2社間ファクタリングは、なぜここまで放置され続けているのか。
前回までで見てきた通り、この市場は「誰も本気で終わらせたがっていない」という異常な均衡の上に成り立っている。
業者は儲かるから動かない。
比較サイトは送客で稼げるから動かない。
金融機関は面倒が増えるから動かない。
士業は割に合わないから動かない。
行政と政治は得にならないから動かない。
では、この構造の中で、それでも最後に止められるのは誰なのか。
結論から言えば、「本来止める力を持っているのに、意図的に沈黙している主体」は、実はかなり限定されている。
行政でも立法でもない理由
まず、多くの人が期待する「金融庁が動けば終わる」「法律を作れば終わる」という発想は、現実的にはかなり甘い。
確かに、制度上は可能だ。
実質貸付の定義を広げる。
2社間ファクタリングを登録制にする。
上限手数料を設ける。
広告表現を規制する。
しかし、これらはすべて「やろうと思えばできる」話であって、「実際にやる政治的合理性がある」話ではない。
なぜなら、規制した瞬間に確実に起きるのは次の三つだ。
・中小企業団体からの反発
・業界団体や広告業界からのロビー
・「資金繰り難民を生むな」という感情論的批判
一方で、規制しないことによる被害者は、声を上げにくく、可視化されにくく、票にもならない。
この構図の中で、行政や政治が自発的に「よし、今すぐ止めよう」と動くインセンティブは極めて弱い。
つまり、制度的に止められる主体と、現実に止めに行く主体は別物だということだ。
本当の規制主体① 広告プラットフォーム運営会社
最初に挙げるべき「本当の規制主体」は、意外なところにある。
それは、Google、Yahoo!、SNS広告プラットフォーム、そして大手アフィリエイトASPだ。
2社間ファクタリング市場は、もはや口コミや紹介だけで回っている世界ではない。
検索広告、SEO記事、ランキングサイト、比較メディア、SNS広告。
この送客インフラが止まった瞬間、市場は一気に干上がる。
しかも、ここは法律改正を待たずとも、今日からでも止められる。
・広告ポリシーで2社間ファクタリングを制限
・「審査なし」「即日」などの文言を禁止
・比較サイト型広告を金融商品扱いに切り替える
・成果報酬型送客を全面停止
これらは、プラットフォームの自主規制だけで実現可能だ。
実際、過去に闇金や出会い系、仮想通貨詐欺などが締め出された時も、法律ではなく広告ポリシー変更が引き金になっている。
それでも彼らが動かない理由は一つしかない。
普通に儲かっているからだ。
ここが沈黙している限り、業者を何社潰そうが、新しい業者は無限に補充される。
本当の規制主体② 銀行と保証協会という“蛇口”
次に、本当の意味で市場を止める力を持っているのが、銀行と信用保証協会だ。
なぜなら、2社間ファクタリングに流れ込む利用者のほぼ全員は、直前に銀行で断られている層だからだ。
ここで何が起きているか。
銀行は「うちは無理です」で相談を打ち切る。
保証協会も形式要件で門前払いする。
代替策の提示はほぼない。
その結果、事業者は検索窓に「即日 資金調達」と打ち込む。
この動線が、ほぼ自動化されている。
もし銀行側が、
・短期ブリッジ融資
・超短期リスケ枠
・債権回収猶予型融資
・再生前提の条件付き融資
こうした「本当の意味での最後の受け皿」を制度化すれば、2社間ファクタリングに流れる需要は、体感で半分以下になる。
だが、やらない。
なぜか。
面倒で、儲からず、リスクが高いからだ。
つまり、銀行と保証協会は、「蛇口を締めれば止まる」と分かっていながら、意図的に蛇口を開けっ放しにしている主体でもある。
本当の規制主体③ 比較サイト運営会社という“黒幕”
三つ目の規制主体は、はっきり言って最もタチが悪い。
比較サイト運営会社だ。
彼らは、2社間ファクタリング市場の「空気」を作っている。
おすすめランキング、厳選5社、安心業者比較、口コミ評価。
これらがあるから、この商品は「選択肢の一つ」みたいな顔をして存在できている。
もし明日から、主要比較サイトがすべて閉鎖されたらどうなるか。
・新規参入業者はほぼ消える
・既存業者の新規獲得コストが爆増する
・手数料はさらに上がるが、利用者は激減する
・市場規模は一気に縮小する
つまり、ここは実質的な元締めだ。
にもかかわらず、彼らは金融業者でもなければ、貸金業者でもないという立場を使って、責任の外側に立っている。
だが、現実には、
・どの業者が売れるかを決め
・どの条件が「普通」に見えるかを作り
・どこまでの手数料が許容されるかを調整している
完全に市場設計者のポジションにいる。
ここが自主的に「もうやめよう」と言った瞬間、この市場は事実上、終わる。
本当の結論 最後に止められるのは「制度」ではなく「送客を握る者」だ
ここまでの話をまとめると、答えはかなり冷酷だ。
2社間ファクタリングを最後に止められるのは、
金融庁でも、国会でも、警察でもない。
送客を握っている者たちだ。
・広告プラットフォーム運営会社
・比較サイト運営会社
・銀行と保証協会という蛇口
この三者が同時に「もうこれは扱わない」と決めた瞬間、市場は一気に崩壊する。
逆に言えば、この三者のうち、どれか一つでも沈黙している限り、どんな規制を入れても、この市場は生き残る。
では、誰が最初に沈黙を破るのか
最後に、一番現実的な問いに戻る。
この中で、最初に沈黙を破る可能性があるのは誰か。
答えは、残念ながら一番「きれいごと」を言っている側ではない。
一番世論と炎上に弱い側だ。
それは、広告プラットフォーム運営会社である可能性が最も高い。
なぜなら、
・社会問題化した瞬間に真っ先に叩かれる
・「なぜ広告を載せていたのか」と責任を問われる
・政治よりも世論の方がダイレクトに効く
過去のあらゆるグレー市場が、最終的に潰れた時の引き金は、ほぼ例外なく「広告規制」だった。
つまり、2社間ファクタリング市場が終わるとしたら、それは法律改正の日ではない。
大手プラットフォームが、静かに広告ポリシーを変えた日だ。
その瞬間、業者は消え、比較サイトは干上がり、銀行は否応なく現実と向き合わされる。
それが、この市場にとっての、本当の「終わり方」になる。

