疑似貸金スキームが社会問題化しているにもかかわらず、行政は「貸付に該当するかは当事者の契約による」などと述べ、
積極的な監督をほとんど行っていない。
この“形式論への逃避”こそが、構造的な行政不作為の核心である。
以下、その責任構造を正面から分析する。
① 行政は“実質判断をすれば”違法が露呈すると知っている
金融庁や地方財務局が「実質貸付性」の判断を拒む最大の理由は、判断すれば大量のスキームが「違法貸金業」と確定してしまうためである。
実質貸付である例は枚挙にいとまがない:
- 元本と利息に当たる利益の返済が固定
- SPCがリスクを負わず、発行企業が全保証
- 社債なのに1〜3ヶ月で短期償還
- 手数料が元本比例の利息そのもの
- デフォルト時の追加償還=融資の担保的構造
行政が本気で判断すれば、大手金融グループの社債スキームも、ノンバンク系ファクタリングも、
一挙に「無登録貸金業」認定になる。
だから金融庁は、“形式的に”以下の言い回しで逃げる:
- 「契約実態の詳細は把握していない」
- 「個別事案には回答しない」
- 「業として貸付をしているかは当事者の関係による」
これは判断回避のための官僚的レトリックでしかない。
② 金融庁・財務局は“監督権限がない”と言いながら、実際は権限がある
多くの業者は、行政の言葉を引用する:
「貸付ではなく債権譲渡なので、金融庁の対象外です」
しかしこれはミスリーディングだ。
■行政は“実質が貸付なら監督対象になる”と明確に規定している
- 貸金業法2条1項:業として金銭の貸付けを行う者
- 名目が売買・社債・投資であろうと、
実質が貸付であれば貸金業登録が必要
つまり行政は監督権限を有している。
なのに、「判断しない」=実質的に“監督しない”として、権限を使っていない。
これは、行政の“立法精神”を歪める行為であり、重大な不作為である。
③ 監督しない理由:大手金融グループへの“政治的配慮”
社債スキームの資金源に大手金融グループが位置し、ノンバンク系列・SPC・ファンドが絡む構造では、行政の動きが不自然なほど鈍い。
なぜか?
■(1)大手金融グループの利益構造を壊したくない
銀行は直接高利貸付はできない。
だが、
- ノンバンク子会社
- SPC
- 投資ファンド
- 事業会社の社債購買
を使えば、実質的に高利貸しの利益を吸い上げられる。
行政が実質貸付性を認定してしまえば、これらの取引は全て「違法」になる。
大手金融に甚大な影響が出る。
■(2)政治家の利害が絡む
金融行政は、政治家からの“圧”を受けやすい。
「中小企業向けの資金供給が縮小する」
「地域金融を不安定化させる」
などの名目で、規制強化が止められてきた。
だが実態は、高利スキームによる搾取を容認しているだけである。
④ **行政が“消費者金融”だけを厳しく監督し、
“法人向け高利貸付”を野放しにする二重基準**
行政の最大の矛盾は、消費者金融には過剰なほど厳しい監督を行う一方、法人向けスキームにはほぼフリーパスを与えている点である。
消費者金融:
- 上限金利20%
- 返済能力調査必須
- 苦情処理・監査・システムチェック
- 報告命令
法人向け疑似貸金:
- 金利換算で100〜300%
- 返済能力調査なし
- 買戻し強制
- 実質保証
- 違法スキームを事実上黙認
なぜ二重基準なのか?
答えは簡単で、
法人向け高利スキームは“金融機関の利権”とつながっているからである。
⑤ 「個別事案には答えられない」という行政の常套句は“逃げ”である
財務局・金融庁の回答実務では常に同じ文言が返ってくる:
「個別事案の契約内容には回答できない」
「契約の実質は民民間の関係」
これは、判断しないための形式的逃避であり、監督権限の放棄である。
行政には本来以下の義務がある:
- 違法の可能性が高い取引を調査
- 無登録営業の疑いがあれば即調査
- 契約書・実態確認
- 報告命令の発動
- 公表措置
しかし現実には、“形式上の契約”を口実に、明白な違法スキームを看過している。
⑥ **行政不作為が生む結果:
・中小企業の搾取
・高利スキームの蔓延
・反市場的な利権化**
行政が判断を避け続けた結果、
市場には以下の歪みが広がった:
- 手数料換算で年200〜300%相当の“超高利”が合法化されたように扱われる
- SPC経由の偽装投資が横行
- ノンバンク子会社が無登録貸金業並みの利回りを得る
- 大手金融は、直接手を汚さず利益だけ吸う構図
- 中小企業の資金繰りがかえって悪化する
つまり行政の“見て見ぬふり”は、非効率なシャドーバンキング市場を人工的に育て、中小企業にしわ寄せを押し付ける構造を助長している。
■結論:
行政は“判断しないことで”違法スキームを温存しており、監督責任を重大に逸脱している
金融行政の本質的役割は、「市場の透明性と公正性の確保」である。
しかし現状、行政は“形式的に判断しない”ことで、実質的な違法スキームを黙認し、大手金融グループの利害に配慮し、中小企業の不利益を放置している。
これは、単なる事務ミスではなく、構造的な行政不作為であり、明確な責任問題である。

