ファクタリング関連の
裁判と刑事事件

近年、ファクタリング取引に関する民事・刑事事件が増加しています。
もともとファクタリングは大手商社や金融機関が用いていた信用取引の一種ですが、近年は中小事業者向けに2社間ファクタリングが急速に広がったことで、法的トラブルが目立つようになりました。
民事訴訟の争点
民事訴訟では、ファクタリング業者側は「債権不存在や契約違反の重複譲渡」を主張し争い、被害者側は 実質的には貸金業であり、名目的にファクタリングを装ったものではないか という点を争点に戦っています。
形式上は債権譲渡契約でも、 実態が高金利貸付であれば、「不当原因給付」として返済義務の不存在を主張できる可能性があります。
これは、 貸金業登録をせずに貸付を行った場合、貸金業法違反となり、違法な契約に基づく支払い義務は否定される という考え方です。
刑事事件の事例
刑事事件では、実質的なヤミ金として摘発された事例や、債権の捏造・架空請求による詐欺罪が適用された事例もあります。
2021年 朝日新聞記事(冒頭引用)
中小企業に法外な金利で金を貸し付けたなどとして、警視庁は、一般社団法人「ハートフルライフ協会」(東京都中央区)の幹部ら男6人を 貸金業法違反(無登録営業)と出資法違反(超高金利)の疑いで逮捕し、5日発表した。
企業が未払い料金を取引先から受け取る権利(売り掛け債権)を安く買い取る「ファクタリング」業者を装っていたが、同庁は営業実態から、 事実上の「ヤミ金」業者とみて調べている。
逮捕されたのは、代表理事の木下豊容疑者(50)=中央区八丁堀3丁目=と元職員の20~40代の5人。生活経済課によると、6人は2016年11月ごろ~20年4月ごろ、 貸金業の登録がないのに香川県や宮城県の中小企業の経営者ら5人に計約1億3千万円を貸し付け、 法定金利の8倍から34倍にあたる利息計約3千万円を受け取った疑いがある。いずれも否認しているという。
ファクタリングは、企業が売り掛け債権を割安で売り、本来よりも早く現金を手にする仕組み。
協会は企業が取引先から約束の代金を受け取れなかった場合は返済を求めないなどと説明し、勧誘していた。
ただ、 期日までに支払いがなかった企業には督促を繰り返し、債権額よりも高額の返済を求めていた という。
2019年 朝日新聞記事(冒頭引用)
売り掛け債権の買い取りを装い、高利で金を貸すヤミ金を営んでいたとして、千葉県警と岩手県警の合同捜査本部が25日、 東京都内のコンサルティング会社社長の男ら11人を 貸金業法違反(無登録営業)と出資法違反(超高金利)の疑いで逮捕したことが、捜査関係者への取材でわかった。
捜査関係者によると、東京都豊島区のコンサルティング会社「高橋企画」の社長の男らは2018年10月~今年3月ごろ、 貸金業の登録をせずに、東京都や静岡県の中小企業の経営者5人に、11回にわたって計約530万円を貸し付けた疑いがある。
さらに18年10月~今年4月ごろ、5人から 法定金利の約13~47倍にあたる利息計約184万円を受け取った疑いがある。
売り掛け債権の買い取りは「ファクタリング」と呼ばれ、債権を早く現金化したい企業が利用している。
男らはこの仕組みを装いながら、 実際は債権を買い取らずに担保にして金を融資。
手数料名目で高い利息を受け取っていたという。
県警は金融機関の口座記録などから、男らが17~19年、 30都道府県の中小企業などに少なくとも約30億円を貸し付けたとみている。
合同捜査本部は4月以降、社長宅や会社、関係先など十数カ所を捜索。 通帳や顧客名簿などを分析した結果、 無登録でヤミ金を営んでいた疑いが強まったという。
金融庁によると、 ファクタリングを装ったヤミ金に関する被害相談は近年増加傾向にある。 高額な手数料をとる手口が目立つといい、同庁は『すぐに現金化できる』などの文言にのらず、 疑わしい場合は相談を」と呼びかける。
2社間ファクタリングが貸金だとされるかどうかは、事案によって異なります。主な根拠としては、「償還請求権の有無」と「掛け目の存在」が挙げられます。
償還請求権について
償還請求権とは、他人の債務を弁済した者が、その債務者に対して 弁済額の返還を請求できる権利のことです。 ファクタリングにおいて「償還請求権がない」とは、第三債務者が支払いを怠った場合でも、 債権譲渡人に支払いを請求できる契約形態を指します。 この場合、債権を買い取っていながらリスクを負っていないため、 実態は債券担保融資に近いと判断される可能性があります。
掛け目(かけめ)について
「掛け目」とは、債権額と実際の買取金額、手数料などを合算した額が 一致しないことを指します。
例えば、100万円の売掛債権に対して50万円の買取金額、譲渡手数料20万円、回収手数料0円といった条件では、
残りの30万円の整合性が取れません。
多くのファクタリング業者は、譲渡手数料と回収金額を合わせて70万円程度を振り込む形となっており、 債権額との整合性が失われています。
このような契約は、形式上は債権譲渡であっても、 実態は債券担保融資と見なされる可能性があります。
注目すべき点は、この「掛け目」のある契約形態が、現在も多くのファクタリング業者で採用されているということです。
