2社間ファクタリングの現場では、契約書よりも先に「誰が連れてきたか」が問題になる。業者の営業担当よりも、顧問税理士や経営コンサル、資金調達ブローカーの一言の方が、経営者の意思決定を左右するからである。
その裏で静かに流れているのが、紹介料という名の金の流れだ。表向きは「広告費」「業務委託費」「コンサル料」とされることも多いが、実態は、成約額の10%から20%を、しかも継続回数分だけ受け取るという、極めて高率で継続的な報酬である。
では、この紹介料の受領は、法的に本当に問題にならないのだろうか。
紹介料そのものは、原則として違法ではない
まず大前提として、民間取引における紹介料の授受自体は、直ちに違法になるわけではない。業者と紹介者の間で業務委託契約が成立し、報酬として支払われている以上、形式的には通常の営業委託と同じ構造である。
ファクタリング業は登録制ではなく、現行法上、貸金業のような厳格な媒介規制も存在しない。そのため、「紹介したから違法」「手数料をもらったから違法」と単純に切り捨てることはできない。
問題は、どの立場の人間が、どの相手から、どのような条件で受け取っているかである。
最も危険なのは、顧客側の代理人が裏で受け取っている場合
違法性が急激に高まるのは、顧客の利益を守る立場にある者が、取引相手側から金銭を受け取っていた場合である。
顧問税理士、会計士、弁護士、経営コンサルといった立場の人間は、形式的には仲介業者ではなく、経営者側の助言者である。その者が業者側から紹介料を受け取れば、典型的な利益相反状態が成立する。
この場合、直ちに刑事犯罪になるとは限らないが、少なくとも次の法的問題が発生し得る。
・民法上の善管注意義務違反
・忠実義務違反による損害賠償責任
・士業業法上の信用失墜行為・品位違反
さらに、紹介料の存在を意図的に隠し、「中立的な助言」であるかのように装っていれば、状況次第では詐欺的行為と評価される余地すら出てくる。
特に深刻なのは、紹介料が単発ではなく、継続回数ごとに発生する仕組みである。この構造では、経営者が取引をやめるほど、紹介者の収入が止まる。助言者の立場にある人間が、利用継続を勧める強い動機を持つことになる。
ここに、この市場の最も歪んだインセンティブが存在している。
紹介業者の場合でも、完全に安全とは言えない
士業ではなく、純粋な紹介業者や資金調達ブローカーの場合でも、法的リスクがゼロというわけではない。
2社間ファクタリングが実質貸付と認定される余地がある以上、その媒介行為が、将来的に貸金業法上の無登録営業の幇助や共同正犯と評価される可能性は否定できない。
また、過大な紹介料が最終的に利用者負担の手数料に転嫁されている場合、その取引全体が暴利性を帯び、利息制限法違反や公序良俗違反として争われる余地も出てくる。
現時点では多くの案件が黙認されているが、違法性の判断は、常に事後的に遡って行われるという点を見落としてはならない。
説明義務違反という、最も現実的な責任追及ルート
紹介料問題で、現実に最も起きやすい法的紛争は、刑事事件ではなく、民事上の説明義務違反である。
経営者側から見れば、最大の争点はここにある。
自分に助言した士業やコンサルが、裏で業者から10%、20%の報酬を受け取っていた事実を、事前に知っていたかどうか。この一点で、取引の評価は大きく変わる。
開示せずに紹介していた場合、少なくとも次の責任は現実に問われ得る。
・重要事実不告知による不法行為責任
・助言契約に基づく債務不履行責任
・紹介者個人に対する損害賠償請求
実務では、このルートこそが、紹介者が最も恐れている責任追及経路である。
なぜ、この構造がここまで放置されてきたのか
それでも、この市場で紹介料問題がほとんど表面化しない理由は明確である。
第一に、紹介契約と紹介料の存在が、徹底的に非公開であること。契約書は業者と紹介者の間だけで交わされ、経営者には一切開示されない。
第二に、経営者側が証拠を持たないこと。金の流れはすべて業者側の帳簿に残り、被害者側は存在すら知らない。
第三に、紛争を起こす体力がないこと。資金繰りに詰まった会社が、士業やブローカー相手に訴訟を起こす余裕はほとんどない。
こうして、極めて高率で、極めて歪んだ紹介ビジネスが、長年、事実上の無法地帯として温存されてきた。
最後に残る、最も重要な警告
ここで、経営者が必ず知っておくべき事実がある。
2社間ファクタリングで最も危険なのは、手数料の高さではない。
最も危険なのは、あなたの味方のはずの人間が、相手側から金をもらっている可能性があるという一点である。
紹介料が発生している取引では、助言の中立性は、すでに最初から失われている。
だからこそ、この問題の結論は極めて単純である。
「誰がいくらもらっているのか」を開示できない取引は、最初から信用してはいけない。
2社間ファクタリングは、違法か合法か以前に、利益相反の構造そのものが最大のリスクなのである。

