以下は、不作為違法を問う際に必ず検討すべき 6つの主要論点 と その下位論点 です。
❶ 法律上の義務(作為義務)の存在
行政不作為が違法とされる前提は、「行政庁に法令上、一定の作為が義務づけられていること」。
● 下位論点
- 法律・政令・省令・通知・ガイドラインのどのレベルで義務が根拠づけられるか
- 「裁量の余地のある義務」か「裁量の余地のない義務」か
- 審査基準・処分基準・行政上の義務づけが存在するか
- 単なる権限ではなく、義務として読み取れるか
● ポイント
裁量が広い領域ほど、不作為違法の立証ハードルは上がる。
❷ 行政庁による“具体的な申請・申告”の有無
不作為が違法になるのは、多くの場合「申請・請求があったのに何もしていない」という局面。
● 下位論点
- 申請が適式か(形式審査要件の充足)
- 内容が処分を誘発するものであるか
- 行政庁は受理したか/到達が立証可能か
- 申請の趣旨(許可・届出受理・監督発動請求・情報開示など)
● ポイント
申請の“到達証明”が最も重要。
❸ 行政庁の不作為と法定期間の徒過
典型例は行政事件訴訟法3条6項の
「不作為の違法確認訴訟」。
● 下位論点
- 法定期間(標準処理期間)の有無と内容
- 優越的地位濫用等の“実態調査義務”が認められているか
- 法定期間徒過を知った日、からの“出訴期間”管理
- そもそも「処分に該当する行為」か
● ポイント
標準処理期間が明示されている分野ほど不作為違法は主張しやすい。
❹ 裁量の範囲と“裁量権の逸脱・濫用”の立証
行政が
「裁量で判断した結果、何もしない」
と言ってきた場合に備える論点。
● 下位論点
- 裁量権の根拠規定と趣旨
- 裁量判断過程の合理性(資料収集の有無)
- 事実誤認・判断過程の欠落・比例原則違反
- 平等原則違反(類似事案で対応が異なる)
- 社会通念上著しく妥当性を欠くか
● ポイント
“裁量だから不作為OK”ではない。
「裁量のもとでも最低限の調査義務がある」という論理が重要。
❺ 不作為によって生じた不利益との因果関係
行政不作為が違法でも、損害賠償には因果関係が必須。
● 下位論点
- 違法状態が不利益を生んだ“相当因果関係”の立証
- 民法上の国家賠償法1条の枠組み
- 行政の調査義務違反による“監督懈怠”の評価
- 不作為と民間業者の行為の関係性(第三者行為論)
● ポイント
国家賠償まで踏み込む場合は立証の難度が跳ね上がる。
❻ 手続的違法の有無(説明義務・資料収集義務)
不作為の違法性は、「結果」よりも“手続の欠落”を突く方が成立しやすい。
● 下位論点
- 調査・ヒアリング義務
- 資料収集義務(必要な事実認定をしていない)
- 判断理由の提示義務(行政手続法)
- 恣意的運用の禁止・透明性の確保
- 一貫性ある運用を欠く行政慣行の存在
● ポイント
行動していない行政は、理由提示を拒むため、“手続面の空白”が最大の攻撃ポイントになる。
まとめ:不作為追及の“立証モデル”
行政不作為を追及する構造は次の形に整理できる。
- 法律上の義務があるのに
- 申請・届出・請求が適式に行われ
- 法定期間を徒過し
- 裁量権の逸脱・濫用があり
- 不利益との因果関係があり
- 必要な調査・手続を何もしていない
この“6要件モデル”で論点を積み上げることで、
行政不作為の違法性を比較的立体的に主張できる。

