最高裁の給与ファクタリング判決──労働基準法第24条の理念を空洞化し、2社間ファクタリングに“免罪符”を与えた司法の失敗

不存在債権は「詐欺か?」「不当原因給付か?」

最高裁の給与ファクタリング判決
──労働基準法第24条の理念を空洞化し、2社間ファクタリングに“免罪符”を与えた司法の失敗

司法が、最も守らなければならない人間は誰か。
それは、圧倒的な交渉力の格差の中で搾取される弱者である。
少なくとも、建前ではそうなっているはずだ。

しかし——
給与ファクタリングをめぐる最高裁判断は、まさに“建前すら捨てた瞬間”だった。


■1. 司法はなぜ「実質」を見なかったのか

給与ファクタリングとは名ばかりで、実態は何か。

・借入
・超高利
・返済期限
・威圧督促
・元利一体の回収
・延滞金の付加

すべて「貸金業」の実態そのものだ。
そして本来、労働基準法第24条は、「労働者の賃金を絶対的に保護する」ために存在している。

◆にもかかわらず、裁判所はこうした“実質”をまるで見ようとしなかった。

司法が依拠したのは、業者が用意した「名目」だけ。

・“債権譲渡”である
・“貸付ではない”
・“手数料”であって、“利息ではない”

この美しく整えられた書面の上に、判決は構築された。

現場の実態(返済日・督促・手数料率・ロール要求)は、完全に外野に追いやられた。


■2. 労基法24条の理念を理解すれば、本来ありえない判断

労働基準法24条は賃金保護の“最後の砦”だ。

・賃金は全額払え
・直接払え
・本人に払え
・控除は例外中の例外
・第三者の介入は原則禁止

これが戦後日本が積み上げてきた「労働者保護の根幹」だ。

ところが今回の司法判断は、この砦に“意図的に穴を開けた”。

「債権譲渡の形式が整っていれば、実態が高利貸しでも構わない」

——これが判決の帰結だ。

これは労働者を守るという本来の目的を、形式論の前に完全に放棄したことを意味する。


■3. この判決が生み出す“最悪の帰結”

最高裁の判断は、業者にこう宣言したも同然だ。

「書面をそれらしく整えれば、給与を担保にした高利貸しが合法になる」

その影響は甚大だ。

◆1)給与を食い物にする新型ヤミ金の温床
業者は、

・“給与ファクタリング”
・“給与即日現金化”
・“給料前借りサービス”

など、名目を変えながらいくらでも増殖する。

◆2)行政の規制根拠が奪われる
労基法24条違反という“錦の御旗”を封じられたことで、行政は介入しづらくなる。

◆3)被害者が泣き寝入りしやすくなる
裁判で勝てない——そう認識された瞬間、違法業者は勢いづく。


■4. “名目”に逃げた司法は、ヤミ金の味方をした

2社間ファクタリングの最大の武器は「名目」だ。

・貸付ではない
・債権譲渡だ
・手数料だ
・返済ではない
・督促ではない
・債権管理だ

この“紙の上の世界”を、そのまま受け入れるかぎり、被害は永遠に続く。

司法の本来の役割は、名目を超えて“実質”を見抜くことだったはずだ。

ところが今回は、その役割を完全に放棄した。

結果として、「形式を整えたヤミ金は合法」という危険なメッセージが世の中に配布された。


■5. では、どう戦うのか?

最高裁が形式論に逃げたなら、私たちは“実質”を叩きつけるしかない。

つまり、以下の証拠で包囲する。

・返済日の設定
・金額固定の支払い義務
・延滞管理
・ロール要求(ジャンプ)
・督促(電話・SMS・LINE)
・威圧行為の録音
・元利一体の清算記録
・手数料率が利息と同一である証拠

これらはすべて、**「債権譲渡では説明できない現象」**であり、司法の形式論を突破する唯一のルートだ。


■6. 結論──“歴史に残る悪判決”は、実務でひっくり返すしかない

最高裁は、労働者保護の理念を捨て、形式論という安全地帯に逃げた。
その結果、2社間ファクタリングの“合法ヤミ金”構造を補強してしまった。

しかし、実務の世界は違う。

違法性の証拠を積み上げれば、判例は“運用で否定できる”。
これは闇金判決の歴史が証明している。

だからこそ、被害者も支援者も法律家も、名目に騙されず“実態の証拠”を徹底的に積み上げる必要がある。

最高裁が逃げたなら、我々が逃げるわけにはいかない。
給与を食い物にする業者を放置することは、この国の法の根幹を腐らせることだからだ。