二社間ファクタリング市場において、実際に資金を出しているのは業者であり、紹介業者は単に利用企業をつないでいるだけだと説明されてきた。しかし、違法認定が現実のものとなった場合、責任の所在は必ずしも業者だけにとどまらない。
無登録貸金業は、貸金業法違反として刑事罰の対象になる。そして刑法上、正犯だけでなく、幇助や教唆といった共犯も処罰対象になる。ここで問題になるのが、紹介業者の行為が、単なる媒介にとどまるのか、それとも無登録営業を積極的に支援した「共犯」に当たるのかという点である。
無登録貸金業と共犯の基本構造
まず、無登録貸金業の法的枠組みを整理しておく。
・貸金業を営むには金融庁または都道府県の登録が必要
・登録なく反復継続して貸付を行えば刑事罰の対象
・実質貸付と認定されれば、名目が売買でも適用される
共犯が成立するかどうかは、刑法上の幇助または教唆に該当するかで判断される。単なる事務的な関与では足りず、違法営業を認識し、それを容易にしたと評価できるかが決定的に重要になる。
紹介業者の関与の実態
二社間ファクタリングにおける紹介業者の関与は、単なる顧客紹介にとどまらないことが多い。
・資金繰り状況の事前ヒアリング
・売掛債権の選別と事前審査
・必要書類の準備と条件調整
・手数料率や回転条件の説明
この段階で、紹介業者は取引条件の核心部分に関与している。しかも、報酬は成約連動型であり、継続回数に応じて繰り返し支払われる。これは単なる広告費とは評価しにくい。
共犯成立の分岐点
紹介業者が刑事責任を負うかどうかは、次の点で大きく分かれる。
・取引が貸付に該当することを認識していたか
・業者が無登録であることを認識していたか
・自らの行為が営業を実質的に支えていたか
ここで重要なのは、「違法性の認識」は必ずしも確定的な認識である必要はない点である。少なくとも、高金利構造や実効年利、継続依存構造を理解しながら関与していれば、「未必の故意」が認定される余地が生じる。
実務上、過去の無登録金融事件では、
・集客を一手に担っていた紹介業者
・審査や条件調整を事実上代行していた業者
・報酬を利息連動で受け取っていた者
について、正犯ではなくとも幇助犯として処罰された例が存在する。
ファクタリング特有の難しさ
もっとも、二社間ファクタリングには特有の難点がある。
形式上は「債権売買」であり、貸付ではないと説明されてきた。業界全体が長年この建前で運営され、行政も明確な違法認定をしてこなかった。
このため、紹介業者側は「貸付とは思っていなかった」「合法な取引だと信じていた」と主張する余地がある。違法性の認識の立証は、刑事事件としては容易ではない。
しかし、ここでも決定的に重要なのが、個別事案の具体的事情である。
違法認定後に重くなる証拠の意味
違法認定が出た後、共犯性の立証は格段に容易になる。
理由は明確である。
・業界全体で実質貸付認定が確立する
・高率手数料構造が公式に違法と評価される
・過去の取引にも遡及的に実質評価が及ぶ
このとき、紹介業者にとって最大のリスクになるのが、内部資料と通信記録である。
条件調整メール、手数料率の説明文、継続回数の指示、回収スケジュール表。これらはいずれも、「貸付性の認識」と「営業支援」を直接示す証拠になる。
民事責任との連動
刑事責任とは別に、民事上の責任も極めて現実的である。
無登録貸金業が成立すれば、貸付契約は公序良俗違反または強行法規違反として無効となる。その過程で、紹介業者は共同不法行為者として損害賠償請求の対象に含まれる可能性が高い。
さらに、過払い返還請求では、実質的に利息を受け取った者、またはその取得を媒介した者が、返還義務者に含まれる余地もある。
共犯として問われる現実的ライン
最終的に、紹介業者が共犯として問われるかどうかは、次の線で分かれる。
・単発の広告紹介にとどまるか
・継続的に案件を供給していたか
・条件設計や回転構造に関与していたか
・報酬が利息連動型だったか
これらが揃えば、「単なる媒介」では済まされない。
二社間ファクタリング問題において、紹介業者は長らく制度の周縁に置かれてきた。しかし、実態として市場を拡大させ、違法構造を支えてきた主体の一つであることは否定しがたい。
違法認定が出た後、刑事責任の射程が最初に広がるのは、業者よりもむしろ、この紹介業者層なのかもしれない。

