銀行は本来、関与しないはずの取引だった
2社間ファクタリングは、形式上、銀行融資とは切り離された取引である。
貸付ではなく債権譲渡であり、銀行は当事者にならない。
そのため、この取引は長らく「銀行の外側」にあるものとして説明されてきた。
しかし現実には、銀行は完全に無関係ではなかった。
直接の契約当事者ではないが、制度の周縁でこの取引と接点を持っていた。
その関与は、積極的な推進ではなく、消極的な判断の積み重ねによって生じた。
融資できない案件が必ず生まれるという前提
銀行は、すべての資金需要に応えられる存在ではない。
財務内容、返済能力、担保、過去の取引履歴。
これらの基準を満たさない案件は、必ず融資不可と判断される。
融資を断る場面で、銀行には二つの選択肢がある。
資金調達の道を完全に断ち、関係を終わらせるか。
融資以外の手段があることを示し、関係をつなぐか。
後者が選ばれる場面で、2社間ファクタリングは現実的な選択肢として浮上した。
バランスシートを汚さないという合理性
銀行にとって、2社間ファクタリングは自らのリスクを増やさない。
融資ではないため、与信リスクを取らずに済む。
貸倒引当も不要であり、自己資本規制の対象にもならない。
形式上は、顧客が自主的に選んだ資金調達手段である。
銀行は説明や紹介を行っても、直接の責任を負わない。
この距離感が、関与への心理的なハードルを下げた。
倒産を避けたいという現実的な動機
銀行は、取引先が倒産すればすべてを失う。
貸付金の回収も止まり、関係は断絶する。
一方で、2社間ファクタリングによって一時的に資金が回れば、延命は可能になる。
延命は、銀行にとって無意味ではない。
将来の事業再建や再融資の可能性を残すからだ。
この意味で銀行は、2社間ファクタリングを「問題の先送り装置」として黙認した側面がある。
積極的に勧めたわけではない。
しかし、止める理由も制度上は見つけにくかった。
組織としての判断が生んだ責任の空白
銀行の融資判断は、個人ではなく組織が行う。
規程に合わない案件を通せば、責任は担当者に返ってくる。
一方で、融資を断った後の資金調達については、責任の範囲外とされやすい。
この線引きが、結果として外部取引への誘導を生んだ。
誰かが積極的に決めたわけではない。
組織として最も無難な判断を積み重ねた結果である。
「止めなかった」ことが信頼として作用した
銀行が2社間ファクタリング業者と正式な提携関係を持つ例は多くない。
しかし、否定しない。
止めない。
黙認する。
この態度は、利用者にとって強い意味を持つ。
銀行が明確に否定しなかったという事実が、一定の安心材料として作用する。
結果として、銀行の関与は間接的でありながら、無視できないものになった。
合理的判断の集合が構造を支えた
重要なのは、銀行が悪意を持って関与したわけではない点である。
銀行は自らの規律を守り、リスクを回避し、破綻を先送りしようとした。
その判断は、個別に見れば合理的だった。
しかし、その合理性が積み重なったとき、構造全体を誰が引き受けるのかという問題が残る。
銀行は直接手を汚さず、距離を保った。
同時に、完全に切り離すこともできなかった。
2社間ファクタリングは、銀行の外に自然発生した取引ではない。
銀行の内側の論理が生み出した空白を埋める形で、成立してきたのである。

