2社間ファクタリングの転嫁構造を金融庁は把握しているのか――「見えているはずの問題」が放置されてきた理由

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2社間ファクタリングの紹介料が、最終的にすべて利用企業の手数料に転嫁されているという構造は、業界の内部ではほとんど公然の事実である。成約額の一割、二割という高率の報酬が、しかも継続回数ごとに発生する以上、それを業者が自腹で負担しているはずがない。

では、この構造を、金融行政の中枢にいる金融庁はどこまで把握しているのか。見て見ぬふりをしているのか、それとも制度上、本当に手が出せないのか。

この問いは、2社間ファクタリング問題の核心に直結している。

金融庁は「ファクタリング業」を直接監督していない

まず確認しておくべき前提がある。金融庁は、2社間ファクタリング業者を直接の監督対象としていない。

貸金業であれば登録制であり、検査・業務改善命令・業務停止といった強力な権限が及ぶ。しかし、ファクタリングは「債権売買」という建前で整理され、現行制度上、原則として民間取引の領域に置かれている。

その結果、

・業者の登録制度は存在しない
・手数料規制は存在しない
・媒介行為の規制もほぼ存在しない

この市場は、制度的には金融庁の直接統制の外側にある。

したがって、形式論だけを取れば、金融庁は「業者の紹介料構造を監督する立場にない」という整理が成り立つ。

問題は、それで本当に済む話なのかという点である。

銀行・証券・ファンドを通じて、金融庁は構造を把握し得る立場にある

金融庁が直接監督していないのは業者であって、この市場に資金を供給している主体ではない。

実際の資金の流れを見れば、2社間ファクタリングの原資の多くは、

・銀行グループ傘下のファンド
・信託・匿名組合スキーム
・社債引受や私募債の形を取る投資商品
・それを販売・仲介する証券会社

こうした、金融庁の厳格な監督下にあるプレーヤーを経由して供給されている。

銀行検査、証券会社検査、ファンド運用のモニタリングの過程で、次の点が見えていないはずがない。

・ファクタリング案件の異常に高い利回り
・営業委託費・紹介料名目の多額の支出
・継続案件比率の異常な高さ

少なくとも、資金供給側の帳簿の中には、紹介料という費用項目は必ず存在する

つまり、金融庁は、業者を直接監督していなくても、金融機関・証券会社・ファンドを通じて、この転嫁構造を把握し得る立場にあった。

把握していないとすれば、それは監督の空白であり、把握していたとすれば、それは黙認である。

なぜ、この構造は検査で正面から問題にされてこなかったのか

ここで問われるのは、制度ではなく、運用の問題である。

金融庁検査の実務では、ファクタリング案件は多くの場合、「高リスク・高利回りのオルタナ投資」という位置づけで整理されてきた。重要視されるのは、主として次の点である。

・貸倒リスクの管理ができているか
・投資家説明が適切か
・資本規制や自己資本比率に影響しないか

一方で、その利回りがどのような手数料構造から生まれているかについては、深く踏み込まれてこなかった。

紹介料が利用者に転嫁されているかどうかは、「業者の価格設定の問題」「民間契約の問題」として、意識的に検査項目の外に置かれてきた節がある。

その結果、

・異常な高利回りは黙認され
・営業委託費の多額支出も看過され
・利用者負担の実態は検査対象にならない

という、極めて歪んだ監督空間が生まれてきた。

金融庁は「知らなかった」と言える立場なのか

ここで最も重要なのは、知らなかったでは済まされない性質の問題だという点である。

2社間ファクタリングは、実質貸付性、暴利性、継続取引性という三点において、常にグレーゾーンの中心に置かれてきた。その市場で、紹介料が高率かつ継続的に発生している事実は、業界では長年共有されてきた。

しかも、その資金の出所の多くが、金融庁の検査対象である銀行・証券・ファンドである以上、

「まったく把握していなかった」
「気づくことができなかった」

と説明するのは、極めて困難である。

把握していなかったなら、監督の重大な欠陥であり、
把握していたなら、利用者負担の歪みを黙認してきたことになる。

どちらに転んでも、金融行政の責任は免れない。

違法認定が出た瞬間、この論点は必ず表に出てくる

この問題が本当に深刻になるのは、2社間ファクタリングに実質貸付の違法認定が出た瞬間である。

過払い返還、損害賠償、集団訴訟が現実化したとき、必ず問われるのは次の点である。

・金融庁はこの市場をいつから把握していたのか
・紹介料構造を知っていたのか
・なぜ是正指導をしなかったのか
・なぜ銀行・証券に注意喚起を出さなかったのか

検査記録、内部文書、検査官メモが開示対象になれば、「見えていたかどうか」は必ず検証される

転嫁構造は、単なる業者の問題では終わらない。金融行政全体の監督責任に、直結する論点である。

最後に残る、極めて重い問い

ここまで整理すると、結論はほぼ一つに収れんする。

金融庁は、制度上は監督していないと言えるかもしれない。
しかし、実態としては、この構造を把握し得る位置に、常にいた。

それでも是正されなかったという事実は、この市場が、行政の空白地帯として意図的に放置されてきた可能性を強く示唆している。

だから、この問題で本当に問われるべき問いは、こうなる。

金融庁は、この転嫁構造を知らなかったのか。
それとも、知っていて、止めなかったのか。

この問いに正面から答えられない限り、2社間ファクタリング問題は、単なる民間トラブルでは終わらない。
それは、金融行政そのものの監督責任を問う問題に変わっていく。