——“社債スキーム型ファクタリング”が暴く制度の空洞化**
中小企業支援を掲げる政府は、景気後退期になるほど「資金繰り難への迅速支援」を強調する。しかし、現実にはその政策目標とは真逆の現象が進行している。行政が作った“穴”を金融周辺業者が巧妙に突き、影の金融市場――シャドーバンキング――が中小企業の喉元を締める構図が常態化しているからだ。
その典型例が、近年横行する**「社債買取スキーム型の2社間ファクタリング」**である。本来の社債制度とは無縁の零細企業が、“社債”を発行したことにして債権譲渡と資金化を行う。実態は短期の高利貸付であるにもかかわらず、“金融商品取引法の形式”をかすめ取ることで監督官庁の視線を回避する。
要するに、行政が整備すべき金融インフラを放置した結果、民間の影の金融が政策の隙間を埋めてしまったのである。
■矛盾①:政策は「低利での資金供給」を掲げるのに、実際の現場には“高利の抜け穴”しかない
国は中小企業向けの資金繰り支援策を山ほど提示している。信用保証協会付き融資、売掛債権担保融資保証、伴走支援型融資、返済猶予制度……紙の上では選択肢が並んでいる。しかし、これらは事務手続きが煩雑で、審査期間も長く、緊急の資金繰りには間に合わない。
そこへ滑り込むのが“即日資金化”を謳う社債スキーム業者だ。彼らのロジックはこうだ。
- 銀行は時間がかかる
- 我々は「社債の買取」だから融資ではない
- よって金融規制の枠外
- 決算書の弱い企業にも即金で対応可能
企業は尻に火がついている。選択肢が他にない。
結果として、国が整備すべき安全な資金供給ルートが機能していないため、中小企業は影の金融へ追い込まれる。
行政は「違法高利の取締りは警察・検察の領域」と言い訳し、金融庁は「融資なら監督するが、社債と言っている以上は形式を尊重せざるを得ない」と及び腰。
制度の“谷間”がそのまま市場の構造化された搾取に転化している。
■矛盾②:国は「資金繰り円滑化」を語りながら、“実質貸付性”の判断を避け続けている
最大の問題はここにある。
行政は“形式”を理由に、実質判断から逃げ続けている。
社債スキームは、
- 利率
- 償還期間
- 初回の発行事務手数料
- デフォルト時の買戻し・追加手数料
- 売掛債権の事実上の担保化
いずれを取っても「貸付」と同じ構造を持つ。しかし行政は“社債という名目”を前に、踏み込まない。
その結果、見た目だけ融資を避けた“脱法金融”が政策の裏側で増殖し続けている。
本来ならば、中小企業の金融環境が劣悪になれば、国は規制と制度供給の両面で改善する必要がある。だが、行政府は「これは貸付なのか?」という根本判断から逃げることで、監督責任を回避している。
国が目をつぶる限り、シャドーバンキングはますます肥大化する。
■矛盾③:国の“金融包摂”の理念に反し、現場では「搾取の再分配」が起きている
政府は「金融包摂」を掲げ、資金調達の機会を広く公平に提供するとしているが、現場で起きているのはその逆だ。
融資審査のハードルが高い企業ほど、
→ 正規金融にはアクセスできず
→ 社債スキーム型ファクタリングへ流れ
→ 高率手数料によってキャッシュが吸い上げられる
つまり、最も弱い企業ほど、最も高いコストを払う構造が制度的に固定化されてしまっている。
これは単なる悪質業者の問題ではない。
制度そのものが、脆弱企業から富を吸い上げる流路をつくってしまっているのである。
■矛盾④:「政策金融」と「影の金融」が二重構造を形成し、行政の責任は曖昧化する
現在の中小企業金融は、奇妙な二重構造を形成している。
- 正規ルート:政策金融・保証協会・銀行
- 影のルート:社債スキーム・2社間ファクタリング・未登録貸付
行政は“正規ルートの整備”ばかりを語り、影のルートの実態とは向き合わない。
しかし、影のルートが現場で果たしている役割は無視できない。むしろ、正規ルートが機能不全にあるほど影の金融は強くなる。
行政が見て見ぬふりを続ける限り、この二重構造はより深まり、
**「政策金融が理論、シャドーバンキングが実務」**という倒錯した逆転現象が常態化する。
■中小企業支援政策の抜本見直しを避け続ける限り、“搾取の金融”は終わらない
本稿の結論は明快だ。
中小企業支援政策とシャドーバンキングの矛盾は、行政が“実質判断”を避ける姿勢が生み出した構造問題である。
そしてその被害は、最終的には中小企業の経営体力を奪い、ひいては地域経済を疲弊させる。
政府が本当に中小企業の資金繰りを支援したいのであれば、
- “社債スキーム”を含む実質貸付行為の明確な規制
- 迅速審査型の公的資金供給制度の整備
- 金融庁・警察庁の監督責任の明確化
- ステルスマーケティング型の誤認誘引広告の排除
これらを同時に進めなければならない。
政策が改善されなければ、シャドーバンキングは今後も制度の隙間を突き続け、
「中小企業支援」という建前を嘲笑うように、実務現場を支配し続けるだろう。
