多くの経営者は、自分から2社間ファクタリングを探しに行くわけではない。銀行に融資を断られ、資金繰りが詰まり、最後に相談した相手から「一度だけなら」「つなぎとしてなら」と勧められて使い始める。勧めてくるのは、広告業者でも金融機関でもなく、税理士や顧問、経営コンサル、資金調達の紹介業者といった、日頃から最も信頼している相手である。
ここに、この取引が最も危険になる構造がある。2社間ファクタリングは、ほとんどの場合、信頼関係を経由して始まる取引であり、その入口に立っているのが士業と紹介業者である。
2社間ファクタリングの入口は、なぜ士業なのか
資金繰りが苦しくなった経営者は、まず顧問税理士や会計事務所に相談する。銀行に断られた後であればなおさらである。そこで「銀行は厳しいが、こういう方法もある」と提示されるのが、2社間ファクタリングである。
士業側にとって、この提案は極めて都合がよい。自分は資金を出さず、契約当事者にもならず、責任も負わずに「助言」だけで関与できる。しかも、顧客の資金繰りが一時的に改善すれば、自分の顧問先も当面は延命する。
この段階で、すでに利益相反が始まっている。経営者の長期的な利益よりも、「いま倒れないこと」が優先され、その場しのぎの手段として2社間ファクタリングが選ばれる。
紹介業者の報酬構造とインセンティブ
さらに深刻なのが、紹介業者の存在である。2社間ファクタリング業者の多くは、自社で集客せず、紹介ネットワークに強く依存している。その裏側には、明確な金銭的インセンティブが存在する。
・成約金額の数%に及ぶ紹介料
・継続利用ごとのバックマージン
・複数業者への横流しによる多重手数料
紹介業者にとって、経営者が苦しめば苦しむほど、紹介機会は増え、報酬は積み上がる。資金繰りが改善し、銀行融資に戻られてしまえば、二度と儲からない。ここでは「助ける側」と「儲ける側」が完全に一致してしまっている。
士業は本当に「善意の助言者」なのか
士業が関与する場合、さらに問題は深くなる。税理士や会計士は、経営者にとって最も信頼度の高い専門家であり、その助言には事実上の拘束力がある。
それにもかかわらず、多くのケースで士業はこう説明する。
「自分は紹介しただけだ」
「契約には関与していない」
「金融商品ではないから責任はない」
しかし現実には、士業が2社間ファクタリングのリスク構造を正確に理解しているとは限らない。実質的に高金利であること、回収トラブルが起きやすいこと、銀行取引に重大な悪影響を与えることを、どこまで説明しているのかは極めて疑わしい。
善意であれ無知であれ、結果として経営者を危険な取引に誘導している事実は変わらない。
法的責任は、なぜほとんど問われないのか
ここで多くの経営者が直面するのが、責任の所在が驚くほど曖昧であるという現実である。
契約当事者はファクタリング業者と経営者であり、紹介した士業や業者は当事者ではない。助言責任や不法行為責任を問うには、故意や重過失を立証しなければならず、現実には極めて高いハードルがある。
その結果、
・業者は「契約通り」と言い
・紹介業者は「仲介しただけ」と言い
・士業は「助言しただけ」と言い
誰も実質的な責任を取らない構造が完成する。
経営者は、なぜ断れなかったのか
ここまで一方的に責めるのは簡単だが、実態はもっと厳しい。経営者は時間に追われ、資金が尽きかけ、従業員と取引先を守らなければならない。その状況で、最も信頼している相手から「一度だけなら」と言われれば、断るのは極めて難しい。
しかも2社間ファクタリングは、契約書上は合法的な取引に見える。違法性が確定していない以上、「危険だからやめろ」と断言してくれる専門家はほとんどいない。
結果として、経営者は制度の隙間に一人で放り込まれる。
最後に責任を負わされるのは誰か
制度を設計したのは金融業界であり、資金を供給したのはファンドや銀行であり、商品を売ったのは業者と紹介業者である。しかし、最終的に破綻し、信用を失い、倒産に追い込まれるのは、ほとんどの場合、利用した中小企業である。
士業も紹介業者も、法的にはほとんど傷を負わない。業者が倒れても、別の業者を紹介すれば済む。責任の連鎖は、必ず利用者のところで途切れる。
だからこの問題で、本当に警告すべき相手は明確である。2社間ファクタリングを「勧めてくる人」ではなく、「勧められて使おうとしている経営者」である。
信頼している相手から紹介された取引ほど、疑わなければならない。2社間ファクタリングは、金融商品の問題である以前に、信頼を利用して成立する取引である。その危険性を理解しないまま使えば、最後に逃げ場がなくなるのは、ほかならぬ経営者自身である。

