2社間ファクタリングは、なぜ「合法ヤミ金」と呼ばれるのか
2社間ファクタリングは、表向きは「売掛債権の売買契約」である。
しかし実態としては、継続利用を前提にした高額手数料徴収、資金繰りに追い詰められた事業者に依存した収益構造、そして“融資規制の外側”で動く資金提供という性質を帯びている。
この実態が、社会の現場では合法ヤミ金という呼称を生み出している。
法形式に従えば合法である。
だが、実質的な性格はヤミ金に近い。
このねじれこそが、2社間ファクタリングの核心であり、問題性の出発点である。
法的なグレーゾーンの外縁で成立する以上、本来ならば専門家が正面から論じるべきテーマだ。
にもかかわらず、その議論がほとんど聞こえてこない。
ここに「弁護士の沈黙」という構造的問題が横たわっている。
弁護士が声を上げないと何が起きるのか
弁護士が動かない。
その結果、何が失われるか。
まず、概念の整理が進まない。
そして、判例が蓄積されない。
さらに、被害の把握が体系化されない。
最後に、社会的認知が形成されない。
こうして、「合法ヤミ金」という実態を持ちながら、**“問題が問題として成立しない市場”**が出来上がる。
これは単なる専門家不足ではない。
沈黙によって、問題が不可視化されたまま固定化されるという深刻な事態である。
なぜ弁護士は沈黙するのか ― 現場の事情
弁護士が悪い、と単純化して済む話ではない。
沈黙には沈黙の理由がある。
訴訟構造が複雑で、勝訴の見通しが読みづらい。
契約書面の形式が整っており、違法性を争点化しにくい。
被害金額が分散し、社会的注目を集めにくい。
しかも、相談者自身が事業者であるため、弱者イメージとの親和性が低い。
この組み合わせによって、**「案件として手掛けにくい」**という現実が生じる。
採算・労力・リスクを考えると、優先順位が下がる。
やがて、誰も体系的に手を付けない領域が出来上がる。
ここで重要なのは、弁護士が消極的であることそのものより、その沈黙が合法ヤミ金にとって最良の環境を作ってしまうという現実である。
沈黙が合法ヤミ金を“育てる”メカニズム
問題視されない市場は、成長する。
批判されないビジネスは、過熱する。
抑止力が存在しない領域は、必ず拡大する。
弁護士が沈黙することで、2社間ファクタリングは「社会問題」ではなく「自己責任の商取引」に分類される。
すると、行政は動かない。
メディアも深掘りしない。
利用者だけが、静かに疲弊していく。
そして最後に、そこに利益が生じる。
利益がある場所には、必ず参入が生じる。
参入が増えれば競争が起こり、条件はエスカレートする。
こうして、合法ヤミ金としての性格が強化されていく。
この成長過程の裏側にあるのは、派手な広告でも、強引な勧誘でもない。
もっと静かな要因――専門家の沈黙である。
「被害者が見えない」という最悪の条件
さらに厄介なのは、被害者像が社会的に共有されないことだ。
事業者は生活困窮者ではない。
自ら契約に署名している。
融資の代替手段として利用している。
この条件が揃うと、彼らは「保護されるべき弱者」として認識されにくい。
ここに“自己責任論”が割り込む。
被害を訴えても、「選んだのはあなたでしょう」と処理されてしまう。
結果として、被害は存在しているにもかかわらず、被害者が存在しない市場という奇妙な構図が成立する。
弁護士の沈黙は、この不可視化をさらに加速させる。
沈黙は中立ではない ― 成長を許す意思表示である
ここで強調しておきたいのは、沈黙は中立ではないということだ。
2社間ファクタリングを巡る議論において、沈黙は実質的に合法ヤミ金の拡大を容認する立場と同義になる。
声を上げなければ、仕組みは修正されない。
定義が整理されなければ、規制は設計されない。
判例が積み重ならなければ、線引きは明確にならない。
弁護士の沈黙は、「放置」という選択を社会に強いる。
それは結果として、最も不利な立場にいる利用者に負担を集中させることになる。
必要なのはセンセーショナルな批判ではない
ここまで述べたからといって、感情的な非難だけで足りるわけではない。
必要なのは、「合法ヤミ金」という実態を正しく言語化し、構造として提示する作業だ。
・売掛債権売買の形式
・資金提供としての実質
・継続利用に依存する収益モデル
・規制の外縁に居座るビジネス
これらを専門家が整理し、議論の俎上に載せること。
それがあって初めて、社会は線引きや規制の設計に手を付けられる。
弁護士の役割とは、訴訟代理だけではない。
概念を整えることそのものが、被害を減らす最初の一手である。
おわりに ― 沈黙は、最も安価で強力な支援である
弁護士が沈黙すると、2社間ファクタリングは合法ヤミ金として育つ。
これは比喩ではない。
批判がない市場は、最も安全で利益率の高い市場だからだ。
声を上げることは、摩擦を生む。
沈黙は、摩擦を生まない。
だから沈黙は、最も安価で、最も強力な「間接的支援」になる。
問題は、誰がこの沈黙の代償を支払っているかだ。
それは、資金繰りに追われ、選択肢のない中で契約を重ねていく利用者である。
合法ヤミ金の拡大は、自然現象ではない。
それは、社会の沈黙が作り出した“結果”である。

