問題は「業者の破綻」では終わらない
2社間ファクタリングが実質貸金であり違法であると、裁判や立法によって明確に認定されたとき、多くの人はまず「悪質業者が潰れる」という光景を思い浮かべます。しかし、そこで終わる話ではありません。
むしろ本当の問題は、その背後にいる金融機関とファンド、そして投資家に連鎖的な損失が広がる点にあります。
2社間ファクタリング市場は、業者の自己資金だけで成立している市場ではありません。銀行グループ、金融機関系ファンド、機関投資家の資金が大量に流れ込み、買い取られた債権が投資商品として再流通しています。
この市場は、すでに金融システムの内部に深く組み込まれているのです。
違法認定の瞬間、債権の法的性質が一変する
違法認定が出た瞬間にまず起きるのは、債権の法的評価の根本的な変化です。
これまで「債権譲渡」「買取」とされてきた契約が、実質貸金であり、利息制限法違反の高金利取引であると認定されれば、その契約の多くは無効または大幅な減額の対象になります。
具体的には、
受け取った手数料の大半が違法利息として否定され、
元本部分のみが返還対象とされ、
場合によっては過払い返還請求が認められる。
つまり、これまで「資産」として計上されてきた債権が、一夜にして回収不能または返還義務付きの負債に変わるのです。
最初に崩れるのはファクタリング業者ではない
直感的には、最初に倒れるのは現場のファクタリング業者だと思われがちです。しかし実際には、業者はすでに債権をファンドや金融機関に売却しているケースが少なくありません。
業者自身のバランスシートは軽く、リスクはすでに外に出ています。
違法認定が出た瞬間に直撃するのは、債権を保有している金融機関系ファンドや投資ビークルです。
そこでは、
回収予定額が一斉に減額され、
評価損が発生し、
基準価額が急落し、
投資家からの解約が殺到する。
この時点で、すでに一つ目の連鎖損失が始まります。
過払い返還請求が金融機関を直撃する
違法認定が確定すれば、利用企業側からの過払い返還請求が一気に噴き出します。
ここで重要なのは、請求の相手が業者だけとは限らない点です。
債権を譲り受けたファンドや金融機関が実質的な債権者である以上、返還義務の一部または全部を負う可能性が高くなります。とくに、形式的な名義変更だけで実質的に銀行側が回収を支配していた場合、責任逃れは困難になります。
過去のサラ金問題と同じ構図です。
過払い返還は、最初は静かに始まり、やがて集団訴訟や弁護士広告によって一気に拡大します。回収予定だったキャッシュフローは消え、逆に巨額の返還債務が発生します。
この段階で、ファンドは事実上の破綻状態に追い込まれます。
銀行本体に波及する信用リスクと資本リスク
ファンドの損失は、必ず銀行本体に波及します。
銀行は、ファンドへの出資者であり、ファンドへの融資者であり、場合によっては保証人でもあります。
評価損が膨らめば、銀行は引当金を積み増さざるを得ず、自己資本比率は急低下します。場合によっては、金融庁から是正措置を受けるレベルの損失に発展します。
さらに深刻なのは、レピュテーションリスクです。
銀行が合法ヤミ金市場に資金を供給していた事実が公になれば、「コンプライアンス軽視」「脱法金融への関与」という評価は避けられません。これは単なる一事業の失敗ではなく、金融機関全体の信用問題になります。
預金者、株主、取引先の不信は一気に広がります。
投資家と年金資金が巻き込まれる可能性
もう一つ見落とされがちなのが、最終的な損失の負担者が誰になるのかという問題です。
ファンドの出資者の中には、地方銀行、信用金庫、企業年金、機関投資家、場合によっては公的資金に近いマネーが含まれている可能性があります。
つまり、2社間ファクタリングの違法認定は、単なる一業界の問題ではなく、金融市場全体に損失を拡散させる事件になり得るのです。
サブプライムローンとまったく同じ構図です。
高利回り商品として売られていたものが、実は違法性を含んだ不良資産だったと判明する。
そして最後に損をするのは、現場の業者ではなく、金融機関とその背後の投資家です。
なぜ金融機関はこのリスクを分かっていて放置してきたのか
ここで最も厳しく問われるべきなのは、なぜこのリスクを承知で資金を出し続けてきたのかという点です。
違法認定の可能性がゼロだと本気で信じていた金融関係者は、ほとんどいないはずです。実質貸金であるという法的リスクは、業界内では昔から知られていました。
それでも資金供給を止めなかった理由は単純です。
儲かっていたからです。
短期回収、高利回り、表面上は延滞率が低い。規制が入るまでは、極めて効率のよい運用商品だった。その利益の裏に、巨大な法的時限爆弾が仕込まれていることを、意図的に無視してきたのです。
違法認定は金融機関の責任を正面から問う事件になる
2社間ファクタリングが違法と認定された瞬間、問われるのは業者だけではありません。
なぜ銀行は資金を止めなかったのか。
なぜファンドは投資を続けたのか。
なぜ投資家にリスクを十分説明しなかったのか。
なぜ金融庁はここまで放置したのか。
この問題は、必ず金融機関の内部統制と監督行政の責任にまで波及します。
2社間ファクタリングの違法認定は、一業態の規制強化では終わりません。
それは、日本の金融システムのどこに、どれだけの脱法金融マネーが入り込んでいたのかを白日の下にさらす事件になります。
結論 2社間ファクタリングは金融機関にとって最大級の時限爆弾である
ここまで整理すれば、結論は明白です。
2社間ファクタリングの違法認定は、ファンドの評価損を生み、過払い返還を引き起こし、銀行の自己資本を傷つけ、金融市場の信用を揺るがす。
これは、業者の問題ではありません。
金融機関自身が、自分のバランスシートの中に抱え込んだ時限爆弾です。
爆発する日がいつ来るかは分かりません。
しかし、爆発しないと信じて資金を出し続けることこそ、金融機関として最も危険な賭けだと言えるでしょう。

