司法はなぜ被害者を救わないのか

不存在債権は「詐欺か?」「不当原因給付か?」

――裁判所の無力と制度の逆転

ファクタリング被害の最前線で、被害者は資金繰りに追い詰められ、業者から脅迫まがいの督促を受ける。
それでも裁判所は救済の手を差し伸べない。なぜか。


1) 形式合法に縛られる裁判所

裁判所は契約書を第一に見る。

  • 債権譲渡契約にノンリコース(償還請求権なし)と書かれていれば、形式上は合法
  • 「貸付けではない」と書かれていれば、表面的には貸金業法違反には当たらない

この「形式重視」が被害者を直撃する。
被害者は、業者が法律の隙間を突いて作った偽装契約に縛られ、返済義務や高額手数料の支払いを強いられる。
裁判所は「契約通り」としか判断できず、実態の暴力を正義と呼べない構造になっている。


2) 判例の蓄積はあるが救済は限定的

確かに給与ファクタリングや一部の2社間ファクタリングでは、裁判所が「実質貸付」と判断した判例はある。

  • 最高裁 2023年2月20日:給与ファクタリングを貸付と認定
  • 東京地裁 令和4年3月4日:ノンリコース契約でも実態で貸付と認定

しかし、これらは例外的判断にすぎない。
多くの中小企業被害は個別事情により救済が遅れ、実態認定が難しいという理由で敗訴するケースが圧倒的に多い
形式が合法なら、実態は無視され、被害者は二重の苦しみに追い込まれる。


3) 証拠集めの困難さ

裁判で被害を立証するには、膨大な証拠が必要だ:

  • 録音やメールによる返済強要の記録
  • 手数料計算書や契約前後のやり取り
  • 実際の売掛金の回収状況

これらは被害者にとって現実的に集めにくい情報だ。
しかも、業者は巧妙に記録を残さず、法的な抜け穴を意図的に作る。
裁判所は「証拠不十分」と判断し、被害者は泣き寝入りする。


4) 弁護士との共闘が唯一の盾

形式重視の裁判所に対抗するためには、弁護士との緻密な共闘が不可欠だ。

  • 実態を整理して立証可能な証拠を構築
  • 契約の矛盾点や高額手数料を指摘
  • 訴訟戦略を練り、形式的合法性に縛られない主張を積み上げる

被害者一人で挑む裁判は、ほぼ敗北が確定する。
弁護士は被害者の盾であり、法廷での戦友である。


5) 司法の制度的欠陥

  • 「形式合法優先」の構造は、被害者より業者を守る形になっている
  • 訴訟費用・時間・心理的負担は被害者に集中
  • 仮差止めや即時救済措置は限定的で、回収不能になる事例が多数

制度が逆転している。
加害者は法の隙間に守られ、被害者は制度に追い詰められる。


6) 結語:司法の冷徹と被害者の孤立

政治は産み、行政は放置し、メディアは沈黙した。
残る最後の砦が司法であるはずだが、形式主義と証拠主義の壁が被害者を押し潰す

裁判所は、救済よりも契約形式を重視する。
ここに、被害者の声が届かない最大の理由がある。
そしてこの現実を変えるのは、制度改革と弁護士の戦略、そして社会全体の意識だけだ。