2社間ファクタリングと顧問弁護士の意見書―それは本当に「免責」になるのか

ファクタリングの違法性と契約について

2社間ファクタリングに違法認定が下された瞬間、多くの業者と金融関係者が、ほぼ同時に口にする言葉があります。
「弁護士の意見書があった」「専門家の確認を取っていた」。

この一言が、どれほどの免罪符として使われてきたかは、金融実務の世界を知る者なら誰でも理解しています。しかし、法的に見たとき、その意見書は本当に免責になるのでしょうか。

結論から言えば、ほとんどの場合、免責にはなりません。
むしろ、状況によっては、違法性を認識していた証拠として、逆に致命的な役割を果たすことになります。

意見書は「合法保証」ではなく、単なる見解表明にすぎない

まず大前提として、顧問弁護士の意見書には、法的な免責効はありません。

意見書は、裁判所や行政を拘束するものではなく、あくまで「当該時点における一弁護士の法的見解」にすぎません。そこに「適法と考えられる」と書かれていても、それによって違法性が消えるわけではありません。

とくに2社間ファクタリングのように、形式と実態が乖離しやすい取引では、最終判断は常に実態に基づいて行われます。契約書の形式がどうであれ、実質が貸付であれば貸金業法が適用される。この原則は、意見書一枚で覆るものではありません。

したがって、違法認定が出た後に、「弁護士の意見書があった」と主張しても、それだけで責任を免れることはできないのです。

問題になるのは、「何を前提に書かれた意見書か」である

意見書の効力を左右する最大の要素は、その前提事実です。

顧問弁護士の意見書の多くは、業者側が提示したスキームや契約書、説明資料だけを前提に書かれています。実際の運用、手数料の実質利率、回収方法、反復継続性といった、最も危険な要素が十分に開示されていないケースがほとんどです。

その場合、意見書の価値は一気に下がります。

裁判所は必ずこう判断します。
「前提事実が異なれば、結論も変わる」。

もし、業者が重要な事実を隠して意見書を取得していたと認定されれば、その意見書は免責どころか、「違法性を回避するための形式的工作」と評価される可能性すらあります。

「グレーだが直ちに違法ではない」は、最も危険な表現である

2社間ファクタリング関連の意見書で、最も頻繁に使われてきた表現があります。

「現時点において、直ちに貸金業法違反と評価されるものではない」。

一見すると、適法のお墨付きのように見えます。しかし、法的に見ると、これは極めて危険な言い回しです。

この表現は、「違法ではない」と断定しているわけではありません。むしろ、「将来、違法と評価される可能性がある」ことを暗に認めています。

違法認定後、この一文は、ほぼ確実にこう解釈されます。

違法性の可能性を認識していた。
リスクを理解していた。
それでも事業を継続した。

つまり、意見書は、善意の証拠ではなく、悪意または少なくとも認識の証拠として使われるのです。

顧問弁護士自身も、責任を問われうる立場にある

もう一つ重要なのは、意見書を書いた弁護士自身の責任です。

原則として、弁護士は依頼者の代理人であり、依頼者の違法行為について直接の責任を負うことは少ない。しかし、次の条件が揃えば、話は一気に変わります。

違法性を強く認識していた。
脱法目的であることを理解していた。
スキーム設計に深く関与していた。

この場合、弁護士は単なる助言者ではなく、共同行為者、あるいは幇助犯として責任を問われる可能性があります。

実際、過去の金融事件では、「違法スキームの設計に関与した弁護士」が、懲戒処分や民事責任を負った例が少なからず存在します。

とくに危険なのは、契約書の文言を意図的に調整し、「貸金に見えない形」を作り込んでいた場合です。ここまで踏み込めば、もはや法的助言ではなく、脱法行為への積極関与と評価されかねません。

行政と裁判所は、意見書をどう扱うのか

金融庁や裁判所は、意見書をどう見るのでしょうか。

答えは明確です。参考資料の一つとしては見るが、判断の根拠にはしない、という扱いです。

むしろ、行政訴訟や国家賠償訴訟では、意見書は次の二つの点で使われます。

業者や金融機関が、違法性リスクを認識していた証拠。
行政が、問題を把握しながら放置していた証拠。

とくに、意見書が金融庁や検査官に共有されていた場合、その影響は極めて大きくなります。

「弁護士もグレーと言っていた」
「行政も知っていた」
「それでも止めなかった」

この構図が成立した瞬間、問題は業者の違法性から、行政の監督不作為へと一気に拡大します。

最後に残るのは、「意見書を盾にした」という事実である

違法認定後、ほぼすべての業者と関係者が、同じ説明をします。

「専門家の意見を信頼していた」。

しかし、裁判所が見るのは、信頼していたかどうかではありません。問われるのは、意見書を、本当にリスク判断の材料として使っていたのか、それとも、違法性を隠すための盾として使っていたのか、という点です。

もし後者と認定されれば、意見書は免責どころか、最も重い証拠になります。

2社間ファクタリングの世界で、顧問弁護士の意見書が本当に恐れられている理由は、そこにあります。

それは守ってくれる書類ではなく、将来、違法性を裏付ける決定的な証拠になりうるからです。