紹介料を受け取った税理士は利息受領者になり得るのか――2社間ファクタリングと「実質受益者」の問題

不存在債権は「詐欺か?」「不当原因給付か?」

二社間ファクタリングをめぐる議論は、これまで一貫して「業者の違法性」に集中してきた。しかし、実際の資金の流れを精査すると、手数料の一部は業者にとどまらず、税理士や紹介業者といった第三者に分配されている。

ここで生じる根本的な問題がある。

その紹介料は、法的に見て「単なる手数料」なのか、それとも「利息の一部」なのか。さらに言えば、紹介料を受け取った税理士は、貸金業法上の「利息受領者」になり得るのか、という点である。

この問題は、過払い返還や不当利得返還の射程を、業者だけでなく士業にまで拡張し得る極めて重要な論点である。


利息とは誰が受け取るものなのか

まず前提として、利息の法的概念を整理しておく必要がある。

貸金業法および利息制限法における利息とは、形式的な名目ではなく、実質的に「金銭の貸付けに伴って支払われる対価」を指す。重要なのは、受領者が誰であるかよりも、その性質が「貸付けの対価」であるかどうかである。

判例・実務で確立している考え方は次の通りである。

・名目が手数料であっても、実質が貸付対価であれば利息に該当する
・貸主本人でなくても、貸付と一体の対価を受け取れば利息受領者になり得る
・第三者であっても、利息の分配を受けていれば規制対象に含まれる

つまり、問題は「税理士が貸主かどうか」ではない。「貸付に付随する対価の分配を受けているかどうか」である。


紹介料の原資はどこから来ているのか

二社間ファクタリングにおける紹介料の最大の特徴は、その原資が完全に利用企業側の負担に依存している点にある。

これまでの実態はほぼ共通している。

・業者は高率の手数料を設定する
・その中から10%〜20%程度を紹介料として外部に支払う
・紹介料は継続回数に応じて繰り返し支払われる

ここで重要なのは、紹介料が業者の純利益から出ているのではない点である。

業者は、紹介料分をあらかじめ手数料に織り込み、利用企業に全面転嫁している。結果として、利用企業が支払う対価の一部が、税理士に直接流れている構造になる。

この構造は、経済的実質として、極めて典型的な「利息分配」に近い。


税理士は「媒介者」か、それとも「受益者」か

形式上、税理士は貸主ではない。契約当事者でもなく、金銭を交付しているわけでもない。多くの業者は、この点を根拠に「紹介料は利息ではない」と説明してきた。

しかし、実質で見れば評価は簡単ではない。

紹介料の性質には、次の特徴がある。

・成約が成立しなければ支払われない成果報酬である
・継続回数に応じて反復的に支払われる
・金額は貸付額と手数料率に連動する

これは、広告費や定額の業務委託費とは本質的に異なる。貸付の成立と存続を前提とした「対価の一部」であり、利息と経済的に不可分である。

この場合、税理士は単なる媒介者ではなく、「貸付対価の分配を受ける受益者」に近い立場になる。

実務上も、過去の高金利貸付事件では、次のような判断枠組みが採られてきた。

・貸主から利息の一部を受け取っていた紹介業者
・名目はコンサル料・手数料であっても、利息と一体と評価された例
・結果として、無登録営業幇助や利息制限法違反の共同不法行為が認定された例

完全に同一ではないにせよ、構造は極めて近い。


違法認定後に現実化する三つの論点

二社間ファクタリングが実質貸付と認定された場合、紹介料の評価は次の三点で一気に動き出す。

・紹介料は利息の一部と評価されるのか
・税理士は利息受領者として返還義務を負うのか
・共同不法行為として損害賠償責任を負うのか

特に現実的なのは、不当利得返還との関係である。

過払い返還訴訟では、業者だけでなく「実際に利息を受け取った者」も返還義務者になり得る。紹介料が利息と評価されれば、税理士は直接の返還請求の対象に含まれる可能性がある。

さらに、業者が倒産・逃避した場合、被害企業は必然的に「資金の流れの先」を追及する。ここで、紹介料の支払記録は、極めて明確な証拠として裁判に提出される。


税理士にとって最大のリスク

この問題が税理士にとって深刻なのは、二つの責任が同時に問われ得る点にある。

一つは、利息受領者としての民事責任である。

もう一つは、専門家としての注意義務違反である。

税理士は、単なる紹介屋ではない。資金繰り、財務、契約条件を検討し、依頼者に助言する立場にある。その者が、

・実効年利を認識していた
・高金利構造を理解していた
・その一部を自ら受け取っていた

と評価されれば、単なる受益者ではなく、「違法取引への積極的加担」と評価される余地が生じる。

この場合、共同不法行為としての責任が正面から問題になる。


これまで問題にされなかった理由

ここまで重大な論点でありながら、実際にこの争点が正面から裁かれた例は、ほとんど存在しない。

理由は明確である。

第一に、違法認定が出ていない限り、利息性を正面から争えなかった。

第二に、紹介料の存在が被害企業にほとんど知られていなかった。

第三に、資金の流れが裁判で開示される段階まで到達した事案がなかった。

しかし、違法認定と大規模な過払い訴訟が始まれば、この前提は一気に崩れる。


利息受領者の範囲はどこまで広がるのか

最終的に問われるのは、誰が「高金利構造の受益者」だったのかという点である。

業者だけではない。紹介業者だけでもない。

税理士・会計士・コンサルタント・外部顧問――すべてが、実質的に利息の分配を受けていたのであれば、法の評価は同じ方向に向かう。

二社間ファクタリング問題の本質は、単なる違法金融ではない。

高率手数料を細分化し、第三者に分配することで、利息の受領主体を意図的に分散させてきた市場構造そのものにある。

違法認定が出た後、最も静かに、しかし広範囲に責任を問われるのは、業者よりもむしろ、この「分配の網」に組み込まれていた専門家たちなのかもしれない。