ファンドと投資家は何を信じて資金を出しているのか 2社間ファクタリング業者の「説明」の正体

ファクタリングの違法性と契約について

表向きの説明は「安全な債権投資」である

2社間ファクタリングの資金の多くは、業者の自己資金ではありません。背後には、金融機関系ファンド、投資ビークル、機関投資家、時には年金資金や地域金融機関の運用資金まで組み込まれています。

彼らに対して、業者は何を説明しているのか。

ほぼ例外なく、最初に提示されるのは次の三点です。

売掛債権を裏付けとした実在資産であること、
短期回収でデフォルト率が低いこと、
貸金ではなく債権売買であるため規制リスクが小さいこと。

つまり、「実体のある低リスク・高利回り商品」という位置づけです。

ここで意図的に強調されるのは、「貸金ではない」という一点です。この一言があることで、利息制限法も、貸金業規制も、過払い返還も、すべて理論上は関係なくなる。

ファンドと投資家は、まずこの前提を信じて資金を出します。

最も重要な説明が、ほとんどなされていない

問題は、ここから先です。

2社間ファクタリングの最大の法的リスクは、「実質貸金と評価される可能性」にあります。しかし、この点について、業者が正面から十分に説明している例はほとんどありません。

多くの場合、説明は次のような形にすり替えられます。

過去に違法とされた事例はほとんどない、
裁判例では債権売買と認められているものもある、
弁護士チェックを経て適法と判断している、

こうして、「違法になる可能性がゼロではない」という事実が、「ほぼ問題はない」という印象に変換されます。

しかし現実には、2社間ファクタリングは法的に極めて不安定な領域にあります。実質貸金性、回収関与、保証構造、償還義務、手数料の実態。そのどれか一つが強く認定されれば、一気に貸金認定に傾きます。

この核心部分について、体系的なリスク説明を受けて投資している投資家は、ほとんど存在しません

「過払い返還リスク」はほぼ説明されていない

さらに深刻なのは、過払い返還リスクです。

もし実質貸金と認定されれば、利息制限法超過部分は無効となり、過払い返還請求が発生する可能性があります。これは業者だけの問題ではありません。債権を保有しているファンド、利回りを受け取っていた投資家、回収を管理していた主体まで、連鎖的に責任を問われる可能性があります。

しかし、この点は、投資家向け説明資料ではほとんど触れられません。

説明されるのは、せいぜい「法令遵守体制を整えている」「弁護士の意見を取得している」という抽象的な一文だけです。過払い返還が現実化した場合の損失規模、返還義務の所在、投資家への影響について、具体的な数値やシナリオが示されることはまずありません。

これは単なる説明不足ではありません。
投資判断に直結する最重要リスクを、意図的に曖昧にしている構造です。

ファンドは「貸金でないこと」を前提に設計されている

この問題がさらに深刻なのは、ファンドの商品設計そのものが、「貸金ではない」という前提の上に組み立てられている点です。

利回り設計、格付け、リスクウェイト、引当方針、投資家向け説明資料、そのすべてが、「債権売買であり、金融規制の対象外である」という前提で作られています。

もしこれが貸金と認定されれば、商品設計の前提そのものが崩れます。

利回りは違法利息として否定され、回収計画は破綻し、保有債権は一斉に不良資産に転落する。その可能性を、ファンド自身も、本気では織り込んでいない。

つまり、業者だけでなく、ファンド側もまた、見たい説明だけを信じて商品を組成しているという構図です。

投資家は「知らされていないまま」リスクを負わされている

最終的に、最大の被害者になるのは誰か。

それは、末端の投資家です。

年金基金、地域金融機関、事業法人、富裕層向け運用商品。彼らは、「低リスクの短期債権投資」としてこの商品に資金を出しています。

しかし実際には、

実質貸金と認定されるリスク、
過払い返還が連鎖するリスク、
ファンド自体が破綻するリスク、
銀行が関与していた場合の訴訟リスク、

こうした致命的な法的リスクについて、ほとんど説明を受けていないまま資金を出しているのが現実です。

これは、サラ金問題の末期と極めてよく似ています。

当時も、投資家は「合法的な高利回り金融商品」と説明され、実際に違法認定が出た瞬間、利回りは消え、元本が消え、誰も責任を取らなかった。

結論 説明されているのは「都合のいい物語」だけである

結論は、はっきりしています。

ファンドと投資家が説明されているのは、2社間ファクタリングの全体像ではありません。
説明されているのは、業者と商品を成立させるために必要な「都合のいい物語」だけです。

貸金と認定される可能性、過払い返還の連鎖、銀行責任の波及、商品設計の崩壊。その核心部分は、意図的に曖昧にされ、資料の隅に追いやられ、あるいは最初から語られない。

だからこそ、この市場は、いまも平然と回り続けている。

しかし、一件の判決、一つの違法認定、それだけで、この「物語」は一夜にして崩れます。

その瞬間、投資家は初めて、自分が何に資金を出していたのかを知ることになる。

2社間ファクタリングとは、
利用企業だけでなく、投資家までも静かに巻き込んでいく脱法金融の装置にほかなりません。