促だ。
顧客心理も圧迫され、恐怖と焦りの中で次の請求書を提出するしかない。
5. 裁判対策としての“相殺禁止”
さらに矛盾は裁判対策で鮮明になる。
- 表向き:ファクタリング契約=売掛債権の買取
- 内部実務:返済管理、催促、前電の指示
裁判で負けないため、相殺は禁止。
新規請求書で前回分を返済しても書面上は別取引扱いにする必要がある。
つまり、内部では「返済日管理」と「建前契約」の二重構造が日常的に運用されている。
A氏は苦笑しながら語った。
「表では債権買取、内部では貸金業。
返せ返せと電話しておきながら、裁判になったら『これは売買です』と建前に戻る。
誰も完全に整合性を保てない矛盾構造です」
6. 実質金利の高さと“目クラ貸し”
手数料の累積により、年換算で実質金利は数百%に達することもある。
多少の焦げ付きは許容範囲。
だから顧客の返済能力や財務状況より、詐欺や架空請求の有無が最重要視される。
内部では、
「倒れそうな会社でも、高手数料なら回せ」
「意図的な詐欺だけは防げ」
という基準で取引が進む。
さらに、架空請求書の確認では、保険会社や消費者金融を装った電話を顧客に掛けるなど、実態確認の工夫も行われる。
7. 矛盾の本質と社会的意義
- 顧客には債権買取と装いながら、内部では“返済日管理”と催促が日常
- 顧客も返済先送りのスパイラルに加担
- 裁判対策で相殺禁止、形式上は合法だが実態は貸金業
この“建前と実態の二重構造”が、日本の2社間ファクタリングの核心である。
広告や契約書だけを見れば安全に見えるが、内部ルールと実務は経営者を圧迫する構造になっている。
社会的意義として、この矛盾構造を世に知らせることは非常に重要だ。

