ファクタリング取引は中小事業者にとって迅速な資金調達手段となり得る一方で、法的なグレーゾーンを含んでいるため、取引後にトラブルが発生するケースも少なくありません。特に2社間ファクタリングでは、債権回収や契約内容に関する問題が表面化しやすく、譲渡人(債権を売却した側)が不利な立場に追い込まれることもあります。本稿では、ファクタリング取引でトラブルが生じた際に譲渡人が取るべき対応について、実務的な視点と法的論点を踏まえて詳述します。
トラブルの典型例とその構造
ファクタリングで生じるトラブルは、以下のようなケースに大別されます。
- 回収額に関するトラブル:譲渡人が債権額面どおりの回収を委任されていない、または譲渡人に対し譲受人から「満額回収されなければ損害賠償請求する」といった圧力がかかるケース。
- 契約内容の齟齬:回収義務の有無や、契約書の文言と実態に食い違いがあるケース。
- 債務者との関係悪化:ファクタリングを通じて債権譲渡が通知された場合、取引先との信用関係が損なわれる可能性。
- 債権譲渡の否認:債務者が譲渡を認めず、支払いを拒否することで譲受人との三者間トラブルになる。
法律論点と実質的な問題
表面的には合法な債権譲渡に見えても、実態としては「貸付」と評価され得る取引があります。例えば、額面100万円の債権を90万円で譲渡し、かつ回収委任契約により譲渡人が90万円だけを譲受人に渡すといった構造では、債権の額面が名目的にしか機能していません。このようなケースでは、実質的には貸金であり、貸金業法や出資法に抵触する可能性があります。
しかし、多くの弁護士がこの論点を争点化しておらず、「債権譲渡は自由」との前提で取引の正当性を認める傾向があります。結果として、譲渡人が不利な立場に立たされても、適切な救済を受けられないまま終わるケースが少なくありません。
弁護士に相談すべきタイミングと注意点
ファクタリング取引でトラブルが発生した際、弁護士に相談するのは早ければ早いほど良いといえます。ただし、すべての弁護士がファクタリングの実務や問題構造に通じているわけではありません。
多くの弁護士は、契約書上の形式に沿ってアドバイスを行うため、「この契約書は債権譲渡とされており、法的に問題はありません」との判断に終始しがちです。つまり、実態を掘り下げて「これは貸付ではないか」といった視点で争う弁護士は、非常に限られているのが現状です。
専門性のある弁護士の重要性
数は少ないながらも、ファクタリングの違法性や実質的貸付性に着目して戦ってくれる弁護士は存在します。こうした専門性のある弁護士は、以下のような視点から対応を進めてくれます。
- 実態としての貸付性を主張し、貸金業法違反や出資法違反による契約無効を検討
- 回収委任契約と債権譲渡契約の関係性を分析し、譲渡人に過剰な義務が課されていないか確認
- 消費者契約法や民法の「公序良俗」に基づく契約無効を視野に入れた交渉や訴訟
このような弁護士は、ファクタリングのグレーな側面に熟知しており、譲渡人の立場から主導的に交渉や訴訟を展開してくれるため、問題解決の可能性が高まります。
トラブルを未然に防ぐために
最も重要なのは、契約前に十分な確認を行うことです。以下の点は、取引前に必ずチェックすべき事項です。
- 契約書の文言と実態が一致しているか
- 回収委任契約の内容が適正か(額面回収が前提か、限定されているか)
- 債権譲渡の通知・承諾がどう処理されるか
加えて、契約段階で疑問があれば、可能な限りファクタリングに明るい弁護士に意見を求めることが賢明です。
おわりに
ファクタリング取引は便利な資金調達手段である一方で、法的構造が複雑でトラブルが生じやすい側面もあります。譲渡人としてトラブルに巻き込まれた場合、表面的な契約書の内容だけで判断せず、実態に即した主張ができる専門性の高い弁護士の力を借りることが重要です。
少数ではありますが、ファクタリングの実態を問題視し、法的に正面から争ってくれる弁護士も存在します。安易に泣き寝入りせず、自身の取引の実態に疑問がある場合は、早めの相談と適切な対応が、自身と事業を守る第一歩となるのです。

