違法認定が出た瞬間、銀行・証券・ファンドはどれだけ損をするのか――2社間ファクタリングの資金供給側リスク

不存在債権は「詐欺か?」「不当原因給付か?」

2社間ファクタリングが実質貸付として違法認定された場合、最初に崩れるのは業者ではない。最初に破綻するのは、むしろその背後で資金を供給していた銀行、証券会社、ファンドである。

この市場の本質的な危険性は、利用企業と業者の関係ではなく、資金の最終的な出し手に損失が集中する構造にある。しかもその損失は、単なる貸倒れや評価減では終わらない。「法的に回収できない損失」として、ほぼ全額が消える可能性を含んでいる。


違法認定がもたらす返還請求の連鎖

違法認定が出た瞬間、最初に動くのは利用企業側である。

過払い返還請求、無効契約確認訴訟、不法行為に基づく損害賠償請求。これらは一斉に提起される可能性が高い。高率手数料と継続依存構造が長期間続いていた以上、返還額は個別企業単位でも相当額になる。

業者側は当然耐えきれない。返還資金を用意できず、連鎖的に資金繰りが崩れ、事実上の破綻に追い込まれる。

ここまでは、表に見えている構図にすぎない。


最後に損をするのは誰か

業者が破綻すれば、次に問題になるのは、業者に資金を出していた側である。

銀行系ファンド、証券会社経由の社債引受、匿名組合出資、機関投資家向け商品。2社間ファクタリング業者の多くは、こうした形で外部資金に依存してきた。

通常の貸倒れであれば、担保、保証、契約条項を通じて一定の回収は期待できる。しかし今回は性質が違う。

取引自体が違法と認定される場合、資金供給契約そのものが「違法スキームの一部」と評価される可能性が高い。このとき、資金提供側が業者に対して行う返還請求や求償請求は、思わぬ壁にぶつかる。


不当原因給付が資金提供側を直撃する

ここで問題になるのが、不当原因給付である。

民法708条は、不法な原因によって給付した者は、原則として返還請求ができないと定めている。重要なのは、この規定が「支払った側」を縛る点にある。

もし銀行・証券・ファンドが、違法性の高いスキームと知りながら、あるいは容易に知り得たにもかかわらず資金を出していたと評価されれば、その給付は「不法原因給付」に該当し得る。

その結果、業者が破綻したあとに資金提供側が返還を求めても、「違法な取引に基づく給付だから返せない」と遮断される可能性が生じる。

ここで初めて、損失の本質が見えてくる。

これは貸倒れではない。評価減でもない。
法的に一切取り戻せない損失である。


「知らなかった」はほぼ通用しない

資金提供側が最後に頼るのは、「形式上は債権売買だった」「違法とは知らなかった」という抗弁である。

しかし、実務的には極めて苦しい。

高率手数料、継続依存構造、紹介料転嫁、資金循環スキーム。これらは、デューデリジェンスをしていれば必ず把握できる内容である。特に銀行系ファンドや証券会社引受の社債については、内部審査、商品審査、法務チェックが複数段階で入っている。

その過程で実質貸付性に気づかなかったという説明は、ほぼ成立しない。

むしろ問題になるのは、次の点である。

・実質貸付性を認識しながら形式論で処理していなかったか
・高率手数料を把握しながら説明資料で隠していなかったか
・紹介料構造を承知のうえで商品化していなかったか

ここで「認識可能性」が認定されれば、不当原因給付による遮断は現実のものになる。


二次責任の連鎖

資金提供側の損失は、そこで終わらない。

業者が破綻し、回収不能になれば、次に動くのは投資家である。証券会社が販売していた商品であれば、説明義務違反、適合性原則違反、不法行為責任が一斉に問われる。

さらに、

・証券会社の販売責任
・ファンド運営会社の善管注意義務違反
・監査法人の監査責任
・顧問弁護士の意見書の適法性

こうした二次責任、三次責任が連鎖的に噴き出す。

ここで重要なのは、この構図が過去の金融事件と極めて似ている点である。サブプライム問題と同様、最後に全額を失うのは、スキームの末端ではなく、「制度的に安全だと信じて資金を出した側」になる。


結論――最も危険なのは資金の出し手である

2社間ファクタリングが違法と整理された場合、最大の敗者は業者ではない。利用企業でもない。

最も深刻な損失を被るのは、銀行、証券会社、ファンド、そしてその背後の投資家である。

しかもその損失は、通常の金融リスクではない。
違法スキームに組み込まれた結果として、法的に回収不能になる構造的損失である。

この市場が本当に危険なのは、高率手数料だからではない。
違法認定が出た瞬間、金融システムの内側から、静かに、しかし確実に崩れる構造を内包している点にある。

2社間ファクタリングは、利用企業を苦しめるだけの問題ではない。
それに資金を供給した金融機関自身が、最後に最大の代償を支払う取引なのである。